トーナメント決勝 ポルトガルvsフランス
6月10日に開幕したヨーロッパサッカーの祭典「EURO2016」、いよいよ大会最終日となりました。
試合開始前にはクロージング・セレモニーが開催されました。
▲ クロージング・セレモニーの序盤、優勝トロフィーを持って登場したのは前回大会優勝国・スペインのシャビ。久々に見たなあ。
シャビは2014年ワールドカップを最後に代表を引退しており、今大会には出場しませんでした。
▲ 開会セレモニーと同様、公式ソング「This One’s For you」を(クチパクで)歌うザラ・ラーソンとプロデュースしたデヴィッド・ゲッタ。
この曲も1ヶ月間毎日のように聴き続けたから、すっかり耳に馴染んでしまいました。
▲ 開催国フランスは準決勝で2014年ワールドカップ王者のドイツと対戦し、グリーズマンの2得点で快勝。
先発メンバーは今日もラミとカンテを外し、準々決勝から2試合続けて起用している21番コシエルニと22番ユムティティを先発させました。
EURO決勝進出は3回目。過去の2回はいずれも優勝しています。
▲ ポルトガルは準決勝でウェールズと対戦し、クリスティアーノ・ロナウドの1ゴール1アシストで2-0の勝利。
準決勝を足の負傷で欠場した3番ぺぺが先発に復帰しました。
EURO決勝進出は2回目。まだ優勝はなく、初優勝を目指します。
過去の両チームの対戦成績はフランスが18勝に対してポルトガルが5勝(1引き分け)。ポルトガルが前回フランスに勝利したのは1975年なので、41年間フランスに勝っていません。
▲ 前半7分、パスを受け、おそらくこの試合のファーストタッチ(=初めてボールに触れた)だったポルトガル7番クリスティアーノ・ロナウドにフランス8番パイェが激突。
パイェの右足がロナウドの左ヒザ関節付近に横から突き刺すような形で直撃。危険な角度で内側に足を曲げられてしまったロナウドの痛がりように、「ああ…これはロナウド、終わったかもしれん…」と私も察知。
いったん治療のためピッチ外に出された後、なんとか試合に復帰したロナウド。
「お? 大した怪我ではなかった?」とロナウドの肉体的な強さに少し驚いた私でしたが、やっぱりそんな訳はなく、その後もプレー中に足を引きずる仕草を何度か見せており、異変を察知したジョアン・マリオから声を掛けられていました。
▲ ジョアン・マリオが声を掛けた直後の前半16分、痛みに耐えられなくなり、遂に自らピッチに座り込んでしまったロナウド。この時点で泣いてました。
12年越しに叶ったEURO決勝の舞台。まだ何もしていない前半早々の時点で足を傷めて動けなくなってしまった、その無念さと不運を想像すると正直胸が痛くなりました。
▲ 交代するのかと思っていたら、なんとか立ち上がったロナウドはスタッフに支えられながらゆっくり歩いてピッチの外へ。そして負傷した左ヒザをテーピングで固定し始めました。
こんなことで終わってたまるか、というロナウドの執念ですよ。ここまで男気を見せられたら感情移入しますよ。ロナウドのヒザよ、なんとか持ってくれ、と祈りました。
▲ 前半20分、チームメイトが攻撃で時間を稼いでくれた間に治療を終えたロナウドはピッチに復帰。フランスのサポーターから大ブーイングを浴びていました。大した怪我じゃないと観客は思ったんでしょうね。
相当ヤバい怪我だぞと思ってる私は、プレー中にロナウドが再び倒れてしまわないかが気になって試合に集中できない。
案の定、足は持ちませんでした。
▲ 前半22分、ポルトガルのカウンター攻撃。ボールを受けたロナウドはドリブルの体勢に入ったものの足が痛くて走れず、すぐ味方にパス。その様子を見たサントス監督がロナウドに向かって交代を指示。
腕に巻いていたキャプテンマークを外し、ピッチに叩きつけて悔しがるロナウド。
▲ そして再び自ら座り込んでしまいました。
交代なんかしたい訳がない。最後までプレーを続けたいに決まってるんです。なのに足は動かない。チームメイトに迷惑をかける訳にもいかない。つらかったでしょうね。
▲ キャプテンマークを17番ナニに託したロナウドは、ナニの耳元でしばらく何かを語り続けてました。目を見開いてロナウドの想いを継いだナニは鬼気迫る表情をしていました。
▲ 無念の想いを抑えられず、ロナウドは泣きながら担架で運ばれて退場し、20番クアレスマと交代。
▲ ポルトガルのサポーターだけでなく、(ようやく怪我が深刻だと悟った)フランスのサポーターからも拍手。ロナウドは担架に横たわりながら号泣。
サントス監督だけでなく、敵将のデシャン監督も担架に歩み寄ってロナウドを労っていました。
