グループG ドイツ vs ポルトガル
via:FIFA.com
グループGの4チーム(ドイツ、ポルトガル、アメリカ、ガーナ)は、前回南アフリカW杯でいずれも決勝トーナメントに進出していて、グループD同様にハイレベルな争いが期待できます。
そんな中、注目していたドイツvsポルトガルの一戦ですが、「衝撃的」「予想外」などと報じてたメディアもあったんですけど、個人的には衝撃的でも予想外でもなかったですわ。
スペインがオランダに5点取られた時や、コスタリカがウルグアイから3点取った時は、得点シーンが増えていく度に「うわぁ…」「マジか…」と唸りました。オランダの圧勝劇とコスタリカの下克上は確かに衝撃的&予想外でしたが、ドイツは何といってもドイツですから。強いんだもん。
今大会の決勝はブラジルvsオランダと予想してるんですけど、これはひょっとするとドイツvsオランダになるかもしんねえぞとすら思ってしまうほど、貫禄すら感じる試合内容でした。
前半10分、ドイツ19番ゲッツェのPAへの侵入をポルトガル21番ペレイラがユニフォーム引っ張って倒しちゃいました。ドイツがPK獲得。
ドイツ13番ミュラー、PKをキッチリ決めてドイツ先制。
前半31分、今度はコーナーキックからドイツ5番フンメルスが192cmの長身を活かした高いヘディングで2点目。
前半36分、ポルトガルのゴール前に突進したミュラーをポルトガル3番ペペが制した際に、ペペの腕がミュラーの顔面を直撃。ミュラーは倒れました。このプレーを主審は流したのですが、倒れたミュラーが顔を押さえて痛がってるのが気に食わなかったのか何なのか、倒した側のペペがミュラーに頭突きをやりやがった。
それまで顔を押さえて痛がってたミュラー、頭突きされた直後に物凄い勢いで立ち上がり、憤怒の表情でペペを怒鳴る。「おうおう、やるんかコラ」みたいな感じでペペはヘラヘラ笑ってたけど、頭突きの瞬間を主審はしっかり見てました。一発レッドでペペ退場。笑いながらピッチを去るペペ。こいつアホや。
ペペには、ピッチ上での前科がある。2009年4月に行われたヘタフェ戦では、ボールを奪った際に相手選手に蹴りを入れて、10試合の出場停止処分を科された。バルセロナ戦では、FWリオネル・メッシの手を踏みつけたこともあった。逆に、プレスを掛けに来た相手と接触もないのに、派手に倒れることもしばしばだ。
via:ゲキサカ
知ってる人は知っている素行不良っぷりをW杯初戦でやらかしたペペがいなくなり、ただでさえ防戦一方のポルトガルは1人減って10人となり、絶望的な状況。
ミュラーはその後も止まりません。前半アディショナルタイム、PA内で相手DFのクリアを防御した形となり、そのままシュートして3点目。さらに後半33分、ゴール前の混戦をミュラーが押し込んで4点目。
ミュラーは初戦からいきなりのハットトリックで大活躍。前回南アフリカW杯では5点を取って得点王だったミュラーですが(前回はミュラーの他に、ウルグアイ・フォルラン、オランダ・スナイデル、スペイン・ビジャの合計4人が得点王でした)、今大会は初戦でいきなり3点取っちゃった。2大会連続の得点王あるかも。
さて、4点取られて負けてしまったポルトガルですけども。
負傷が心配されたクリスティアーノ・ロナウドはフル出場。何回か得意の高速ドリブルで敵陣に斬り込んでみせたのですが、早めに味方へパスを出したり(それを味方がミスってばかり)、ドリブル自体が相手に引っ掛かってたり、あんまり本領発揮って感じではなかった。やっぱり足の負傷が響いてるのかもしれません。
興味深かったのは、クリロナさん、ブーイング浴びまくってました。
後半、久々にチャンスとなったポルトガルの11番エデルがPA内でシュートを打つ直前に倒され、主審はPKを宣告するような仕草を見せて流すというフェイント。これにクリロナさん激怒。
