トーナメント準々決勝 フランスvsアイスランド
▲ フランスはトーナメント1回戦でアイルランドと対戦。試合開始直後のPKで先制されたものの、7番グリーズマンの2ゴールで逆転勝ち。
今日の試合では主力のラミとカンテが累積警告2枚のため出場停止となっています。
▲ アイスランドはトーナメント1回戦でイングランドと対戦。こちらもフランスと同じく試合開始直後にPKを与えて先制されたものの、2ゴールを決めて逆転勝ち。今大会で最大の大番狂わせと称賛されました。
アイスランド国内では、この試合のテレビ視聴率が99パーセントだったらしいです。すげー(笑)
どれだけアイスランド国内が大フィーバーに湧いたか容易に想像できるエピソードですが、逆にサッカーを見てなかった残り1パーセントの人たちが何の番組を見てたのかが気になる。
▲ 前半12分、フランスがセンターライン付近から前線にフィード。アイスランド守備陣の頭上を超えたボールに、裏を取って抜け出したフランス9番ジルーがペナルティーエリア内でシュート。これが決まってフランス先制。
長身を活かしたヘディングではなく、ドリブル突破から足のシュートで決めたジルーは今大会2得点目。
アイスランド守備陣はオフサイドを取ろうとしていましたが、全員のタイミングが合わずジルーに裏を取られてしまい、失点となりました。
▲ 前半19分、フランスのコーナーキック。7番グリーズマンが蹴ったボールに15番ポグバが助走をつけてからものすごく高い打点のヘディングシュート。ド迫力の空中戦を制したフランスが追加点。
ポグバ、圧巻の跳躍力がスゴい!
ようやく得点を決めたポグバは独特の舞いを連発。
地元開催ということもあり「今大会で最も輝きそうな選手」などとメディアから大会前に盛り上げられ過ぎ、期待され過ぎ、プレッシャーも相当なものだったと思われるポグバ。
デシャン監督の采配により、前節アイルランド戦から前線ではなく後方の守備寄りなポジションに変更されたことで、リラックスしたプレーが出来るようになったらしいです。
フランスが2点差としたことで、前半のうちになんとか1点だけでも返しておきたいはずのアイスランド。しかしボールを持っても攻撃の際にいつもの迫力が全くありません。
ドリブル突破を試みてもフランスの守備に潰されてボールを奪われ、パス回しをしてもカットされて奪われ、結局はバックパスや横パスばかり繰り返し、ダラダラと自陣でパスを回すことが多くなり、とても消極的な試合運びが続きます。
相手がボールを持ってる時も、今までであれば激しいタックルに行くことでボールを奪うか、奪えなかったとしてもフランス選手に警戒させる効果があったのですが、今日はそういう場面が前半はほとんどありませんでした。
理由としては、アイスランドの大半の選手が過去の試合でイエローカードを1枚もらっており、今日の試合で1枚イエローカードをもらうと次戦が出場停止になってしまうから慎重になったのか、あるいは雨のため滑りやすいピッチコンディションが影響したのか。
ピッチコンディションが悪いのはアイスランドだけじゃなくフランスも条件同じだろ、って意見が出るのは当然なのですが、フランスは地元だし、今回のスタジアムでもしょっちゅう試合してるだろうから、慣れてた可能性はあります。
実際に何が原因だったのかは選手たち本人に聞かないと分かりませんが、いずれにせよ、アイスランドが準々決勝に進むまでの大躍進を支えた「球際の強さ」が今日の試合の前半ではほとんど見られませんでした。
攻めてはボールを奪われ、守っては相手選手の攻撃を積極的に止めに行けず、フランス選手に自陣への進入を次々と許してしまう。2-0の時点で「もっと大差つくかも」と予測できてしまう展開でした。
▲ 前半42分、フランス8番パイェがペナルティーエリアの外からミドルシュート。キーパー届かず、フランス3点目。
▲ 前半44分、フランスが自陣からロングフィード。中央で受ける素振りを見せた9番ジルーが後方にフリックパス。
完全に意表を突かれた(油断していた?)アイスランド守備陣の間を転がり抜けたボールに走り込んでいた7番グリーズマン、最後はキーパーの頭上をフワリと越えるループシュート。フランス、なんと前半だけで4点!