主将でありエースのロナウドを失ったポルトガルですが、しかしここでバタバタと崩れていくこともなく、前半終了まではむしろロナウド交代前よりも勢いが出てきて、相手陣内にも何度か進入するようになります。ただしシュートは全然枠に飛ばない。
一方のフランスも攻撃する機会は多く決定機も作るのですが凡ミスもあり、逆にフランスのほうがドタバタしてないか? っていう展開になり始めます。
後半20分、フランス20番コマンのクロスをゴール前に飛び込んでいた7番グリーズマンがフリーでヘディング。しかしボールが浮いてしまい枠の外へ。
ゴールはすぐ目の前で、軽く合わせるだけで得点できたはずなのに、グリーズマンもおかしくなり始めた。
後半34分、ポルトガル17番ナニのクロスは直接ゴールへ向かい、GKロリスがなんとか手で弾いたボールを20番クアレスマがオーバーヘッドシュート。枠内に飛んだもののGKロリスの正面。
アディショナルタイムに入った後半47分、フランス3番エヴラのクロスをペナルティーエリア内で受けた10番ジニャック、個人技で相手をかわしてのシュートは惜しくもポスト直撃。
ボールがあと1個分だけ右に飛んでいれば、そのまま試合は終わってフランスの優勝という決定的な場面でした。フランスも決定機をものに出来ません。
▲ 90分で両チーム得点ならず、延長戦に突入。
治療を終えてロッカールームから出てきたロナウドが90分闘い終えた仲間たちを称え、そして鼓舞して回っていました。
▲ 延長戦の開始時からベンチに戻ったものの、試合展開が気になって全く落ち着いてられないロナウド。
延長後半2分、フランスのペナルティーエリアすぐ前でフランス21番コシエルニがハンドの判定。
しかしリプレイで確認すると、実際に手で触っていたのはコシエルニではなく競っていたポルトガル9番エデル。この誤審に無罪のコシエルニは憮然。リプレイが流されてスタジアムはブーイング。
このファウルで得たフリーキックを20番クアレスマが蹴ると見せかけて5番ラファエル・ゲレーロが意表を突いたシュート。場内どよめく意外な展開、しかし惜しくもクロスバー直撃。
延長後半4分、ポルトガル9番エデルがフランス21番コシエルニと競り合い。
体を寄せられながら強引にコシエルニを振り切ってドリブル突破したエデルはペナルティーエリア外からミドルシュート。
▲ 結構な距離があったもののGKロリスは届かず。見事に決まり、なんとなんとポルトガル先制!
試合見てた人、「わー!!」って叫んだでしょ。叫んだよね。私は叫んだよ。
▲ 殊勲のエデルはベンチに駆け込んで仲間たちと大喜び。ロナウドは足を負傷してるから走れなかったけど、リプレイを見たら目を真っ赤にして泣きながら祝福してました。
グループステージの2試合に出場しただけで、あとはプレーの機会がなくベンチを温めていたエデルのミラクルなゴールは、日本が初めてワールドカップ出場を決めた1997年アジア最終予選イラン戦での岡野の決勝ゴールを思い起こさせました。髪型も似てたし。
エデルと競り合って振り切られたフランスのコシエルニはイエローカードを1枚もらっていたため、あまり強くエデルをマークできない(またエデルを倒したらレッドカードで退場になってしまう)という弱みがあり、そこを突かれた形での先制ゴール。
そういえば、そのイエローカードは本来エデルがファウルだったのに主審が間違えて出されたもの。誤審に泣き、失点に泣き、コシエルニは不運としか言いようがない。
パニックで焦りまくるフランスは守備でファウル連発。パワープレー中心になってきたフランスの攻撃をポルトガルはゴール前で耐え続ける。
▲ ロナウドもテクニカルエリアに入って選手達に熱く指示。そこは監督しか入ったらあかんところよ、ロナウド。
▲ たぶん副審が注意しに行ったんだろうけど、ロナウド完全無視。
▲ 遂には監督を怒鳴り始めたロナウド(笑) もうどっちが指揮官か分からない。
▲ テクニカルエリアで熱くなってるロナウドがテレビに映る度、私は爆笑してました。
前半早々に負傷した時もロナウドが気になって試合に集中できなかったのだけど、延長後半は逆にロナウドが面白すぎてそっちばっかり気になって試合に集中できん(笑)
明らかなルール違反ですので、きっと大会運営側から怒られることになるんでしょうけど、私と同様に見てる人もみんなロナウドの気持ちが分かったでしょうから、あえて放置してたのかもしれないですね。延長後半の山場だったから審判団も試合を止めないよう配慮したのかもしれないし。
延長後半17分、フランスが敵陣ペナルティーエリア内で最後のチャンス。しかしオフサイドで自滅。
▲ そして試合終了。ポルトガルがEURO初優勝!
