数々の名言を残してくれました
渾身のギャグを「寒っ!」とリアクションされると、言い放った自分の心も季節に関係なく寒さで震えます。
それはともかく、年末です。
今年も残り数日。一年を振り返る何かしらの文章を書いておくべきだなと感じ、勤務先の社長が発した名言の一部を紹介することにしました。なぜって、他にネタが思い浮かばんのだ。
全国的に有名でもなければ弁が立つ訳でもなく(むしろ極度のあがり症)、含蓄ある言葉を放つこともない社長ではありますが、何かの間違いで誰かの心に響くのであれば、後先考えず暴走する社長にとってこれ以上の名誉はないでしょう。本人に伝えはしませんが。
とりあえず流行には乗っかる
社長は基本的に、テレビでスポーツ中継を観ません。おそらく夜に放送されるニュース番組で結果だけを知るか、翌日の新聞朝刊で結果だけを知るか。情報ソースはそのくらいだと思います。
うちの職場は毎朝決まった時間に朝礼があり、まず社長の訓示から始まります。業務連絡やスケジュール確認など基本的な内容の前に、まず前日にあった出来事などをピックアップして雑談のような内容から入る事が多く、時事ネタは頻繁に登場します。
その日の朝礼は、満面の笑顔で語り始めた社長の一言から始まりました。
ウモウくんって誰? 友達なのか取引先の人なのか飼い始めた犬の名前なのか。社員一同、ポカーンと反応なし。
「日本を背負ってね、プレッシャーもかなりあった中で、あれだけの結果を残すってのはね、若いのにスゴイな!」
ここで女性社員の優子さん(仮名)が何かに気付きました。社長のスットボケ発言で何か違和感を覚えた時、優しくフォローしてあげる唯一の人なので「優子さん」という仮名にしてみました。ちなみに冷たくフォローするのは私の役目です。
優子さん、「社長、昨日のスケートですか? オリンピックのスケート?」
ここで大半の社員が「ああー」と気付いた。
「そうそう、優子くんも観た?」と嬉しそうな社長。
「社長、ウモウくんではなく、ハニュウと読むんですよ、難しいですよね〜」と優子さん、優しく訂正。
「あ? ハニュウ? ウモウと書いてハニュウと読むの?」と、まだウモウに固執する社長。
「いえ、字が違うんです」と優子さん笑顔。失笑ではなく、包み込むような笑顔。
「そうなの? どんな字だったっけ? りく君!」
こういう時、社長は唐突に私に対して救いを求める傾向にあります。持ってたiPhoneでYahoo!のニュースから羽生選手の記事を検索し、「羽生」という文字を最大に拡大してから見せてあげました。
「んー? これウモウだろ……あ、生か。『毛』じゃなくて『生』か。ああー、羽に生まれると書いてハニュウと読むんか、いやいや待て待て、これはハニュウじゃなくてハブだろ、将棋のハブ」
確かに将棋の羽生さんは読みが「ハブ」なんですけどね、そもそも本当にテレビ観てたのであれば実況アナが何度も何度も「ハニュウ」と言ってるのを聴いてるはずで、やっぱり社長はテレビ観てないんだろうなと。
この名言が生まれた前日は、ソチ五輪のフィギュアスケート競技・団体戦で、日本選手の1番手として登場した羽生選手が圧巻の演技を見せてトップに躍り出た日。フィギュアスケート好きな人は当然ながら羽生選手を知ってるだろうけど、そうでもない人々はこの日に初めて羽生選手の名前やルックスを知ったのではないかと。
そんな訳で社長もたぶん前日か、当日の新聞かで初めて羽生選手の事を知ったんでしょうけど、それにしても『羽毛』と読み間違えて、それを朝礼でサラリと言ってのける辺り、幾多の修羅場をくぐり抜けたからこその度胸があります。
なお、読み間違いに気付いた社長は直後に、
「生きるというのはね、毛が生えるという事でもあるわけでね」
と摩訶不思議なすり替えで上手い事言ったような表情になって朝礼を再開したのですが、笑ってあげた社員数名は優しいな、と思いました。
