今年も様々なドラマがありました
2016年2月29日(アメリカは2月28日)にロサンゼルスで開催された第88回アカデミー賞授賞式。
日本では今年もWOWOWで独占中継。当日午前より同時通訳による生放送、夜からは日本語字幕が付いたダイジェスト版(午前の放送内容から不要なスタジオのトークなど本編以外の部分をカットしたもの)をそれぞれ放送しています。
今年も笑いあり涙あり、感動ありサプライズありの大変見応えある授賞式となりました。
主要6部門の受賞結果
それではまず主要6部門の受賞者(または受賞作品)のまとめから。赤文字が受賞者(受賞作品)です。
作品賞
◆『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(The Big Short)
◆『ブリッジ・オブ・スパイ』(Bridge of Spies)
◆『ブルックリン』(Brooklyn)
◆『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(Mad Max: Fury Road)
◆『オデッセイ』(The Martian)
◆『レヴェナント:蘇えりし者』(The Revenant)
◆『ルーム』(Room)
※カッコ内は原題。
スポットライト 世紀のスクープ
作品賞は『レヴェナント』『スポットライト』『マネー・ショート』の三つ巴かという戦前予想が多かった中、それでも『レヴェナント』は盤石だろうと予想してたのですが、フタを開ければ『スポットライト』が作品賞を獲得しました。
『スポットライト』は個人的にとても見たい作品だったのですが、個人部門は総崩れだろうなあと予想していた通りの展開(俳優がダメって意味ではなく、他の候補が強かった)。それでも最後に作品賞を持って行ったのは正直驚きました。
個人の受賞はならなかったトム・マッカーシー監督、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムス、そして今年はノミネートすらされなかったマイケル・キートンも壇上に上がって喜びを分かち合っていました。
マイケル・キートンは昨年『バードマン』で主演男優賞確実と言われながら受賞ならず、受賞スピーチの下書きらしきメモ用紙をスーツのポケットに戻す場面が写真に撮られて涙を誘いましたが、その後の作品賞では壇上で笑顔、というのを2年連続で実現できてよかった。
監督賞
◆アダム・マッケイ(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
◆ジョージ・ミラー(マッドマックス 怒りのデス・ロード)
◆レニー・アブラハムソン(ルーム)
◆トム・マッカーシー(スポットライト 世紀のスクープ)
大本命のイニャリトゥ監督が昨年の『バードマン』に続いて2年連続の受賞となりました。監督賞の2年連続受賞は史上3人目の快挙だそうです。
『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督が獲るんじゃねえか? って空気になってましたが、さすがにそれはないだろうと。そのくらい前哨戦もイニャリトゥ監督は勝ちまくってましたので。
主演男優賞
◆ブライアン・クランストン(トランボ ハリウッドに最も嫌われた男)
◆マット・デイモン(オデッセイ)
◆マイケル・ファスベンダー(スティーブ・ジョブズ)
◆エディ・レッドメイン(リリーのすべて)
レヴェナント:蘇えりし者
ディカプリオ、ようやくオスカー獲得です。実に通算5回目のノミネートで初受賞。もしかしたらエディが2年連続の特大サプライズあるんじゃないかと半分不安、半分期待しましたが、さすがの大本命。盤石でした。
全5回のノミネート作品は、『ギルバート・グレイプ』(1994年)、『アビエイター』(2005年)、『ブラッド・ダイヤモンド』(2007年)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年)、そして今年の『レヴェナント』。
もっと言うと、11部門で受賞した大ヒット作『タイタニック』(1998年)と、2部門で受賞した『ジャンゴ 繋がれざる者』(2013年)では主演だったのにノミネートすらされておらず、アカデミー会員によっぽど嫌われてるんじゃないかという説も流れておりました。
『タイタニック』で恋人役だったケイト・ウィンスレットも6回目のノミネートでオスカーを獲得(2009年)してますし、ディカプリオも今回ようやく受賞して、ファンは安堵したのではないでしょうか。
そういえば今年、レッドカーペットに同じタイミングで登場したディカプリオとウィンスレットが仲良さそうに何度もハグしてて(二人は性別を超えた親友関係にあります)、『タイタニック』ファンはジャックとローズの親密シーンに喜んだことでしょう。
主演女優賞
◆ケイト・ブランシェット(キャロル)
◆ジェニファー・ローレンス(Joy(原題))
◆シャーロット・ランプリング(さざなみ)
◆シアーシャ・ローナン(ブルックリン)
ルーム
ケイト・ブランシェット、シアーシャ・ローナンの評価も高かったのですが、前哨戦を幾つか制していたブリー・ラーソンが初のオスカー獲得。
上の写真は受賞が発表された直後、今作にて親子役で共演したジェイコブ・トレンブレイくんとハグしてるところ。二人は撮影前に数週間、役作りのために共同生活を送ったのだそうです。