ウサイン・ボルトの世界記録に迫る勢いの猛ダッシュで主審のとこまで走って猛抗議。スタジアムが大ブーイングしてたので、主審に対してかと思ったらクリロナさんに対してだったらしいですわ。
イケメンでマッチョでお金持ちなのにブーイング浴びるなんてカワイソウ…だとは思いはしない♪
カワイソウと言えば、ポルトガルは試合中に負傷者が相次ぎました。前半29分に9番アウメイダが負傷のため交代。さらに後半20分には5番コエントランが負傷し交代。二人とも楽観視できない負傷のようです。
F・コエントランはドイツに0-3と大きくリードされ、DFペペの退場で迎えた後半、ボールを争った際に足のつけ根を痛めた様子で交代を求めた。そのままストレッチャーで運び出された同選手のコメントを、スペイン『アス』が伝えている。
「正直、僕のW杯は終わったと思う。深刻なケガだと確信している。自分が間違っていることを願っているけどね。悲しいけど、この仕事ではこういうことがあるんだ。僕の人生で最も悲しい日の一つだよ」(中略)
しかも、負傷者はF・コエントランだけではない。前半にFWウーゴ・アウメイダもハムストリングを痛めて交代を余儀なくされている。『アス』によると、ポルトガル代表のメディカルスタッフは、F・コエントランとH・アウメイダが「7日から3週間」の離脱になる見込みと明かした。
via:ゲキサカ
退場となったペペは次のアメリカ戦も出場停止。アウメイダもコエントランも出場は厳しそう。しかもクリロナさんも本調子じゃない。後述しますが、残す相手のアメリカとガーナは決して侮れない。ポルトガル、けっこうヤバイかもしれません。
一方のドイツも無傷ではなく、2点目を決めた5番フンメルスが後半25分過ぎに足を負傷。自力で歩けないほど傷んだらしく、スタッフに支えられて交代となりました。
現在、W杯通算得点が14点のクローゼ、今日は出場しませんでした。3点差になったら出てくるかなと思ったけど、若手を優先して交代させたようです。ちなみにW杯通算得点の最高記録は元ブラジル代表のロナウドが持つ15点。今大会での記録更新なるかが注目されてます。
前回大会ではブイブイ言わせてたシュバインシュタイガー。数日前の練習で左足を負傷してしまい、今日は温存されました。
選手層も厚いドイツ。今回は怒濤の攻撃力だけでなく、強固な守備も見事でした。ポルトガル攻撃陣の単調でミスの多い攻めのせいもあったけど、とにかく固い固い。
ドイツ、よっぽどのことがない限り負けないですよ。
○ドイツ 4 – 0 ポルトガル●
【得点】
(ドイツ)ミュラー(前半12分)
(ドイツ)フンメルス(前半32分)
(ドイツ)ミュラー(前半46分)
(ドイツ)ミュラー(後半33分)
グループF イラン vs ナイジェリア
via:FIFA.com
この試合の前まで、今大会は引き分け試合が1つもありませんでした。さらには、どの試合でも必ず得点シーンが生まれてます。
で、どの試合が今大会初の引き分け試合になるかな〜って予想したら、イランvsナイジェリアだろうな、しかも両チーム無得点のスコアレスドローになるんじゃないかな、って戦前予想してたのですが、その通りになりました。絵に描いたような凡戦。
90分、最初から最後まで見ましたけど、数回ほど気を失ってましたね。人はそれを睡魔と呼ぶこともあるんですが。
ゴール前でシュートチャンスになって「おおっ!」と注目するような場面は、90分通して片手で数えられるくらいしかありませんでした。ゴール前までボールが行かないんだもん。パスは繋がらないし、個人技で抜くわけでもないし。
特にナイジェリアは、もうなんやかんやといろんなことが「雑」。ようやくボールを奪って、さあ攻めるぞ!って前線にパスしたらトラップ失敗して外に出したりだとか。そんなんばっかりやもん。