ジルーが後方へスルーにも似たフリックを決め、そこへ単独でグリーズマンが走ってる場面を見たとき、「ああーこりゃもう打つ手なしだ」と私は叫んじゃいました。
ジルーの技は確かに気が利いてたし、ジルーが受ける直前にグリーズマンは既に敵陣ゴール目掛けてダッシュを開始していました。二人のコンビネーションは華麗で滑らかで見事だったけど、私が叫んだのはそっちじゃなくて、アイスランド守備陣が完全に集中力を欠いてたこと。
グリーズマンのシュートは蹴り出すタイミングも絶妙だったし、実に見事でした。とは言え、ジルーの足元をボールが抜けていった時点で4点目は決まってたようなもの。
前節アイルランド戦で完全に波に乗ったグリーズマンは今大会4点目。得点王争いの単独トップに躍り出ました。
本来フランスのエースだったベンゼマが恐喝事件の容疑者となったことで代表に招集されず、攻撃力の低下が懸念されていたフランスでしたが、フタを開けてみればいろんな選手が今大会で得点を決めています。
EUROの少し前に決勝戦が行われた欧州チャンピオンズリーグで、優勝したのはクリスティアーノ・ロナウドやベイル、そして前述のベンゼマが所属するレアル・マドリードでしたが、準優勝したのはグリーズマンが所属するアトレティコ・マドリードでした。
この決勝戦でグリーズマンはPKを外してしまい批判も浴びたのですが、アトレティコ大躍進の立役者としてグリーズマンの評価はEUROが始まる前から急上昇。今ではフランスの新たなエースストライカーとして完全に認知されたのではないでしょうか。
試合開始直後の序盤こそ優勢に進めていたアイスランドは、1失点後から攻撃も守備も完全崩壊して前半終了。
▲ 後半11分、アイスランド10番ギルフィ・シグルズソンの速いクロスにゴール前で飛び込んだ9番シグソールソンがスライディングシュート。
難しいシュートを見事に決め、アイスランドがようやく1点を返しました。
▲ 後半13分、フランスのフリーキック。8番パイェの蹴ったゴール前へのロングフィードを長身の9番ジルーが競り勝ってヘディングシュート。フランス5点目。
1点目は裏を抜けて足を振り抜き、2点目は得意の高さを活かしてヘディングを決めたジルー。今日は冴えてました。
そのジルー、得点を決めた直後に10番ジニャックと交代でベンチに下がりました。ハットトリックを期待してたからか、フランスサポーターからは拍手に混じってブーイングも。ジルー本人も少し残念そうな表情。
後半18分、アイスランドのコーナーキックにドンピシャで合わせた5番インガソンが強烈なヘディングシュート。しかしフランスGKロリスが手で弾くスーパーセーブ。
▲ 後半38分、アイスランド23番スクーラソンの蹴った左サイドからのクロスに合わせて8番ビルキル・ビャルナソンがヘディングシュート。アイスランドが2点目。
アイスランドは一矢報いた形。見方を変えればフランスの手抜き。
フランスは後半途中から守備重視に戦術を変えて積極的に攻めなくなり、ボール回しが緩くなってきていました。
そのボールをアイスランドがカットすることも多くなり、後半はアイスランドの攻め込む場面が増え始めました。
守備固めであれば相手が攻め続けるのは当然なんですが、それにしてはフランスの守備陣、なんか気が抜けてる位置取りやプレーばっかりだったんですよ。
2失点目の場面も、フランスの守備陣はクロスを蹴った選手に対する寄せが甘く、ヘディングしたビルキル・ビャルナソンのすぐ前に立っていた3番エヴラは競ることすらせず、手で止めようとでも思ったか両腕を横に広げただけ。この甘さがフランスの「なってない」ところ。
2014年のワールドカップ準決勝でドイツがブラジル相手に7点もの大量得点を獲って圧勝した試合も、最後の最後にドイツが余裕ぶっこきまくってチンタラした攻撃や守備をした挙げ句、ブラジルに1失点してしまった場面を思い出しました。
あの時はドイツのGKノイアーがめちゃくちゃ怒ってましたが、大量点差がついてしまうと気が緩んでしまうのは仕方ないことなんでしょうかねー。
むしろそういう時こそピシッと引き締めて「強いっ!」と見てる人を唸らせて欲しいと私なんぞは思うんですけど。(だから私もワールドカップでのドイツのヤラかしはめっちゃ怒った)
アイスランドは3点目を狙ったものの叶わず、試合終了。フランスが5-2の快勝でベスト4進出を決めました。
後半は優勢でフランスから2ゴールを奪ったものの、スイッチの入りが遅すぎたアイスランド。前半の停滞し過ぎた時間帯がなければもっと接戦になっていたのかもしれません。
得点で大差をつけられた試合展開だったので、毎試合大声援を送っていたアイスランドのサポーターたちが静まってしまう時間帯もありましたが、最後はいつものように選手とサポーターたちが一体となって拍手と咆哮。
素晴らしい選手たち、そして素晴らしいサポーターでした。
EUROで大旋風を巻き起こした北欧の小国は世界中から健闘を称えられ、EUROでの初冒険を終えました。ワールドカップにも出てきて欲しいなあ。あの迫力あるサポーターの咆吼を沢山の人に見て欲しい。
今回視聴率100パーセント行ってたらいいね!
準決勝でフランスと闘う相手はドイツ。どちらもトーナメントを勝ち進むにつれてコンディションを上げてきているので、好勝負に期待しましょう。

▲ トーナメント準々決勝が終了し、ベスト4が出揃いました。
強豪国が集結してしまい「死の山」と表現された側は王者ドイツと開催国フランスが勝ち残り。一方の山はグループステージを首の皮1枚で通過した後に調子を上げてきたポルトガルと、初出場ながら快進撃を続けているウェーズルが勝ち残りました。
得点王(7月3日現在)
本日現在の得点王争いは以下の通りです。
◆3得点 … ベイル(ウェールズ)
◆3得点 … パイェ(フランス)
◆3得点 … ジルー(フランス)
◆
◆2得点 … クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)
◆2得点 … ナニ(ポルトガル)
◆2得点 … マリオ・ゴメス(ドイツ)
フランス勢が得点を重ね、グリーズマンが4得点で単独トップ。ジルーが今日だけで2得点し、パイェも1得点で二人とも計3得点。2位タイに浮上しました。
3得点ながらチームが敗退したスペインのモラタは、得点王の可能性が消滅したので線を引いています。また2得点でチームが敗退した選手は除外しました。
7月6日の試合予定
準々決勝が終了し、大会は2日間お休み、次の準決勝は7月6日(水)深夜から始まります。
大会21日目、7月6日に予定されている試合は以下の通り。
ベスト4最初の試合は、グループステージをギリギリで通過したポルトガルと、初出場ながら初戦から快調な闘いを続けているウェールズが激突します。
両チームのエース、クリスティアーノ・ロナウドとベイルは共にレアル・マドリードに所属するチームメイト。何かと比較される両者の対戦は大変興味深く、面白い試合になることでしょう。
ではでは、大会20日目のEUROレビューでした。