作品自体も大変評価が高い『ルーム』。日本では4月8日(金)から劇場公開予定なのですが、オスカーを獲得したことで集客に多少の変化はあるかもしれません(内容がそんな娯楽的なものではないので、爆発的に興行成績がアップするとは考えにくいですが)。
助演男優賞
◆クリスチャン・ベイル(マネー・ショート 華麗なる大逆転)
◆トム・ハーディ(レヴェナント:蘇えりし者)
◆マーク・ラファロ(スポットライト 世紀のスクープ)
◆シルヴェスター・スタローン(クリード チャンプを継ぐ男)
ブリッジ・オブ・スパイ
今年のアカデミー賞で最大のサプライズ、ここでした。
おそらく世界中の映画ファンが「シルベスター・スタローンで間違いないだろう」と予想(あるいは希望)してたはずなのですが、まさかの展開でした。「えええー!」って叫んだもんね。
今までラジー賞(アカデミー賞の前日に開催される、最低映画を表彰する祭典)で長年ずーっと常連で、悪口を言われまくってたスタローンが、今年のラジー賞では「名誉挽回賞」を獲得して、ラジー賞で初めて誉められたんですよ。
なのに本番でオスカー獲れないってどういうことですか…。
スタローンは1977年に『ロッキー』の1作目で初めてノミネートされて以来、実に40年近くアカデミー賞と縁がなかったのです。今回再びロッキーの役でノミネートされ、今年オスカーを獲ったら大騒ぎだったはずなんですよね。ロッキーがリベンジしたわけなので。
スタローンは『クリード』の続編は作らない(あるいは作ったとしても出演はしない)と言ってるらしいので、おそらく今回がオスカーのラストチャンスだったはず。
WOWOWのスタジオで、同じく今回オスカーを獲れなかったジョージ・ミラー監督の『マッドマックス』にロッキー役で出演しちゃえばいいじゃん、「マッドマックスvsロッキー」にしたらダブルで受賞できるじゃん、と冗談で言ってましたが、ディカプリオが獲っただけに、んー残念。
助演女優賞
◆ジェニファー・ジェイソン・リー(ヘイトフル・エイト)
◆ルーニー・マーラ(キャロル)
◆レイチェル・マクアダムス(スポットライト 世紀のスクープ)
◆ケイト・ウィンスレット(スティーブ・ジョブズ)
リリーのすべて
助演女優賞はルーニー・マーラを推す声がとても多かったらしく、それでも前哨戦で勝ちまくってた大本命のアリシア・ヴィキャンデルで間違いないだろうという戦前予想で、その通りの結果になりました。
写真は今作で共演した主演のエディ・レッドメインに感謝の言葉を述べてるスピーチの途中、客席にエディを見つけて「あ、あそこにいた! エディありがとう!」と喜んでるところ。
作品タイトルが「リリーのすべて」で、リリーってのは性別適合手術を受けた男性が「女性」になって名乗り始めた名前なのですが、アリシア・ヴィキャンデルが演じたのは「リリー」となる前の男性と結婚していた妻。
女性になってしまう夫の妻、という難役を演じて高い評価を得たアリシア・ヴィキャンデルは、主演女優賞を獲得したブリー・ラーソンと共に「今後注目すべき女優」と評されてます。
その他の受賞結果
◆脚色賞 … 『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
◆長編アニメ映画賞 … 『インサイド・ヘッド』
◆外国語映画賞 … 『サウルの息子』(ハンガリー製作)
◆長編ドキュメンタリー映画賞 … 『AMY エイミー』
◆短編ドキュメンタリー映画賞 … 『A Girl in the River』
◆短編実写映画賞 … 『Stutterer』
◆短編アニメ賞 … 『ある熊の物語』
◆作曲賞 … 『ヘイトフル・エイト』
◆歌曲賞 … 『007 スペクター』
◆音響編集賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆録音賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆美術賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆撮影賞 … 『レヴェナント:蘇えりし者』
◆メイク・ヘアスタイリング賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆衣裳デザイン賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆編集賞 … 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
◆視覚効果賞 … 『Ex Machina(原題)』
★マッドマックス旋風、6冠獲得
まずビックリしたのは、『マッドマックス』が6部門を獲っちゃったことですね。
俳優部門と作品賞は厳しいだろう、ってのが私の予想でしたが、正直言ってしまうと制作部門も全部『レヴェナント』にかっさらわれて、『マッドマックス』は無冠に終わるんじゃないか、と思ってました。大変失礼しました。
制作部門でことごとく『マッドマックス』に持っていかれた『レヴェナント』が今年は惨敗の流れなの? じゃあディカプリオは? と思ってたら俳優部門は順当に獲っていったので、うまい具合にバラけて平和な結末だったかな、と感じます。
★撮影賞は史上初の快挙達成
撮影賞は『レヴェナント』のエマニュエル・ルベツキが獲得したのですが、彼は2014年『ゼロ・グラビティ』、2015年『バードマン』でも撮影賞を獲得しており、3年連続の同賞獲得はアカデミー賞史上初の快挙だそうです。
★日本勢の結果は?
