東京こそがウォーキングに最適な街なのではないか、と最近思い始めている

わずか1年で幕を閉じた「東京時代」

大学を卒業して最初に就職したのは、東京のIT企業でした。今でこそ福岡・北九州市での生活が長くなったのですが、社会人としてのスタートは東京だったのです。

とは言うものの、「会社が東京にあった」というだけで、社員寮は千葉県市川市や埼玉県浦和市(現在の「さいたま市」)にありました。なので「東京に住んでいた」訳ではありません。

また、勤務先も神奈川県川崎市や栃木県小山市のプロジェクトでの常駐期間が長くて、東京の職場にはほとんど行ってません。新入社員研修での数ヶ月間を除けば、おそらく両手で数えられるほどの回数くらい。

そんな感じで「東京で毎日生活していた」と表現できるほどの濃さはないものの、関西弁や九州弁がすっかり抜け落ちて東京の言葉で喋ってしまう程度には東京に染まり、東京の鉄道に乗って通勤していたこともあり、あの頃のことを「東京時代」と自分で呼んでいます。

その東京時代も、様々な理由があり、わずか1年ほどで終了しました。北九州市にあるIT企業の転職試験に合格したことで、東京時代は終焉を迎えたのです。

「東京卒業」の後、1つだけ後悔したこと

東京の会社に就職したのと同じ年に、『北の国から ‘92巣立ち』というテレビドラマが放映されました。それまで『北の国から』シリーズに対して特に深い思い入れなどはなかったのですが、この『’92 巣立ち』以降、このシリーズを溺愛することになります。

出演:田中邦衛, 吉岡秀隆, 中嶋朋子, 裕木奈江, 菅原文太, 岩城滉一, 地井武男
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その『’92 巣立ち』では、東京で生活していた純(演じるのは吉岡秀隆)が、都会での生活に夢を見ながら上京したタマ子(演じるのは裕木奈江)という女の子と出会って深い仲となり、そして別れるまでがストーリーの核の1つとして描かれています。

最後、故郷の鹿児島に帰ることになったタマ子は、純と最後の時間を過ごす公園で、独り言のように呟いたのです。

東京はもういい、あたし、卒業する

このドラマが放送されたのは5月で、自分が東京の会社に就職して2ヶ月目の頃ですから、まだ東京での生活に夢と希望を抱いていた頃の自分にとって「東京を卒業する」なんてセリフは完全に他人事だったわけです。

しかし、それから1年もしないうちに、自分も「東京を卒業する」ことになりました。

社員寮に別れを告げ、浜松町からモノレールで羽田空港へと向かう途中、港区のビル群を眺めながら「ああ、これで俺も東京を卒業するんだな」と思い、ずいぶんと感傷的な心持ちになったのを覚えています。

あれから30年が経った今も、また東京で働きたいとか、東京で生活したいとか、そんな気持ちは一切ありません。身も心も北九州に染まりましたからね。

でも、たった1つだけ、後悔していることがあります。それは、

東京の街をほとんど知らない

ということ。その後悔は年月の蓄積と共に巨大化するばかりなのです。

大半の街を訪れたことがない

東京時代の趣味といえば、「部屋でベースギターを弾く」「テレビゲームをする」、この2つだけでした。どちらもインドアな趣味なので、外に出るという機会を自ら潰していたようなものです。

ウォーキングを趣味にしたのは40代になってから。いろんなウォーキング大会に参加したし、自分でコースを考えて長距離を歩いたりもしています。

ウォーキングを趣味にして心から良かったなと思えることの1つは、福岡県内の多くの街を自分の足で歩いたことで、街に詳しくなったし、街への愛着が深まったということです。自分が住んでいる街を愛せるというのは、とても幸せなことだと思っています。

福岡・北九州の街がどんどん好きになるにつれ、時々ふと思うことがあります。もしも東京で生活していた頃にウォーキングが趣味だったならば、もっともっと東京のことを好きになった気がするし、1年で東京を去ることもなかったかもしれない、と。

