罰金処分のみの裁定
6月17日のクロアチアvsチェコ戦におけるクロアチアの一部サポーターが起こした騒動に対して、UEFAが処分内容を発表しました。
UEFAは20日、ユーロ2016グループD第2節のチェコ戦で、観客が発炎筒を投げ込むなどトラブルを起こしたクロアチアに対し、10万ユーロ(約1180万円)の罰金処分を科した。懸念された失格処分は免れた形だ。(中略)
予選からサポーターの人種差別行為で勝ち点はく奪の処分を受けていたクロアチアだけに、MFイヴァン・ラキティッチが失格となることへの懸念を口にするなど、厳罰処分が予想されていた。
だが、20日にこの問題を検討したUEFA管理・倫理・規律委員会は、10万ユーロの罰金を科すことに決定。失格処分には至らなかった。
via:Goal.com(2016年6月21日)
罰金処分は間違いなく、それに「勝ち点剥奪」「無観客試合」「大会失格処分」といった更に重い処分が加えられるかどうかが注目されていましたが、罰金処分だけに落ち着いたようです。
ただ、これで一件落着というわけでもなさそうで、前節のチェコ戦で暴走したクロアチアの一部悪質サポーターは「新たな暴動」を示唆したコメントを発表しているようです。
次のスペイン戦における新たな暴動を示唆
クロアチアの過激サポーターは、17日のチェコ戦で起こした騒動に続いて、次のスペイン戦でも再び同様の行動を起こすことを計画しているのかもしれない。
ユーロ2016グループD第2節のチェコ戦では、試合終盤にクロアチアサポーターがピッチ上に向けて発煙筒や爆竹などを投げ入れる騒動が発生。試合は一時中断されることになり、UEFAはクロアチアへの処分に向けた調査を行っている。
チェコ戦で問題行動を行ったとされるグループの1つ、ハイデュク・スプリトのサポーターグループ「トルチダ・スプリト1950」は、試合前に『フェイスブック』で行動を示唆する投稿を行っていた。クロアチアサッカー連盟はクロアチアとフランスの警察およびUEFAに連絡を入れながらも、実行を防ぐことができなかったという。
21日にはグループ最終節のスペイン戦が予定されているが、同グループは再び同様の投稿を行い、何らかの行動を示唆しているようだ。会場となるボルドーのスタジアムの見取り図に、観客席からピッチに向けた複数の矢印が書き込まれた画像が投稿され、「これが次の計画だ」とコメントされている。報道によれば、これらの行為の背景にはクロアチアサッカー連盟の腐敗・汚職に対して抗議する意図があるという。
UEFA管理・倫理・規律委員会は、チェコ戦での騒動に対して20日に対処を行うことを予定している。この時点ですでに重い処分も予想されるが、スペイン戦でも何らかの騒動が再発したとすれば、クロアチア代表はさらなる苦境に追い込まれることになりかねない。
via:Goal.com(2016年6月19日)
上の引用記事は今回UEFAがクロアチアに対する処分を発表するよりも前の時点で書かれていたものです。
ハイドゥク・スプリト(記事中ではハイデュク・スプリト)って名前、聞いたことあるなあと思って調べたら、現在はヴィッセル神戸に在籍する元日本代表のDF、伊野波雅彦選手が2011年シーズンに在籍していたチームでした。
また、クロアチアvsチェコ戦と前後して、クロアチア事情に詳しいサッカージャーナリストの方が以下のツイートを投稿されています。
明日のクロアチアvs.チェコ戦で、クロアチア・サッカー協会を敵対視するフーリガンが騒動を起こして試合中止に追い込むという情報が噂されているよう。会場となるサンエティエンヌのサポーターと友好関係にあるハイドゥクのトルツィダ、そこにディナモのBBBが実行グループとして加わるとのこと。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月16日
クロアチア代表の公式サポーターグループ「Uvijek vjerni」の下にもフーリガンによる計画の噂が伝わっており、試合中は約3500人のメンバーで騒動を潰しに掛かるとか。サッカー協会はクロアチア警察から情報を収集し、フランス警察や運営側に警備強化を要望する方針。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月16日
クロアチアのフーリガンによるチェコ戦での騒動計画が噂される中、スタジアム出禁のブラックリストに掲載されたクロアチア人がパリの空港で身柄を確保。陸路の国境でもスタジアム持込禁止物を車を積んだクロアチア人が足留めされたとのこと。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月17日