ブラジルのお客さんたち、前半はなんとか堪えてましたが、後半になってガマン出来なくなりブーイングを始めちゃうし。特にしょーもないミスの時は容赦なくブーブーと騒ぎ始めた。
試合終了のホイッスルが鳴った時のブーイングが一番大きかったってのが、この試合を象徴してました。
で、1つだけ、すごく気になったことがありました。
イランは資金難の問題で、ユニフォームは選手1人につき1着にする、という報道があったんです。
イランサッカー協会が資金難を理由に「ユニホームは1着に限る」と通達したためだ。核開発に対する米欧の経済制裁の余波が、こんなところにも表れた。
イランのファルス通信によると、イランサッカー協会は「毎試合ユニホームを捨てるのは無駄。選手は丁寧に扱わねばならない。お湯での洗濯は(縮むから)避けるべきだ」とした。
via:朝日新聞
でもナイジェリア戦終了後、健闘を称え合ってたイラン選手の何人か、ユニフォーム脱いでたぜ? あれはもしかして、交換しちゃったのではないのか?
もしかすると次戦、白Tシャツに黒マジックの手書きで背番号を書いたイラン選手の姿が見られるかもしれません。
△イラン 0 – 0 ナイジェリア△
【得点】
なし
グループG ガーナ vs アメリカ
via:FIFA.com
いや〜面白かった!この試合は抜群に面白かった。この試合の前にイランvsナイジェリア戦を見てたから、面白さが3倍増しになりました。
アメリカとガーナは、2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会に続き、W杯で3大会連続の対戦となったんだそうです。毎回当たってるというのも珍しいですよね。運命なのかも。
で、対戦成績はガーナの2勝0敗。つまりアメリカはガーナに勝ったことがない、という状況で今大会が3回目の対戦となりました。
スタジアムにはアメリカのサポーターが多数詰めかけていて、試合前から「USA!USA!」の大合唱。こういう雰囲気がアメリカらしくて好きです。
アメリカのホームみたいな雰囲気で始まった試合は、いきなり開始30秒で動きました。
最初のスローインからボールを受け取ったアメリカ8番デンプシー。見事な個人技で相手をかわして最初のシュートがいきなり決まった!
あまりの電光石火っぷりに鳥肌立ちました。アメリカ先制。ちなみに過去2戦はいずれもガーナが先制してたんだそうです。解説のセルジオ氏、「ガーナは試合の入り方をミスした」と語ってましたが、開始30秒で入り方ってのも酷だよ。
で、ここからアメリカは守備重視になりました。というかセルジオ氏によれば、この形が本来のアメリカの戦い方で、先制点が入ってようが入ってなかろうが、守備を固めてカウンターが基本の戦術じゃないか、とのこと。
ということでアメリカは引き気味になったのですが、前半の早い段階で得点を奪われたのもあり、ここからガーナの超猛攻が始まりました。とにかく攻めまくり。
クロスやフィニッシュの精度が低かったため、なかなか得点には結びつかないんだけど、ガーナの選手たちはとにかく走る走る。守備固めというよりも防戦一方になったアメリカは、それでも一つ一つのピンチをなんとかクリアしていく。隙を見てボールを奪ったらカウンターで逆襲するのだけど、アメリカは攻撃らしい攻撃をさせてもらえません。
最初こそUSAコールで盛り上がってたスタジアムのお客さんたち、あまりのガーナの攻めっぷりにずっとザワついてました。
1点目を入れたデンプシーは途中、ガーナ選手とヘディングで競り合った際、ガーナ選手が空中でまさかのハイキックを炸裂させ、顔面蹴りでダウン。故意ではないということでイエローカードなどは出なかったんですが、鼻血は出ました。試合後の本人談話によれば、骨折の可能性があるそうです。