話す前に電卓を使いなさい
800円の熊手買ったぞ、1000分の1やぞ、ってもう基準分からん
— りくま (@Rikuma_) 2014, 3月 31
某政治家が企業から借り受けた8億円という大金について物議をかもし、その用途の一つとして「熊手を買った」と言い放ったことで国民から総ツッコミを受けたという一件。
政治ネタにもうるさい社長が揶揄するつもりで言ったのだと思われます。
しかし「800円」が「8億円」の1000分の1ではない、ということは暗算でも分かりますので、もしかすると違う人の熊手のことを言っているのかもしれません。じゃあ誰のだよ。
本文と関係のない余談ですが、プロレスファンであれば上の社長の名言を聞いて
「1+1は2じゃないぞ、オレたちは1+1で200だ! 10倍だぞ10倍!」
小島聡選手の名言が条件反射で脳内に浮かぶのではないでしょうか。
この「10倍だぞ10倍」ネタをツイートしたら、当の小島聡選手本人から返信が来たという出来事がありました。めちゃくちゃビックリしました。小島選手、大好きです(ウソじゃないよ)
嬉しい?です(笑)。 RT @Rikuma_: 小島の算数迷言は当時私も爆笑しました [Share] プロレスの魅力丸見えのレスラーの名言(迷言) 5選! http://t.co/Saov0YPf
— 小島 聡【SATOSHI KOJIMA】 (@cozy_lariat) February 16, 2013
そっちじゃない
今朝の朝礼で社長が「チャゲは猛省の日々になるのではないか」と語り始めたが、誰も訂正しなかった血も涙もない職場に勤めてます
— りくま (@Rikuma_) 2014, 5月 19
ASKAが覚せい剤取締法違反で逮捕された翌日、社長が朝礼で言い放ちました。
チャゲに土下座して謝れ。
たった4文字をなぜ覚えられないのか
チャゲアス関連でもう1つありました。
社長は勤務中、機嫌が良くなると鼻歌を歌うことがあります。歌で自身をリラックスさせつつ周囲の社員(特に俺)の集中力を乱すのですが、歌詞を覚えていない歌が多く、そんな時は「ララララ〜」でごまかします。
その時もチャゲアス関連の話題で盛り上がった流れだったか、雑談を終えて席を外す際に名曲『YAH YAH YAH』を口ずさみ始めました。
あと残りたったの4文字でコンプリートでした。むしろそれなら全てララララにしてもらった方がイライラしなくて済むのですが、社長ワールドは壊せないので仕方がありません。
ザ・ベストテンじゃあるまいし
テニスの錦織圭選手が全米オープンで準決勝に勝利し、日本人選手として初めて決勝戦に進出した時の名言ですが、もちろん社長はテレビで観戦していません。
そもそもデビュー戦ではないので、全米に初登場したわけではありません。おそらく社長の脳内に錦織が初めて登場したのだと思われます。
温厚な優子さん(仮名)がマジギレ
午前中、兼業で農家をされている取引先の方から、野菜や卵などの食材を大量に頂いたことがありました。社員一同、歓喜。
せっかくだから、この食材で社員のために昼食を作りましょう、ということになったようで、いつもお昼時に外食をしている男性社員たちはタダ飯にありつけて拍手喝采。
調理担当の優子さん(仮名)が「何を作りますか〜?」と社員たちにリクエストを確認してる声が休憩室から何度か聞こえました。
「伊達巻き!」「酢豚!」「味噌ラーメン!」と、全然統一されてない料理名が各社員から発せられています。
まだ休憩室に行っておらず、事情を知らなかった私は社員たちが何を騒いでるのか分からず、「急に中華料理店でも始めたのか?」と不思議だったのですが、社員が希望メニューを1つ言う度に、これまた意味不明な絶叫が挟まっていることに気付きました。