クロアチア・サッカー協会の安全対策担当二名が記者会見が行い、昨日のチェコ戦での騒動について説明。サッカー協会には試合3日前に騒動計画が伝わっており、UEFAと組織側、フランス警察に注意を促すも、要注意人物の大部分がスタンドに入ったことを試合前に写真で確認したとのこと。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月18日
85分にピッチ乱入と発煙筒投入が起こるとセキュリティ会社を通してサッカー協会が掴み、その情報を組織側にも伝達。フーリガンの乱入を防ぐべく、82分には特別警官隊が配置されたことで発煙筒のみに留まったよう。もっと対処はできたはずだが、フランス警察は70~80%の仕事はやったとの考え。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月18日
実行グループはハイドゥク・スプリトのサポーター「トルツィダ」の一派「splitski klošari(スプリトの浮浪者)」が極めて濃厚とのこと。ロジについてはトルツィダと友好関係にあるサンエティエンヌのサポーターが協力。実行者の年齢は18~25歳で、一部は逮捕、残りは逃亡中。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月18日
国内フーリガンの対策専門官がいるクロアチア警察省は今日のスペイン戦の警備として20名の援助をフランス警察に申し出たものの、フランス側が拒否。チェコ戦で騒動を起こしたフーリガンをクロアチア警察は特定したものの、フランス国内で捕まえることができず、現状では現地の警察頼りになるよう。
— 長束恭行 (@nagatsuka_hrv) 2016年6月21日
YouTubeには、悪質サポーターが発煙筒を投入した直後の様子や、悪質サポーターと他のクロアチアサポーターが乱闘している様子を撮影した動画がそれぞれアップされています。
何事もないよう祈ります
情報をまとめると、
◆クロアチアvsチェコ戦の後半40分に暴動を起こすことが計画されていた。
◆暴動計画はクロアチアサッカー協会、UEFA、大会運営側、そして他のサポーターグループが事前に把握していた。
◆試合中の後半37分に特別警官隊が配置され、犯行は発煙筒の投入のみに抑えた。(警官隊がいなかったらもっとヒドいことになってた?)
◆犯行グループの一部は逮捕されたが、残りは現在も逃亡中。
◆暴動を起こしたフーリガンはクロアチア警察が特定しているものの、まだ逮捕できていない。
◆犯行グループのFacebookに、最終節スペイン戦の会場であるボルドーのスタジアム見取り図と、新たな犯行を示唆する画像やコメントが投稿されている。
全ての情報が真実だとすれば、今回の暴動はUEFAやEURO、そしてクロアチアの対戦相手に向けられたものではなく、クロアチアのサッカー協会に対して向けられたもの。つまりは「クロアチア国内におけるサッカー組織の対立」が要因となっています。
要は「クロアチアのサッカー協会に対する嫌がらせ」が主目的となっており、従ってクロアチアがどれほど素晴らしい試合を展開し、勝利をしても犯行グループには関係がない。むしろ騒動を起こすことによってクロアチア代表チームやクロアチアのサッカー協会が迷惑を被ることを望んでおり、そうなるよう仕向けていることになります。
なので今回の罰金処分は暴動に対する抑止効果に全くなってないどころか、むしろ犯行グループにとって好都合という残念かつ皮肉なものになっています。
次なる暴動計画を察知できているのであれば、スペインvsクロアチア戦を無観客試合にしたほうが、むしろ騒動を未然に防ぐことが出来て良いのではないかとも思いますが、スペインvsクロアチア戦は今大会の目玉カードの一つでもあり、そう簡単に無観客試合とは出来ない運営側の事情もあるでしょうし。
いずれにせよ、クロアチアを応援する人々だけでなく、対戦相手のスペインも、そして全世界のサッカーファンも、スペインvsクロアチアという強豪同士の対決を「騒動なしに」観戦できることを望んでいます。
入場時の手荷物検査強化や、特定できているとされる犯行グループを入場時に拘束するなど未然に阻止できれば良いのですが…。何事も起こらず、サッカーファンが名勝負を堪能できるよう祈るしかありません。