とにかく出不精だったので、休日は家に篭もるばかりで、どこかに出掛けるということがほとんどなかった。

まだ移転前だった都庁を見るため新宿に行ったことはありました。上野、原宿、お茶の水にも1回だけ行ったのは覚えています。23区以外だと、妙な流れになり多摩市に行ったことも1回だけありました。

複数回行ったことがあるのは、秋葉原くらい。

「Windows 95」が登場する数年前で、一般人にとってパソコンがまだ身近ではなかった頃。サブカル・ヲタクの聖地とも言われてなかったし、AKB48も誕生していなかった、そんな時代の秋葉原。

何をしに行ってたかというと、ゲームソフトを買い漁っていたのです。「ファイナルファンタジー」の最新ソフトを発売日の前日にゲットできた時は「東京に来て良かった!」と初めて思ったほどでした。

最後の1週間でがく然としたこと

東京の会社を辞め、北九州市に引っ越すまで、1週間ほど無職の期間が出来たことがありました。最初の数日はテレビゲームに没頭したのですが、やがて飽き、自転車に乗って近所を散策してみることにしたのです。

散策してみて心の底から驚いたことがありました。最寄りのJR駅から社員寮までの道、それ以外の風景を何ひとつ知らなかったのです。

こんな店が近くにあったのか、こんな地名だったのか、こんなキレイな景色が広がっていたのか。

半年近く住んでいた街なのに、その街のことをまったく理解していなかった。その事実にがく然としました。

現在、ウォーキングをしながら写真を撮り、風景を楽しむようにしているのは、東京時代の猛烈な反省があるからです。もっと風景を楽しみ、人々の生活を知り、街を好きになりたい、そう思いながら歩いています。

福岡県のウォーキング事情

福岡の各地をウォーキングで巡り始めて、もう10年以上が経ちました。

企業や団体の主催するウォーキング大会であれば、コースマップの通りに歩けばゴールに着きます。何度も歩いてる馴染みの街なら、自分の行きたい場所に寄り道して、結果的にコースマップを完全無視するような歩き方も最近は楽しんでます。

一方で主催者のいない、自分で好きな場所を発着地点とし、好きなように歩く機会も最近は増えてきました。このブログでも度々記事にして福岡県内の各地を紹介しています。

地図を見ながらコースを設定するのは、楽しくもあるのですが、けっこう悩ましい作業でもあるのです。

というのも、発着地点や立ち寄る地点が、どうしても毎回似通ってしまう。コースパターンのバリエーションが少ないのです。

その大きな理由として、「公共交通機関の充実度が低い」という点があります。

都市圏はそこそこ充実しているから、まだいいのです。たとえば福岡県内だと、福岡市であれば地下鉄の路線が複数あるし、JRの他に私鉄もあります。北九州市でも小倉北区はモノレールがあります。そして西鉄バスも都心部であれば路線バスが充実しています。

これが地方になってしまうと、バスの本数も少ないし、JRの駅はあるけれど運行本数が「1時間に1本」「1時間半に1本」という駅がけっこう多い。駅がない街すらあります。

頑張って歩いたはいいけれど、ゴールして1時間、じーっと駅で待ち続けるのは本当にツラい。そういうことが過去に何度もありました。

駅を出発して次の駅まで歩くコースを決めたとしても、歩く道中の風景は「田んぼしかない」ということ、けっこうあります。

そういういろんなことを考えた時に、「もしかして東京って、ウォーキングするには圧倒的に最適な街なのではないか?」と感じるようになりました。

東京がウォーキング天国だと感じる最大の理由

東京は多くの地下鉄網があるし、ある程度の距離を移動すれば何かしらの駅があるような印象を持ってます。

たとえば、どこかの駅をスタート地点にして、3つ先の駅まで歩いてみよう、観光名所はあそことあそこに立ち寄れるね、帰りはあそこから駅に乗って帰ればいいね、というウォーキング計画を立てるとします。

福岡県の都心部ならまだしも、地方でこういう計画を立てるとすると、作れそうなパターンはせいぜい2つ、多くて3つです。名所の少なさもあるし、前述したとおり交通の便が悪いというのがネックになるからです。

一方、東京で上記のような計画を立てるとすれば、パターンは20個、30個、立地が良ければもっと多く出来そうじゃないですか? そもそも「3つ先の駅」というのが幾つもあるし、寄り道できそうな名所もたくさんありそうな印象。