声の主は社長でした。
食材の中にキャビアがあるはずもなく、調理して欲しいものではなくて自分が食べたいだけのものを社長が絶叫しているだけでした。
たぶん30回くらいキャビア!キャビア!と叫んだ挙げ句、あまりの執拗さに
「社長は黙ってください!!!」
と優子さんの怒声が響きました。あの温厚な優子さんの金切り声に、私は自分の席でお茶を噴きました。
ある意味で天下を取っている
社長は織田信長が好き。でも歴史はあまり詳しく無さそうです。私は日本史が大好きなので、社長とたまに日本史談義をするのですが、7割くらいは会話が噛み合いません。
ある日の朝礼でも、話の流れが何だったかは忘れたけど、信長の話になりました。
信長がすごく温厚になってました。しかも野望じゃなくて願望。パラレルワールドの信長なのかもしれません。
朝礼の後、念のため「あのホトトギスは、ボケたんですか?」と社長に確認したところ、社長は素で「鳴かせてみたい」だと思ってたらしく、「正解は『殺してしまえ』ですよ、しかも、信長本人がそれを言った訳ではないですよ」と伝えると「うそっ!」と驚いてました。知っとけよ。
つけ加えて社長は、もし自分が信長だったら、
と言うだろうな、とドヤ顔で教えてくれたんですけど、もうそれは信長というより「男はつらいよ」の世界ですね。
1回福岡から出ようか
西武ライオンズからアメリカ・メジャーリーグのボストン・レッドソックスに移籍し、数チームを流浪して2015年から日本の福岡ソフトバンクホークスへの移籍が決定、久々に国内復帰する松坂大輔投手のニュースが流れた翌日。
朝礼で社長が松坂投手について話し始めたんですけど、「ボストン・レッドソックスに移籍してワールドチャンピオンになり、今年はニューヨーク・メッツに所属していた」と、ヤケにスラスラと、しかも正確な情報を説明しました。
スポーツ好きな割に間違った情報ばっかりの社長が、実はメジャーリーグ好きで情報にも詳しいのか? と驚きながら見てみると、手帳に書いた何かを読んでました。新聞か何かをメモってきたのでしょう。
朝礼が終わって雑談になった際、社長に「松坂がレッドソックスに行く前、何ていうチームにいたか知ってます?」とクイズを出してみました。
社長、一瞬だけ「え」と、頭の中が真っ白になったかのような表情を見せたのですが、すぐに「たぶん間違ってないんじゃないかな」みたいな表情に変わって言い放ったのが、
え、F-1のドライバーだったの松坂って。
いやいや、日本のチームですよ、高校卒業してからメジャーに行くまでずっと所属してたチームです、と私が第1ヒント。
いやいや、そんなに古くないです。ほら、関東に鉄道の路線があって、百貨店なのかな、商業施設も持ってて、ホテルも持ってた、と第2ヒント。
西鉄はダイエーよりもメチャクチャ古いわ! しかもそれ福岡の鉄道会社!
西武ライオンズですよ、知らなかったですか? と正解を告げると、「せいぶ? 西部警察?」って。聞いた俺がバカだったわ。
りくま ( @Rikuma_ )的まとめ
散々ネタにしてしまいましたが、私が会社を辞め、再就職できず苦しい日々が続き、DVDレンタルショップなどでフリーターをしていた自分を採用してくれたのが他ならぬ社長でした。なので社長は恩人。感謝してもしきれないほど助けて頂きました。
ただ転職初日の朝礼にて、初対面となる社員の前で私のことを「元システムエンジニアという仕事で映画を売ってた才能ある人」とミックス&省略し過ぎた紹介をしてくれたのは感謝してません。しばらくいろんな社員から「アンタ、前の会社で何やってたの?」と奇妙な目で見られました。
そんな愛すべき社長ですが、そろそろ天然ボケのツッコミ担当は他の社員に引き継ぎしたいな、と来たる2015年に切実な希望を持ちつつ、2014年の総括とさせて頂きます。