2021年1月2日オープン
約8年の改修工事を経て、北九州市八幡西区のJR折尾駅が令和3年(2021年)1月2日(土)、遂に新駅舎の営業を開始した。
それから1ヶ月後、2021年2月中旬に「新生」折尾駅を訪れることが出来たので、写真付きで新しい駅舎やその周辺を紹介する。
なお、前回(2020年12月)の訪問時は車で行ったため、駅舎の外側のみを撮影した。今回は電車で訪問したため、駅の中から外へと移動して撮影している。
福北ゆたか線も高架ホームとなった
旧駅舎では2つの路線が立体交差していたJR折尾駅。以前はJR福北ゆたか線(若松線、筑豊本線)が地上に近い方、JR鹿児島本線がその上、高架という構成だった。
新しいJR福北ゆたか線は高架ホームとなった。こちらは新駅舎のお披露目よりも前に運行開始している。
JR鹿児島本線の高架ホームは、JR福北ゆたか線とは少し離れた場所にある。JR福北ゆたか線とJR鹿児島本線が同一の駅で合流するタイプの駅舎といえば、他にJR吉塚駅(福岡市博多区)がある。
JR福北ゆたか線の北側・若松方面。
「若松線」とも呼ばれる若松方面の線路は、以前はこの高架ホームのすぐ横、地上に敷かれていた。駅のすぐ前に踏切があったせいで以前は渋滞していたが、高架となったおかげで渋滞も解消されることになる。
南側・直方方面。「南側」と書いたが、上の写真の線路は西側に延びている。
新しい福北ゆたか線の直方方面は、JR鹿児島本線の博多行き方面と同じ方角に並走する形でいったん西に延び、新設されたトンネルを抜けることで進路を南に変え、直方方面に向かうルートとなった。
福北ゆたか線ホームから駅北側の風景を見下ろすことが出来るようになった。前方の坂を上っていくと、九州女子大学、九州女子短期大学、九州共立大学、自由ヶ丘高校などの学校群がある。
新駅舎の中で全てが完結できるようになる
新駅舎となり、鹿児島本線ホームだけでなく、福北ゆたか線ホームにもエスカレーターが設置されていた。近くにはエレベーターもある。
新駅舎の中央に広がる新コンコースは、白を基調とした照明が映え、新生・折尾駅を象徴する美しさ。改修工事中は迷路のように意味不明な通路があるのみだったが、このコンコースを作っていたのだと判る。
福北ゆたか線のエスカレーターを下りてコンコースを初めて見た瞬間、その広さとモダンなたたずまいに「おおお〜」と唸ってしまった。
以前は立体構造なのもあり複数のホームは位置関係が複雑で、駅に慣れてない利用者には難解だった。
新駅舎では平坦なコンコースを移動するだけでよくなった。以前のような「ホーム移動の遠さ」もあまり感じず、何よりも分かりやすくて良い。
新しい改札口は北口に設けられた。北口は現在まだ工事中だが、将来は改札口を出ると正面に駅前広場やロータリーが広がるはずである。
折尾駅といえば欠かせないのが「東筑軒」。以前は駅ホームに立ち食い形式であった店舗がホーム廃止によりいったんは消滅してしまったが、2021年1月11日(月)にコンコース内で新装オープン。これは大変嬉しい。
折尾駅の名物といえば、100年以上の伝統を持つ人気の駅弁「かしわめし弁当」の立ち売り。旧駅舎時代から馴染みのあるおじさんの声がコンコース内に響いていた。
コンコースの中央付近に、何やらガラス張りで床下を覗ける一角がある。
その正体は、旧若松線の線路跡。コンコース内に保存展示されている。
保存展示された線路の先、コンコースの床には黒いラインが伸びている。これは旧若松線(福北ゆたか線)の線路跡を表していて、昔は実際にここを線路が走っていたことになる。昔と言っても旧駅舎時代だから、数年前まではここが現役の線路だった。
ちなみに、改札口から東筑軒にまっすぐ伸びているラインは鹿児島本線の旧線路跡を表している。2つ上の写真、東筑軒の立ち売りおじさんの背後にある黒いラインがそれ。
クロワッサンの名店がやって来る