東京で生活していた頃にウォーキングが趣味じゃなかったことが本当に残念で、東京の名所紹介のテレビ番組を見たりネット記事を読んだりする度に、「東京ってウォーキング天国だよなあ」という思いが年々強くなってきています。

ウォーキング友達・中川マナブさんのこと

その東京でウォーキングを楽しんでいるブロガーさんに、中川マナブさん@tokyosanpopo)という方がいます。

大阪出身の奥様、中川よしこさんが東京に来た際に土地勘がなく、マナブさんが東京を散策して案内しようというところを出発点とし、その様子を描いた「東京散歩ぽ」というブログを運営されています。

「東京散歩ぽ」をWordPressに移行して運営開始されたのが2011年10月、うちのブログ「りくまろぐ」のWordPress移行と運営開始が2012年1月なので、ブログ歴も私とほぼ同じくらいなのです。

奥様・よしこさんとは面識もなく、お話しさせて頂いたこともないのですが、ご主人のマナブさんとはブログ運営開始の初期にSNSで繋がり、後には地域ブログでも大変お世話になりました。

中川さんの優しさに最も触れた思い出として、今でも心に残っていることがあります。

まだブログを始めて間もない2013年頃くらいだったと思うのですが、「Fitbit」というウォーキング計測ツールを購入し、その記事をブログで公開したことがありました。

「Fitbit」の売りの1つに、歩いた距離などの記録を自動的に保存するだけでなくネット上で公開することができ、さらには仲間や友達とトータル距離などで順位付けして、楽しんだり競ったりできる、というものがあります。

その「Fitbit」を買ったはいいけれど、SNSで繋がっていたり、オフ会などで仲良くなった福岡在住のブロガーさんは「ジョギング好き」な人ばかりで、ウォーキングを趣味にしている人が全くおらず、「Fitbit」で友達になってくれそうな人が誰一人いなかったのです。

それをSNSで愚痴っていたら「友達になりましょう」と言ってくれたのがマナブさんでした。あれは本当に嬉しかった。

晴れて「Fitbit」で友達となった自分とマナブさん。互いに距離を参照できるようになったのですが、マナブさんの歩行距離が毎日なかなかエグかったんですよ。

こちらが5km歩いた日はマナブさんが8km。「おお、俺も頑張ろう!」と翌日に根性入れて8km歩いたらマナブさんは10km。「今日こそは!」と12km歩いた日にマナブさんは15kmとか。

勝ち負けという意味では常に負けてたのですが、マナブさんもウォーキング頑張ってるなあ、俺も歩かなきゃなあと、毎日刺激をもらっていました。

2ヶ月ほどしてからウォーキング大会中にどこかで「Fitbit」を紛失してしまい、買い換えることもしなかったので、マナブさんとのデッドヒート(ほとんど負けてた)はそこで唐突に終了となってしまいました。その節はすみませんでした…。

中川さん夫妻の初書籍を読んで

そんな中川マナブさんが、奥様・よしこさんと共著で、2022年6月に「東京の懐かしくて新しい暮らし365日」という本を出版されました。ご夫妻ともに初の書籍だそうです。

発売から数週間が経った某日、東京とは全く縁のない福岡県内の某田舎町に仕事で立ち寄った際、近くの商業施設内にある書店でこの本がいくつも並んでいるのを発見し、「これはスゴいことだなあ」と感動して、その場で購入しました。

全ページを拝読し、真っ先に感じたことは、紹介されている名所の圧倒的な多さ

書籍タイトルにある「365日」という表現からも分かるとおり、この書籍は365日の日めくりカレンダー形式で、365本の記事がまとめられています。

しかし、1ページに複数の名所が紹介されていることもあり、その情報量が凄まじい。中川さん夫妻はこんなにも東京の各地を自分たちの足で訪れているのだ、という事実にまず驚き、敬服しました。

各ページは写真付きで情報が紹介されており、その写真を見るだけでも情報収集が捗ります。「ここイイな、行ってみたいな」という知らない場所が多数あり、最近取り憑かれている「東京を歩きたい」という情念が再びフツフツと湧き上がってしまいます。

