「とっとっと?」と、「ちゃうちゃうちゃう?」

九州の人なら分かる方言

少し前、仲里依紗が長崎のわらべ歌「でんでらりゅうば」を歌うCMが放送されていました。

冒頭で映る仲里依紗のお腹の肉に目がいってしまいますが、それはいいとして、なんでまた仲里依紗が「でんでらりゅうば」なんだろう? と思ったら彼女は長崎の出身なのですね。

「でんでらりゅうば」は長崎のわらべ歌と言われていますが、長崎以外の九州各地でも昔から馴染みのある歌のようです。

5年ほど前、NHKの「にほんごであそぼ」という番組でこの曲が歌われていて、そういう意味では全国区となったこの曲。当時まだ幼稚園に入る前の末っ子がテレビで覚えた「でんでらりゅうば」を歌ってる姿を見て、「どうしてそんな昔の歌を知ってるの!?」と祖母が素で驚いていました。

CMの話に戻りますが、わらべ歌を可愛らしく歌う仲里依紗のお腹を、川口春奈が携帯で撮影しながら続きを歌い、それに気付いた仲里依紗が「とっとっとー?」と言います。

「(写真を)撮ってるの?」という意味の九州弁ですが、これメジャーなので九州以外の人でも分かりますよね?

ただ、同じ九州でも福岡県の筑豊弁になると少し表現が変わって、「とっとーと?」という人が多いです。

写真を撮る時にも言うのかもしれませんが、それよりもむしろ、何かを取り置きしてるのか、何かを手に取ったかを確認したい時に、

「これ、とっとーと?」

ってな言い方をよくしています。私は言いませんよ。私の嫁や、筑豊地区の知人たちが使ってます。

だから例えば、あの有名なお菓子がテーブルに置かれていて、これ食べていいのか、それとも誰かが自分のためだけに買ってきてるから手を出したらいけないのかを確認したい時の会話として、

A: 「このおっとっと、とっとーと?」
B: 「うん、とっとーと」

という風になります。

A: 「このおっとっと、とっとーと?」
   (この「おっとっと」は、取っているんですか?)
B: 「うん、とっとーと」
   (はい、取っているんです)

分かりますよね? では、リピート・アフターミー。

同じ関西でも和歌山と大阪で言葉が通じない驚き

たとえば、ヒトクチに「九州弁」と言っても、長崎弁もあれば熊本弁もあり、福岡県の中だけでも「博多弁」「北九州弁」「筑豊弁」など方言は様々です。

まったく同じことで、ヒトクチに「関西弁」と言っても、関西も広いですからいろいろありますよね。京都も大阪も和歌山も奈良も兵庫も、きっと違う方言なんだろうし。

私は子供の頃に7年間、和歌山県に住んでいました。それまでは鳥取県に住んでいて、少し鳥取弁を覚えた状態で和歌山に引っ越したのですが、和歌山の級友たちに

お前の言葉、何を言ってるのか意味がわからん

と関西弁でことごとくバカにされてました。

小学校を卒業する頃にはすっかり関西弁をマスターした私でしたが、中学入学と同時に再び鳥取県に引っ越し。案の定、鳥取の級友たちに

お前の言葉、コワイ!

と完全に「その筋の人」の扱われ方。

背が高くて、天然パーマが短かったから少しパンチパーマみたいになってて、目つきも悪くて(近眼だから仕方ないんですよ)、しかもコテコテの関西弁を喋る私のことを、担任教師も含めて周囲の鳥取県民の皆さん、みんな最初は怖かったんだそうです。タトゥー彫ってればもう最強だったろうな。

っていうか、こんな温和で朗らかで笑顔を絶やさず誰に対しても角度90度でお辞儀をするような低姿勢な私をなぜみんな怖がるのか不思議で不思議で。ウソつきだからか。

そういう新1年生が今年いるらしいぞってことで、入学3日目で早くも中学の不良な方々から体育館裏に呼び出されました。「おまえ生意気らしいな」って。初対面なのに生意気ってなんやねん。

幸い、その数日前に偶然仲良くなってた人がグループの中にいたおかげで、特に何も乱暴されることなく解放され、以後も陰湿な扱いを受けることなく楽しい学生生活を送ることが出来たのですが、要するにコテコテの関西弁を喋る人は、もうそれだけで「人格」を少々誤解される傾向があるということです。特に関西圏以外の人たちから。

あと、関西弁にもいろいろあると上で書きましたが、私が通っていた和歌山の小学校に、大阪市から一人の女の子が転校してきました。

檀上から入学のあいさつをする彼女の話を聞きながら、私の周りの席にいる級友たちがヒソヒソと話す声が聞こえてきます。

「なあ、あいつ、なんて喋ってるか分かる?」
「ぜんっぜん分からんなー」
「大阪の言葉って分からんしなー」

そんなもんなのかー???

