簡単な歌詞解説
今回のお題は2枚目のシングル『プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)』。
どうしてもですね、初期の曲の方が歌詞も単純というか簡単なので、紹介しやすいんですよ。
Please Please Me
この曲のタイトルを聞いて、おそらく誰もが最初に思い浮かぶ疑問。
「プリーズが2つって、どういう意味やろ」
思いませんでした? 私は最初タイトルを聞いた時、「ん?」と思いましたよ。
1つなら分かるんですよね。「お願いしまっす」のプリーズ。
じゃあ直訳すると「お願い、お願い、オレ!」ってオカシくない?
解説します。
タイトル最初のプリーズは「お願い」で正解。
問題は2つめなのですが、これ、いわゆる「同音異義語」というやつでして、1つめのプリーズと発音は同じなんですけど意味が違います。
2つ目のプリーズは「喜ばせる」という動詞。「楽しませる」と訳したりもしますね。
つまりタイトルを訳すと「お願いだからボクを喜ばせてくれ」となります。
Aメロの最初2行いきますね。
Last night I said these words to my girl
(昨日の夜、彼女に言ってやったのさ)I know you never even try, girl
(キミはやってみようともしないんだね、って)
「try」は「試みる」とか「やってみる」とかのトライです。ラグビーでボール持って転がるとこを想像したアナタ、残念。
その後、「come on」が4回くり返されます。これは「おいおい」とか「マジかよ~」とか「ちょ、待てよ!」とかのニュアンスの時に言うセリフ。
で、タイトルのフレーズが来るわけです。
Please please me, oh yeah like I please you
(お願いだから、ボクがキミを喜ばせてるみたいに、ボクのことを喜ばせてよ)
ちなみに、この曲を作ったのはジョン・レノンですが、彼はビング・クロスビー(ホワイト・クリスマスって曲が有名な人です)が1932年に発表した『プリーズ』という曲の歌詞に影響を受けています。
Aメロの一番最初にこんなフレーズがあります。
Oh please lend your little ears to my pleas
(お願いだからボクの願いに耳を傾けてほしい)
最初の「please」は「お願い」のプリーズ。一番最後にある「pleas」は、嘆願とか懇願とかの意味である「plea」という名詞の複数形で最後に「s」がついてます。これも発音はプリーズ。
「please」と「pleas」、2つの違う意味を持つプリーズを1行で表現する使い方に影響を受けて、ジョン・レノンは全く同じ「please」という単語が持つ、異なる2つの用法を利用した、というカラクリなんです。
この曲に関する余談・エピソード
この曲はデビュー曲『ラヴ・ミー・ドゥ』に続く2枚目のシングルとして発表されました。
プロデューサーのジョージ・マーティンは当初、この曲ではなく、自身が用意した『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット(How Do You Do It)』という曲を2枚目のシングルとして考えていて、ビートルズも録音までは済ませていました。
結果的にボツとなってしまったビートルズ版『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット』は『アンソロジー1』に収録されています。
How Do You Do It? (Anthology 1 Version)
『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット』を2枚目のシングルとして出すつもりだったジョージ・マーティンに対し、ビートルズは自分たちのオリジナルで行きたいと主張。候補として『プリーズ・プリーズ・ミー』を推します。
しかしジョンが最初に作ったバージョンは、『プリティー・ウーマン』で有名なロイ・オービソンの『オンリー・ザ・ロンリー』という曲に影響を受けたスローな曲調で、歌い方もロイを意識して高いキーや裏声を多用してたんだそうです。
※ちなみにデビュー直後のビートルズはロイ・オービソンとも一緒にツアーを周っています。ビートルズはロイの前座でした。
シングルとしては弱いと考えてたジョージ・マーティンは、テンポを速くして再録音するよう指示。これを受けてビートルズはアレンジを練り直し、我々の知ってる現在の『プリーズ・プリーズ・ミー』が完成。
再録音が終わり、ジョージ・マーティンは「これはナンバーワンを取る」と自信を深めた、というエピソードが有名です。
ちなみにボツとなった『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット』は、同じくジョージ・マーティンがプロデュースしていた別のバンド、ジェリー&ザ・ペースメイカーズがデビューシングルとして発表し、イギリスのチャートで1位を獲得。
そのジェリー&ザ・ペースメイカーズから1位を奪ったのは、ビートルズ3曲目のシングル『フロム・ミー・トゥ・ユー』だった、というのも不思議な因縁です。
ビートルズ英会話#2:フロム・ミー・トゥ・ユー
ビートルズの曲で簡単な英語表現を紹介する企画。今回は3枚目のシングル曲でもある「フロム・ミー・トゥ・ユー」の歌詞を学んでいきます。