▲ 開催国フランス散る。
しばらく立ち上がることが出来なかったジニャックは後半終了直前、あのシュートが決まってさえいれば試合結果は逆になっていただけに、どれほど悔しかったか。
▲ 優勝の瞬間、第2監督のロナウドはベンチ前でスタッフと抱き合い、何かを叫びながらまた泣いてる。
▲ そしてやっぱり脱いでたロナウド。なんでお前が率先して脱ぐんだよ。
▲ サントス監督の胴上げ。今大会の予選途中で前監督が更迭され、代わってポルトガルを率いることになったサントス監督は、本大会優勝という大きな結果を残したことでかなり評価が上がるでしょうね。
▲ 12年前、まだ19歳だったロナウドがEURO決勝で負けて号泣した時にポルトガルの絶対的エースであり英雄だったフィーゴが、遂に母国の悲願を成し遂げてくれた後輩であり新たな英雄であるロナウドとガッチリ握手。
試合中にフィーゴの様子が国際映像に映し出された時、落胆してましたもんね(あとアクビもしてた)。まさか彼もこんな試合展開と結末になるとは予想してなかったことでしょう。
ちなみにロナウドは今大会で、フィーゴの持つポルトガル代表試合出場記録を塗り替えています。
▲ 優勝メダルを授与された後、優勝トロフィー「アンリ・ドロネー杯」をロナウドが掲げ、雄叫びをあげるポルトガルの選手達。おめでとう!
▲ 嬉しすぎてテンションがおかしなことになっております。
▲ グループステージをギリギリの3位で通過したポルトガル。決勝戦に進出することも想像できなかったけど、試合序盤にロナウドが負傷交代した時点で、この場面を想像した人がどれだけいたか。
EURO2016、最高にサプライズなエンディングとなりました。
EURO2016・得点王
大会の全試合が終了。得点王争いは以下のようになりました。
◆3得点 … クリスティアーノ・ロナウド(ポルトガル)
◆3得点 … ナニ(ポルトガル)
◆3得点 … パイェ(フランス)
◆3得点 … ジルー(フランス)
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上位の選手たちはいずれも今日の試合で得点がなく、6得点でグリーズマンが今大会の得点王に輝きました。
りくま ( @Rikuma_ )的まとめ
2014年のワールドカップ・ブラジル大会でも全試合レビューをこのブログで書いたのですが、今回のEURO2016も全試合レビューを書き遂げることができました。読んで下さった方々、ありがとうございました。
ワールドカップの時は結構予想が当たってたんですよ。でも今回のEUROは予想を外しまくりました。決勝に進むのはドイツ、クロアチア、ウェールズ、イタリアのどこかだろうと予想したら、実際はドイツを倒したフランスと、ウェールズを倒したポルトガルですからね。
WOWOWには昨年加入したので、EUROをテレビ観戦するのは今大会が初めてでした。初めて見るチームも多く、どの国も実力が拮抗していて接戦の連続で、ワールドカップとはまた違った面白さを堪能できました。どのスタジアムも熱狂的な応援がスゴかったし。
2年後のワールドカップも楽しみですが、4年後のEUROも楽しみでなりません。ではでは、EURO2016決勝戦レビューでした。