元は鳥取県民だった関西弁初級の私は、級友たちの言葉も、転校してきた彼女の言葉も、まったく同じ「関西弁」にしか聞こえず、違いが全然分からなかったのですが、大阪と和歌山でも言葉って違うのだそうです。今でも実際どうなのか私はよく分からない。

関西弁の高い壁「ちゃうちゃう」

大学時代から私は福岡に住んでますが(いろいろ放浪してるでしょ)、その大学時代、確か「探偵ナイトスクープ」だったかな、テレビ番組を友達数人と一緒に観ていました。

視聴者からのハガキで、次のような依頼がありました。

今年から関西の大学に進学しました。関西弁に以前から憧れていて、上手に喋りたいのですが全然覚えられず、また意味も分からなくて困ってます。どうすれば関西弁が上達できますか? 教えてください。

そこで番組から、確かトミーズ雅だったと思うのですが、その依頼主である大学生の所に行って関西弁のレッスンをする、という企画。

レッスン用のカセットテープだったか、ビデオだったかは忘れましたが、二人の人物が関西弁で会話をしているサンプルを聞かせ、まずその意味を理解させ、次にイントネーションの微妙な違いを覚えさせ、最後に自ら喋ることが出来るようにしようというものですが、番組が番組ですから、言語学的なマジメなものではなく、お笑い要素を存分に含んだサンプルとなっていました。

A: 「あれ、ちゃうちゃうちゃう?」
B: 「ちゃうちゃう? ちゃうちゃうちゃあーうんちゃう?」
A: 「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうやん」
B: 「ちゃうちゃう、ちゃうちゃうとちゃう」

文字だけで表現するとぜんっぜん分からんでしょw わざと分かりづらく書きましたが、カタカナを混ぜるとグッと認知度が高まります。関西の人ならこの時点で分かるはず。

A: 「あれ、チャウチャウちゃう?」
B: 「チャウチャウ? チャウチャウちゃあーうんちゃう?」
A: 「ちゃうちゃう、チャウチャウやん」
B: 「ちゃうちゃう、チャウチャウとちゃう」

この音声サンプルを聞いていた依頼人の大学生、まったく意味が分からずポカーンと放心状態。

私はもちろん意味が分かったので、テレビを見ながらウンウンと頷き笑っていたのですが、隣りで観ていた数人の福岡県民な友人たちはポカーン。

「え? どういう意味? 笑える話なん? さっぱり分からんばい」

友人たちは全く理解できない様子。

翻訳を追加しましょう。

A: 「あれ、チャウチャウちゃう?」
   (あれ、チャウチャウじゃない?)
B: 「チャウチャウ? チャウチャウちゃあーうんちゃう?」
   (あれチャウチャウか? あれはチャウチャウではないんじゃないかな?)
A: 「ちゃうちゃう、チャウチャウやん」
   (違う違う、あれはチャウチャウじゃないかよー)
B: 「ちゃうちゃう、チャウチャウとちゃう」
   (違う違う、あれはチャウチャウではない)

こうなります。

依頼主の大学生も、福岡県民の友人たちも、翻訳を見て「ほほー」と納得半分、不思議半分な表情。

じゃあ実際にマネをして言ってみな、ということで繰り返すのですが、当然ながらイントネーションがめちゃくちゃ。それ、どこの宇宙語やねん。トミーズ雅も、そして私も大爆笑。

特に2行目と3行目は、各単語のイントネーションが微妙で難しいですよね。もちろん関西の人は「どこが難しいねん、簡単やん」って思うのでしょうが、これを言えるか言えないかで関西人かそうでないかキレイに別れるんじゃないかってくらいイントネーションが面白い表現のところです。

そのコーナーが終わっても、結局理解が出来なかった私の友人たちは「関西弁ってヘンな言葉」とあきれ顔。

あのね、私に言わせりゃ九州弁の方がよっぽどヘンな言葉だよ。

関西弁も九州弁も独特ですが、関西弁はどちらかと言えばイントネーションや発音が独特な方言という印象。つまり単語だけ聞けば、他の地域の人でもある程度予測のつく表現が多い。

一方で九州弁は、特に地方になればなるほど、イントネーションというよりも単語や表現自体が独特で、完全に他の地域では意味の分からないものに変貌してしまいます。

私は福岡に住んで20年を超えましたが、今でも九州の言葉で「は???」となることがしょっちゅうあります。

そういえば、私が生まれた鳥取のお隣り、島根県には「分かりにくい方言」として有名な安来弁(やすぎべん)ってのがあります。私の亡くなった祖母は見事な安来弁の使い手で、正月に一族が集まった時に祖母の話を聞いても半分以上は理解できませんでしたw

東北の方言も独特と言われますし、沖縄の言葉もまったく分からない。よくよく考えれば、これだけ狭い国土面積で、これだけ多種多彩な言語が広がってるのだから、日本ってやっぱりスゴくて面白い国だなと思いますよ。

ちなみに私、最近は関西弁が出てくる場面もめっきり減ってますが、関西の友人や親せきと話していると自然に関西弁が今も出ます。でも私がときどき関西人バージョンになると、生粋の京都人である友人からいつも冗談交じりに言われます。「出たな、ニセ関西人め」と。ニセちゃうわ。
 

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(最終更新:2013年2月3日)コメントComments Off
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