外側から見た新改札口。向かって左手が鹿児島本線、右手が福北ゆたか線(若松線)のホームへと続く。
改札口の横にある待合室もキレイになった。白い枡目の天井が良い。
待合室にある柱の下は丸椅子になっている。旧駅舎時代からあったものを今も使っているらしい。
改札口を出て正面には現在も工事中で、白い壁により視界が遮られている。白い壁の向こうには旧北口の建物があり、取り壊しが終了しない限りこの壁も撤去されないのだろう。
2021年2月現在、改札口からは左右2方向にしか行けない。左が北口で、右が東口。
2021年1月4日(月)にオープンした「ファミリーマートJR折尾駅店」。訪問時、店内は高校生であふれていた。折尾駅は4つの高校(東筑、自由ヶ丘、折尾愛真、折尾)の最寄り駅となっている。
東筑高校に通う親類から聞いていたが、店内は結構広い。そして注目すべきは、お菓子売り場の充実度。多くの学生が立ち寄るのを見越してのことだと思うが、特に女子高生はお菓子に目がない。大正解だと思う。
ただ、折尾駅の周囲1km圏内でファミリーマートはこれが3軒目となる。多すぎないか。この店は安泰だろうけど他の店舗は大丈夫なのだろうか。
今回散策していて最も歓喜したのは、北九州市若松区にあるクロワッサンの名店「三日月屋」が2021年3月に折尾駅でオープンすると知ったこと。
折尾の人々にとって三日月のクロワッサンが身近になるのは実に素晴らしい。少々値段はお高いが、なかなか味わえない感動的な美味しさを誇る天然酵母の特製クロワッサン。まだ食したことのない人はこれを機に是非味わっていただきたい。
なお折尾駅には他に、九州各地で店舗展開している唐揚げ専門店の「ポッポおじさんの塩からあげ」もある。
ひとまず解決していた「東口問題」
2021年1月2日に新駅舎がオープン。それと同時に東口と西口が廃止されることも発表されていた。
東口がなくなると大変困る人たち(特に東筑高校の生徒)は1月の廃止以降どうなってしまったのか。それが気になっていたのだが、今回訪問したことでひとまず疑問は解決した。
駅改札口を出て右側に前述したファミリーマートがあり、その横に東口と接続する連絡路がある。
連絡路の左右は壁に覆われ、現在も大きな音を立てて工事が進行中。駅舎が拡大するのか、別の施設が出来るのかもよく分からない。そもそもこの連絡路が暫定的なものなのか、整備されて正式な連絡路となるのかも分からない。
連絡路のトンネルを抜けて折尾駅の東口、以前「オリオンプラザ」が建っていた正面あたりに出る。
そのオリオンプラザ、前回訪問時(2020年12月)に解体作業が始まっていたのだが、今回は建物が完全に消滅しており、茶色の土がやけに目立つ空き地と化していた。
この跡地は将来どうなるのだろう。
かつては旧駅舎の正面口だった折尾駅・東口。風景は前回訪問時と変わりなし。
東口の改札口は予告されていたとおり、2021年1月2日で廃止された。建物自体もいずれは消滅するのだろう。すぐ裏では工事が進行中だった。
堀川沿いの飲食店街。東口が廃止されたことで、ますます人の往来が減ってしまったはず。再開発で飲食店街も消滅する、と言われ続けてそれでも8年経ったが、今後どうなるか。
折尾駅東口を流れている堀川は人工的に作られた河川で、その歴史を解説した案内板が東口にある。これ、読むと大変興味深いので、歴史や散策の好きな方には是非見ていただきたい。
堀川に沿って散策するコースはウォーキング愛好者にもオススメ。史跡や神社もあって風情が良い。
2012年10月の旧折尾駅舎さよならイベントにて公開された、北九州市出身の松本零士氏による「銀河鉄道999」の記念壁画は現在も同じ場所、東口との連絡路出口付近に展示されている。
今後もここに展示され続けるのか、それとも別の場所に移るのかは不明。
折尾駅東口の鉄道遺産で、「ねじりまんぽ」という製造法によるアーチの高架。現在は廃線となった西鉄の北九州線がアーチの上を走っていた。現在は3連のアーチだけが遺っている。
