グループE イタリアvsスウェーデン
▲ イタリアは初戦、強豪ベルギーに2-0で快勝。前評判は高くなかったものの結果を出しています。
一方のスウェーデンは初戦アイルランドと1-1のドロー発進。
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両チームとも中盤でボールを奪い合って攻めるのですが、フィニッシュまで行けずシュートが打てない展開。交互に優勢な時間帯を作りつつ時間が経過。
▲ 後半43分、スローインからイタリア17番エデルがドリブル突破。
それまで組織的な陣形で堅く守っていたはずのスウェーデン守備陣、油断したのかゴール前が手薄な状況。労せずペナルティーエリアに侵入したエデル、ディフェンダー3人をかわしてシュート。
このシュートが決まり、試合終了間近にイタリア先制。これが決勝点となりました。
イタリアは「スター不在」「今大会は過去最も厳しい」という前評判を覆し、「死の組」グループEで2連勝。
スターという意味であれば、スウェーデンには世界的スターのイブラヒモヴィッチがいます。しかしチームは90分間を通してチーム全体のシュート本数がわずか4本、そのうち枠内に飛んだシュートが1本もない。
これではどんなスーパースターがいようとも勝てません。
スウェーデンはイブラヒモヴィッチ以外に得点を決める匂いのする強力なストライカーがいません。
肝心のイブラヒモヴィッチも徹底的なマークにあってシュートチャンスを潰されることが多く、そもそもイブラヒモヴィッチに味方からのパスが全然通らない。
このチームが勝利するには、「イブラヒモヴィッチではない誰か」が奮起して得点を奪っていくのが必須条件じゃないかと感じるのですが、それを期待するのは酷かなというのが2試合を見ての率直な感想。

▲ グループEはイタリアが2連勝でグループ首位。次戦で負けたとしてもグループ2位以内を確保できるため、イタリアの決勝トーナメント進出が決定しました。
グループD スペインvsトルコ
▲ スペインは初戦、チェコの堅い守備に手を焼いたものの、試合終了間際になんとか得点して1-0で勝利。
▲ トルコは初戦、クロアチア10番モドリッチにスーパーゴールを決められ、0-1で敗れています。
その際、16番オザンがモドリッチの正面に立っていたにもかかわらずボールに全く反応せず、乱れた髪の毛を直しているところがトルコ国内のテレビ中継で指摘され、批判にさらされています。
味方がボールを蹴り上げた際に「遠くへクリアしてくれた」と思い込み、目の前でシュートを打たれるまで気付いてなかったらしいです。ちゃんとボール見とけ。
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▲ 前半34分、スペイン22番ノリートのクロスから7番モラタがヘディングシュート。綺麗に決まってスペインが先制。
前半36分、スペイン10番セスク・ファブレガスのクロス。裏に抜け出した22番ノリートがボレーシュート。間髪入れずにスペインが追加点。
後半になってもイケイケモードが止まらないスペイン。華麗なティキ・タカが戻ってきていました。
後半3分、スペイン6番イニエスタの絶妙なスルーパス。18番ジョルディ・アルバから7番モラタに繋いで鮮やかな3点目。
リプレイで確認すると、ジョルディ・アルバは完全にオフサイド・ポジションだったものの副審はファウルを取らず。副審もイケイケモードだったようです。言い換えれば誤審。
初戦でパッとしなかったモラタとノリートでしたが、今試合ではモラタが2ゴール、ノリートが1ゴール1アシストで見事に結果を出しました。
▲ 3点目を取られたことでキレてしまったのか、無残な試合展開の全責任を押し付けられてしまったのがトルコ主将の10番アルダ。ボールを持つ度に味方サポーターから大ブーイングを浴び始めました。
これには相当ヘコんだらしく、後半のアルダは明らかに動きが鈍くなっていました。試合後はスペインの選手から慰めてもらってましたね(アルダはスペインのバルセロナ所属なので、対戦相手のスペインにチームメイトが複数いる)。
スペインは攻撃も守備も組織的に上手く機能して完勝。王者復活! という印象ですが次戦も調子の良さが続くかな?