気になったページを幾つかピックアップ

本の中身を丸々転載してしまうわけにはいかないので、気になったページ(というかアイキャッチ写真)を幾つかピックアップしてみます。

新橋駅の蒸気機関車

私の誕生日である10月14日のページを見ると、新橋駅前の蒸気機関車の写真があったので、「うわあああ(笑)」と思ってしまいました。

新橋は、東京時代に勤めていた会社の本社があった場所なのです。

私自身の配属先は港区のビル内で、最寄り駅は「田町」でした。新橋の本社にはトータルでも5回ほどしか行ったことがありません。どれもあんまり楽しい思い出はなく、新橋に着く度に「めんどくせえなあ」とブルーな気持ちになっていたし、それもあって新橋には良いイメージが正直ありませんでした。

退職願を出した直後、事務的な作業をするために本社を訪れたのが最後で、もう30年以上も行ってない新橋。まさかここで新橋の蒸気機関車を見ることになるとは思いませんでした。こうやって眺めていると「新橋にもまた行きたいな」となります。不思議なものです。

ひとくちメモ


※10月14日は「鉄道の日」なので、新橋駅前の蒸気機関車がこの日のアイキャッチ画像としてセレクトされたのだろうと推察しています
日本橋

日本橋も1回だけ訪れたことがあります。ただ、「誰と」「いつ」「何の用事で」訪れたのか、全く記憶が残っていません。独りで日本橋に行くわけもないし、誰と行ったんだろう…。

最初、頭上をまたぐ大きな道路が東海道の跡なのかと本気で思っていたら、あとで「それは首都高速だ」と言われてかなり恥ずかしかった思い出があります。

北九州市には、江戸時代に栄えた街道の1つ「長崎街道」の起点となる「常磐橋」が復元され、現在も小倉北区にあります。ウォーキングを趣味にして以降、この長崎街道には縁があり、何度も昔の街道だった道路や街並みを歩いてきたし、江戸時代の「街道」に対して興味を持つキッカケにもなりました。

東海道」の起点となっている日本橋に関しても、いま訪れたら昔とは全く異なる心境で眺めることが出来ると思っています。毎年楽しみにしている「箱根駅伝」でも日本橋は盛り上がる地点ですし、とても行きたい場所の1つが日本橋なのです。

「関西人から見た東京」に共感

「東京生まれではない人の観点で書かれた文章」のページも多々あり、これは奥様・よしこさんが書かれた文章なのだなと判別できます。

私自身、子供の頃は関西に長く住んでいたので、「関西人から見た東京」という観点でもずいぶん共感できるポイントがあり、記事を読みながら何度も笑わせてもらいました。

奥様・よしこさんに関しては、普段どういう言葉を紡がれていて、どういったキャラクターなのかを何も存じないため、文章から察した印象になってしまうのですが、楽しそうな人だなあと感じました。いつかお会いできればいいな、関西人トークがしたいな、と思っています。

そういえば、ご主人のマナブさんともまだ会ったことなかったわ。

まとめ

中川さんご夫妻の本には多数の名所が掲載されています。

メジャーな観光ガイドには載っていない場所や、ちょっとした見どころ、独自の観点からのおすすめなど、東京に関する新たな発見があったり、知っている場所の知らない魅力に気付かされたりするのではないかと思います。

旅行で東京を訪れる方々だけでなく、たとえば東京に住み始めて日が浅い方々には、自分が住んでいる街の周囲には多数の魅力があふれているのだと認識させてくれる、そんな内容になっています。

また、私のように「東京でウォーキングを楽しみたい」という方々にとってはバイブルのような1冊です。歩くコースを設定する際に様々なページを眺めてみて、「今回はここを歩こう、ここに行ってみよう」と想像し、ウォーキングの楽しみを倍増させてくれる資料集にもなるのではないでしょうか。

いつか再び東京を訪れた日には、どこか景色の良い場所をマナブさんとご一緒してウォーキングできればいいな、という夢をずいぶん昔から抱いています。

もしもその夢が実現したならば、私は距離的にマナブさんには勝てませんので、お手柔らかにお願いしたいなと。

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