高架下のトンネルは現在も生活道路として、東筑高校の生徒が通学で往来するだけでなく、近隣住民の車も行き交っている。
ここに初めて来た時、「昔はここを高倉健さんや仰木彬さんも通学で歩いていたんですよ」とガイドさんから聞いた。お二人とも東筑高校の卒業生。なので北九州市の人と間違われることもあるが、実はお二人とも北九州市のお隣り、中間市出身である。
この「ねじりまんぽ」がとても好きで、折尾駅に来る度に足を運んで眺めてしまうのだが、数年前にこの鉄道遺産を保存するか解体するかでモメてるというニュースを見た気がする。個人的にはずっと遺っていてほしい。
折尾駅に慣れていない利用者にとって最大の難関が、JR福北ゆたか線の「鷹見口」。いったん駅の改札を出て、東口の連絡路を抜けた先にあるホーム。少し遠いこともあり、運が悪いと電車に間に合わないし、初めて来た人はそんな遠くにホームがあるなど夢にも思わない。
新駅舎に全面移行された後で鷹見口ホームも廃止されると聞いたが、現時点では鷹見口で乗降する電車も運行中である。
スマホアプリや電光掲示板の時刻表で「6・7番のりば」とあれば新駅舎の中にあるホームだが、「Aのりば」とあれば、こちら鷹見口から乗降する電車である。お間違えのないように。
新駅舎の完全お披露目までは遠いか
前回訪問時(2020年12月)には遠くから眺めるしかなかった新生・折尾駅の外観。ようやく最接近することができたものの、まだ駅前は工事中のため正面からは見ることができない。
フェンスで囲まれた1本道の通路を通って北口や市街地へと出る。
その通路と並列して、旧若松線の線路跡も特に工事などで手は入っていない。この線路跡が駅舎内の線路跡へと続いていく形となっている。こちらの線路跡も将来はラインを引くなどして残るのかもしれない。
東口や西口と同じく、こちら北口も2021年1月2日で廃止となった。ただ建物は残っている。
新駅舎のオープンと共に北口の仮駅舎は撤去されるのかと思ったが、さすがに小さくはない建造物、そんな簡単にポンと消えるわけがなかった。
北口の改札跡はシャッターが下り、みどりの窓口などの施設も全て新駅舎に移行され、旧北口の駅としての機能はすべて消滅している。
この建物が撤去されて初めて、新駅舎の「駅前広場」が成立するのだが、果たしていつになるのか。
以前は東口との連絡路に設置されていた、近隣の高校生による美術作品を展示する「オリオ・アートストリート」。現在は北口のバス停付近に移動している。
工事が終わったら撤去されるのだろうが、こういう企画は今後も続けてあげてほしい。
以前は大渋滞ポイントだった折尾駅前の県道199号線は現在も工事中。この道路に面した一帯は近年見違えるほど発展している。
高架の完成により踏切が撤去され、更に片道2車線化が完了すると快適な道路となるはずである。
こちらも2021年1月2日で閉鎖された折尾駅の西口。
折尾から直方方面に向かう時は、いつもこのホームから電車に乗っていた。
福北ゆたか線のホームが新駅舎に移行されたことで、こちらのホームも廃止となり、現在は解体工事が進んでいる。
東口は連絡路が設置されていたが、こちら西口は駅正面口からの連絡路がなく、駅の外周をグルリと回ってくるしかない。
旧駅舎の部分が完全撤去されたら、西口側へも連絡路のような何かが設置されるとは思うが、こちら方面を利用する人にとって現状は少々不便である。
新駅舎がオープンしたとはいえ、駅の周辺では現在進行形で工事が続いている。鷹見口や旧北口駅舎など、解体されて消えていくであろう建造物もまだある。
あと何年かかるのかは分からないが、今後も変貌していく折尾駅の風景はこれからも追いかけていく。
これまでの折尾散策エントリー
【2013年8月】 先月、折尾駅から博多駅までを歩いた筑豊本線(福北ゆたか線)散策ウォークの番外編。筑豊本線で残していた折尾~若松の区間を歩いてきました。
筑豊本線散策ウォーク番外編:折尾→若松編