一方のトルコは何度も相手ゴールに攻め込んだものの、シュートミスを連発して決定力不足が露呈してしまった形となりました。
グループD チェコvsクロアチア
▲ チェコは初戦、スペインに0-1で敗北。圧倒的にボールを支配されながらも自陣で守備を固めていたが、最後に失点してしまいました。
▲ クロアチアは初戦トルコに1-0で勝利。10番モドリッチの鮮やかなスーパーゴールで接戦を制しています。
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▲ 前半37分、センターライン付近でチェコがボールを奪われ、拾ったクロアチア4番ペリシッチがドリブルで独走。
ペナルティーエリア内に侵入したペリシッチのシュートをチェコ守護神チェフも止められず、クロアチアが先制。
一方のチェコは攻撃をしてもクロアチア守備陣にことごとくブロックされ、シュートチャンスを作れません。前半終了間際に獲得したゴール近くでのフリーキックも2回連続で壁に阻まれてしまいました。
前半のボール支配率はクロアチアが59パーセントと圧倒。シュート本数はクロアチア12本に対してチェコはフリーキックの2本のみ。枠内シュート0本、コーナーキックもゼロ、オフサイドもゼロという「全く攻撃できてない」状態。
▲ 後半14分、チェコは短いゴールキック直後に自陣近くでパスミス。
クロアチア14番ブロゾビッチがボールを奪ってすぐ前線にスルーパス。これを完全フリーで受けた7番ラキティッチがチェフの頭上を越えるループシュートで流し込み、クロアチア2点目。
こりゃクロアチア圧勝しちゃうんじゃねえか、って空気だったんですけどね。この辺りまでは。
2点目の直後、クロアチア10番モドリッチが足を負傷したらしく、まともに歩けない状態となり交代。司令塔モドリッチがピッチを去ったことで、少しずつ流れがチェコに傾いていきます。
▲ 後半30分、チェコ10番ロシツキーのクロスを12番シュコダがヘディングシュート。これが決まってチェコようやく1点返した。
前半、全く攻撃することが出来なかったチェコが逆襲を開始。しかしまだクロアチアは1点リードしている。
両チームとも選手交代でフレッシュな選手をピッチを送り込み、逃げ切り勝ちか、同点に追い付けるか、まさかの逆転劇か。
残り15分での攻防に期待してた、そんな矢先に事件が起こりました。
▲ 後半40分、クロアチアのサポーターが集う観客席から大量の発煙筒が投げ込まれました。1点リードしてるのに何を血迷ったのか。
▲ クロアチア選手たちは「なぜだ」という手振りをしたり、落ち着くよう自制を求めていました。怒りながら発煙筒を蹴飛ばす選手も。しかし、なおも投げ込まれる発煙筒。
芝の一部に火が燃え移り始め、係員の方々が慌てて発煙筒を回収するため奔走。
さらには、一人の係員が回収するため拾い上げようとした白い物体(爆竹?)が手元で爆発。国際映像に映った悲惨な様子に私も絶句。
危険と判断した主審は時計を止めて試合の中断を要請。この時、主審は没収試合も検討していたらしいです。
発煙筒を投げた集団が座っていたと思われる座席一帯はセキュリティによって空席とされました。
リプレイで確認したところ、発煙筒がピッチに投げられた直後には一部が既に空席となっていたので、投げてすぐ逃亡した可能性もあります。
▲ 白い横断幕を掲げている奴らが犯行グループなのか?(横断幕に何を書いてるか分からないので確証なし)
その横断幕の右上に、サポーターの間をかき分けるようにして座席を駆け上り逃亡している犯行グループらしき数名の背中が見えます。左側には投げる前に放置したのか、座席が発煙筒の火で赤く染まってます。
▲ 上の写真を見ると、一部の暴徒はサポーターたちに捕らえられたのかな。犯行グループ全員が特定できればいいんですけどね。
試合再開した後半47分、フリーキックを空中で競り合ったクロアチア21番ヴィダがハンドを犯し、チェコがPKを獲得。
▲ 7番ネツィドが豪快に蹴り込み、チェコが同点に追い付いてしまった。