日本関連ではジブリ作品の『思い出のマーニー』が長編アニメ映画賞にノミネートされていましたが、受賞はならず。同賞は大本命の『インサイド・ヘッド』が獲得しました。
『インサイド・ヘッド』はディズニー/ピクサーの作品ですから定評ありますし、日本だけでも45億円の興行成績となる大成功をおさめていました。前哨戦でも賞を獲りまくっていたし、ジブリにとって相手が強すぎました。
受賞数まとめ
全部門の受賞数が多い順に並べてみると、
◆『レヴェナント』 … 12部門中、3部門獲得
◆『スポットライト』 … 6部門中、2部門獲得
◆『ブリッジ・オブ・スパイ』 … 6部門中、1部門獲得
◆『マネー・ショート』 … 5部門中、1部門獲得
◆『リリーのすべて』 … 4部門中、1部門獲得
◆『ルーム』 … 4部門中、1部門獲得
◆『ヘイトフル・エイト』 … 3部門中、1部門獲得
となりました。マッドマックスがここまで大躍進するとは…。
複数ノミネート作品で無冠に終わったのは、
◆『キャロル』 … 6部門ノミネート、受賞なし
◆『スター・ウォーズ』 … 5部門ノミネート、受賞なし
◆『ブルックリン』 … 3部門ノミネート、受賞なし
◆『ボーダーライン』 … 3部門ノミネート、受賞なし
◆『スティーブ・ジョブズ』 … 2部門ノミネート、受賞なし
となりました。『オデッセイ』と『スター・ウォーズ』は予想通りなので驚きはありません。どちらも興行的には大成功してるんですけどね。たぶん今回ノミネートされた全作品の中で両者ともトップ5に入ってるはず。
でも、これがアカデミー賞です。毎年のことです。
りくま ( @Rikuma_ )的まとめ
アカデミー賞授賞式を毎年見てる人は、おそらく「かなりの洋画ファン」だと想像します。受賞作品もノミネート作品も全部見たいと感じてる方々も多いことでしょう。私も毎年、アカデミー賞で取り上げられた作品は大半を見ています。
自分が映画ファンになって良かったなあ、映画を好きになって良かったなあ、と毎年授賞式を見終えたあとにシミジミ感じさせてくれるので、アカデミー賞授賞式は外せません。来年は誰が司会者で、どんなドラマが待っているのか楽しみでなりません。
その他、主な受賞・ノミネート作品
★マッドマックス 怒りのデス・ロード
音響編集賞、録音賞など6部門で受賞。
マッドマックス 怒りのデス・ロード
★マネー・ショート 華麗なる大逆転
脚色賞を受賞。
マネー・ショート華麗なる大逆転
★ヘイトフル・エイト
作曲賞を受賞。
ヘイトフル・エイト
★インサイド・ヘッド
長編アニメ映画賞を受賞。
インサイド・ヘッド
★007 スペクター
歌曲賞を受賞。
Writing’s On The Wall
007 スペクター
★AMY エイミー
長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。
AMY エイミー
★オデッセイ
7部門ノミネート。
オデッセイ
★キャロル
6部門ノミネート。
キャロル
★スター・ウォーズ/フォースの覚醒
5部門ノミネート。
スター・ウォーズ/フォースの覚醒
★ボーダーライン
3部門ノミネート。
ボーダーライン
★スティーブ・ジョブズ
2部門ノミネート。