「私の鼻は折れていると思います」。fifa.comによると、試合後にデンプシーは自身が鼻骨骨折をしていることを示唆した。デンプシーは得点後の前半33分、空中戦を競った際にDFジョン・ボイェに顔面を蹴られて鼻から出血。治療後にピッチへ戻り、フル出場したものの、満足に呼吸できない中での戦いだったという。後半37分に同点ゴールを奪われた際は勝ち点を失う事を覚悟したというが、それでも信じて戦い続けてCBジョン・ブルックスの決勝点によって勝利。チームリーダーは諦めずに戦い抜いたチームメートたちを讃え「次の試合前には(自分も)鼻で呼吸できるようになるだろう」と語った。
via:ゲキサカ
ハードワークの守備を強いられたアメリカは他にも負傷者が続出。前半15分過ぎにはカウンターで攻め上がってた17番アルティドールがドリブルの途中で足を押さえ、自ら倒れてしまいました。セルジオ氏によれば、太ももの裏の筋肉が肉離れになったのではないかとのこと。「彼は今大会、もう無理じゃないか」だそうです。
アメリカは3人の交代枠を全て負傷者との入れ替えに使うという誤算。実況アナは2人と言ってたけど、3人目の交代選手も足を引きずってました。
後半36分、PA内でボールをもらったガーナ3番ギャンが技ありのヒールパスで後ろに流し、10番アユーがアウトステップのシュート。これが見事にゴールネットを揺らし、遂にガーナが同点に追い付きました。延々と攻撃を続けたけど決定力に欠けたガーナの執念が実った。
しかし!そのわずか4分後。
後半40分、負傷した先発メンバーに代わって途中出場の6番ブルックスが、コーナーキックのセットプレイで勝ち越しヘッド炸裂! これも鳥肌立ったわー。
直前のプレーでガーナ19番メンサーがライン際でセーフティーに守れば良かったのに無理な体勢になって自分の足にボールを当てて出してしまい、アメリカのコーナーキックにしてしまったのが勝ち越しゴールに繋がってしまいました。
失点直後にすぐ追い付き、シーンとなってた場内が再び「USA!」の大合唱。
残り時間はアディショナルタイムも入れて約10分。ガーナは再び同点に追い付くため攻めようとしますが、見てて明らかに分かるほどスピードがガクンと落ちてしまいました。さすがにあれだけ走ってたら疲労も凄まじかっただろうと想像できます。ボールを追い掛ける足が止まってしまい、そのままアメリカが逃げ切って試合終了。
ホイッスルが鳴った時、観衆も、そしてアメリカのベンチも、まるで決勝トーナメント進出を決めたかのような大騒ぎになってました。最後までスゴイ試合でした。この結果によりアメリカはようやくガーナから初勝利。
勝ったアメリカも、そして負けたガーナも素晴らしかった。同じグループのドイツが4得点で1歩抜け出た印象で、ポルトガルは残すアメリカ戦とガーナ戦も難しい試合になりそうな気がします。
ただ、ポルトガルと同じくアメリカも負傷者が続出しているので、次戦までにどれだけ回復するかが勝敗のカギを握りそうです。
○アメリカ 2 – 1 ガーナ●
【得点】
(アメリカ)デンプシー(前半1分)
(ガーナ)アユー(後半37分)
(アメリカ)ブルックス(後半41分)
6日目の見どころ
6月18日は、グループHの4チームが登場。ベルギーvsアルジェリアと、ロシアvs韓国の2試合。これで出場国すべての初戦が終わります。
直前の強化試合で0-4と惨敗し、国内批判がどんどん高まってる韓国は、ロシアとの試合結果によっては更に大騒ぎとなるから負けられない一戦となります。
もう1試合、グループAのブラジルvsメキシコも好カード。ここから各チームは2試合目に突入していきます。
以上、5日目の試合レビューでした。
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