これはクロアチアのファンじゃなくても同情したんじゃないですかね。自分らを応援してくれるはずのサポーターが試合をブチ壊し、勝利が目の前まで来てたのにスルリと逃げてしまった。
そして試合終了。クロアチアはモドリッチの負傷交代から流れがおかしくなり、一部サポーターの愚行で勝利が離れて行ってしまった。
一方のチェコは我慢を強いられる展開が長かっただけに、勝ち点1を獲得できたのは大きい。しかしエースの10番ロシツキーが後半に足を負傷したため、次戦に出場できるか微妙な雲行き。


▲ グループDは2試合目が終了し、スペインが2連勝。次戦に負けたとしてもグループ2位以内が確保されるため、スペインは決勝トーナメント進出が決定しました。
唯一勝ち点のないトルコは次戦で大量得点を奪って勝利し、3位でのグループ突破を目指すしかありません。
クロアチア、一部サポーターの暴動に対する処分について
今回クロアチアの一部サポーターが起こした暴動についてですが、これを書いてる時点で処分等の発表はされていません。おそらくクロアチアが何らかの処分を科せられるのは間違いなく、最低でも罰金処分となりそうです。
6月11日に行われたイングランドvsロシアの試合前と試合後、両チームのサポーターが衝突して重傷者を出す騒動となりました。
欧州サッカー連盟(UEFA)はロシアサッカー協会に対し、15万ユーロ(約1800万円)の罰金と、次に問題を起こした場合はロシアを途中失格処分とする旨を発表しています。
おそらく今回のクロアチアに対しても同様の処分が下されるか、あるいはロシアよりも更に重い処分を受ける可能性もあります。
というのも、クロアチアに関しては過去に何度か同様の騒動があり、その都度処分を受けた前科があります。今大会の予選でもサポーターが騒動を起こして処分を受けたばかり。
UEFA規律委員会は、6月3日にスプリトで行われたUEFA EURO 2012予選グループFのグルジア戦で起こった騒動について、クロアチア・サッカー協会(HNS)に8万ユーロ(約924万円)の罰金を科した。
HNSは、観客の騒動およびピッチへの侵入、侮辱的なバナーの掲示、花火の使用と投入、ユニフォームの規定違反(GKグローブに企業ロゴを表示)、不十分な試合運営などの理由で罰金処分を受けた。
via:UEFA.com(2013年6月27日)
前回、2012年のEURO予選でもクロアチアは罰金処分を受けています。この時はサポーターだけでなく選手やチームも違反を起こしていたため、同情はできません。
ところが今大会はサポーターの暴走が更にヒドくなってしまったようです。
クロアチアサッカー連盟(HNS)は8日、6月12日に開催予定のユーロ2016予選のイタリア代表戦が無観客試合になることを公式サイトで発表した。
3月28日にホームで行われたユーロ2016予選のノルウェー代表戦で、サポーターによる人種差別行為や発煙筒の投げ込みなどが発覚。
この結果、HNSは欧州サッカー連盟(UEFA)規律委員会から1試合の無観客試合と5万5000ユーロ(約721万円)の罰金処分が下され、6月のイタリア代表戦が無観客試合に該当することとなった。
via:超ワールドサッカー(2015年4月9日)
欧州サッカー連盟(UEFA)は23日、クロアチア代表に対してEURO2016予選の勝点1剥奪を発表した。英紙『テレグラフ』を含む複数のメディアが報じている。
事件が起こったのは6月12日のクロアチア対イタリア。ピッチ上に確認されたのはナチス・ドイツを象徴する「ハーケンクロイツ」マークだった。クロアチアサッカー協会(HNS)はすぐさま謝罪を発表したものの、大きな非難を浴びていた。
この事件を受けてUEFAはHNSに対してEURO2016予選の勝点1剥奪と10万ユーロ(1360万円)の罰金を科すことを発表した。
via:フットボール・チャンネル(2015年7月24日)
無観客試合の処分を受けたのに、その無観客試合でピッチの芝に不適切な落書きをしてるんですから、もう救いようが無い。
今回の試合にしても、クロアチアは1点リードしてたのだから、試合に関する不満で発煙筒を投げ入れたとは思えない。であれば「興奮し過ぎると暴走しちゃう人たちなの?」という疑問も浮かんでしまいます。
しかし今回の暴動に関しては、そんな単純な話ではなさそうな内容の記事もありました。真偽は分かりませんが引用しておきます。
クロアチア紙『24sata』などの報道によれば、事前に試合を台無しにしようとする計画は察知されていたという。同国のサッカー協会に不満を持つ一派が暴動を起こし、試合を中断もしくは中止させようとしていたようだ。
そしてそれを阻もうとする別の派閥による動きもあった。だが結局はピッチに発煙筒が転がる事態に発展してしまった。危険物を持ち込ませてしまったスタジアムのセキュリティや安全対策に問題があったとも言えるだろう。
また、スタンドから投げ込まれた物体が事態の収拾に努めていたスタッフに当たったことも確認されている。クロアチアサポーターは前節トルコ戦でもピッチへの乱入などの不適切な行動が問題になっていた。
via:フットボールチャンネル(2016年6月18日)
今回のEUROでは様々な会場で、試合中や試合後に発煙筒が投げられたり爆竹が鳴ったりしています。それほど厳重な手荷物検査が実施されているとは思えません。
フランスでは2015年11月に同時多発テロが発生しており、今回のEUROでは警備体制がどうなるのか、各方面から不安視されていました。
上の引用記事にもある通り、6月12日のクロアチアvsトルコ戦でも試合中、モドリッチのゴール直後にクロアチアのサポーターがピッチに乱入し、選手たちの歓喜の輪にドサクサ紛れで加わっています。
フランス各会場の甘い警備体制が今回の暴動を機に問題視される可能性もあります。
▲ 上の写真を見る限り、引用記事にあった「同国のサッカー協会に不満を持つ一派」が存在するのは明白です。「HNS」は「クロアチア・サッカー協会」の略称。
黒い横断幕を掲げている人物が今回の暴動に加担したかどうかは不明ですが、暴動を起こしたグループと何らかの繋がりはあるのかも。
今回の騒動を受けて試合後、クロアチアのラキティッチは「UEFA(欧州サッカー連盟)やチェコ、そしてこの大会を支えているすべての世界中の方へ申し訳ないと言わなければなりません」と謝罪の声明を発表。キミは何も悪くないのに。
またチャチッチ監督は「彼らはクロアチアのサポーターではない。スポーツテロリストだ。彼らが誰なのか特定され、罰せられることを望んでいる」と激怒しています。
今回の対戦は一部サポーターの暴徒化によって主審が没収試合にしてしまう可能性もあったらしく、選手達が懇願して試合再開となった、という報道もありました。
今回の試合は成立したものの、今後クロアチアに対して罰金だけの処分だけでなく、勝ち点の剥奪、次戦の無観客試合、そしてロシア同様に次戦も同じ騒動があった場合は途中失格処分という最悪な事態も考えられます。クロアチア選手たちはそのことを最も心配し、心を痛めています。
今回の騒動に関して選手たちには何の罪もない。勝利を目前にしていたのに、自分達を応援してくれていると信じていたサポーターの一部がピッチに火を放った。
とても哀しい表情をしながらピッチの炎や観客席を見つめていたクロアチアの選手たち。集中力とモチベーションを奪われ、交代選手はピッチを去る時に抜け殻のような表情をしていました。
サッカーファンとしては、次戦も無事開催されることを願わずにはいられません。とても魅力的な試合を繰り広げているクロアチアが試合以外の問題でEUROを去ってしまうことだけは避けて欲しい。
6月18日の試合予定
大会9日目、6月18日に予定されている試合は以下の通り。
◆グループF アイスランド vs ハンガリー
◆グループF ポルトガル vs オーストリア
初戦で完敗した優勝候補のベルギーはアイルランド戦で復活するのか。
同じく初戦で引き分けに終わったポルトガルは勝利で勝ち点を伸ばせるか。混沌としてきたグループFの争いは面白そうです。
ではでは、大会8日目のEUROレビューでした。