[Я]ノーウェア・ボーイ:デビュー前のビートルズが良く分かる映像集その3

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2009年の劇場公開作品です

第2弾で紹介したビートルズの伝記映画『バック・ビート』は、約20年前(1994年公開)の作品なので、現在DVDレンタルショップで取り扱ってる店舗は少ないだろう、と書きました。

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今回紹介する『ノーウェア・ボーイ』は2009年の劇場公開作品。比較的最近ですし、そこそこヒットしたので、このDVDは大半のレンタルショップに在庫があるんじゃないでしょうか。iTunes映画ストアでもリリースされています。

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ(字幕版)
監督:サム・テイラー=ウッド
世界がまだ見ぬ、誰もまだ知らなかった物語。それは青春時代を誰よりも傷つきながら走りぬけた青年ジョン・レノンと二人の“母”の真実の物語。ジョン・レノンは伯母ミミに育てられている、反抗期真っ最中の問題児。彼はある日、近所に実母ジュリアが住んでいることを知る。ジョンに音楽の素晴らしさを教えてくれる自由奔放なジュリアに対し、厳格な伯母ミミはジョンに向上心を持った大人になることを望む。母と伯母、それぞれの愛し方―。行き場のない孤独に今にも心がはち切れそうになっていた中で迎えた17歳の誕生日、彼は母たちと自分を巡る哀しみの過去を知ることになる―。
購入・レンタル

iTunes提供の映画解説であらすじがほぼ分かっちゃいますね。

『バック・ビート』よりさらに前の時期を描いてる

第2弾で紹介した『バック・ビート』は、ビートルズがデビューする前、ハンブルクに修行のため遠征するところから始まっていますが、今回の『ノーウェア・ボーイ』はそれよりも前、ジョンがまだ高校生で、ビートルズの前身となるバンド「クオリーメン」を結成するところから始まり、ハンブルク遠征に行く直前までが描かれています。

なので『バック・ビート』とは時期がカブってません。また、スチュアート・サトクリフも、当時のドラマーだったピート・ベストも、そして後に結婚することになるシンシア・パウエルも映画には一切登場しません。高校生の時には出会ってませんからね。

『アンソロジー』にとても忠実な人物設定や描写になっている

登場人物がとてもリアルです。監督のサム・テイラー=ウッドや脚本家など制作陣は、おそらく『アンソロジー』をしっかりチェックしていると思われ、アンソロジーでビートルズのメンバー本人たちが語った事実が映画の随所で再現されているので、アンソロジーを見たことのあるファンは「おおー!」となる場面が多数あります

まず、ビートルズ関連書籍に時々名前が出てくる程度で、ビートルズの歴史が語られる際にあんまり登場しないけれど重要人物のアイヴァン・ボーンが映画に登場し、高校時代のジョンの親友として忠実に描かれてます。これは正直ビックリしました。

アイヴァンはジョンの親友であると同時にポールとも知り合いで、ジョンがウールトン教会でクオリーメンの初ライヴをした後、ジョンにポールを紹介したのはアイヴァンだと言われています。つまりアイヴァンがいなければ真の意味でのビートルズは誕生しなかった

ジョンとポールの初対面時、ジョンはポールに「ギターが弾けるなら何か弾いてみてくれ」と注文し、ポールは「トゥエンティ・フライト・ロック(Twenty Flight Rock)」という曲を弾いてみせた、というのをポールが『アンソロジー』で回想し、実際にカメラの前でポール自身が演奏を再現してくれてます。

『ノーウェア・ボーイ』でもそのシーンが忠実に描かれていて、上から目線のジョンが「何か弾いてみろよ」という態度を見せる前で、ニヤリと笑ったポールが自信タップリに曲を披露し、ジョンが「お、おう…」みたいに少し圧倒される感じがユーモラスに描かれてます。

※ジョンは当時まだギターのコードをそれほど知らなかったため、自分よりもたくさんのコードを知っているポールがバンドに加入後は、ポールからコードの手ほどきを受けることになります。その場面も映画の中にあります。

また、ポールの後輩だったジョージの加入時も、『アンソロジー』ではジョージがジョンの前で「ローンチー(Raunchy)」という曲を見事に弾きこなし、ビートルズ加入を認められたと語られていますが、その場面も映画で再現されてます。

他にも『アンソロジー』で世に出た「イン・スパイト・オブ・オール・ザ・デンジャー」や「ハロー・リトル・ガール」といった未発表曲も主演のアーロン・ジョンソンがしっかり歌ってますので、アンソロジー愛がとても感じられてファンには嬉しい内容。

ちなみに、『バック・ビート』に登場したポール役とジョージ役は風貌がなんとなく似ていて笑えたのですが、『ノーウェア・ボーイ』でのポールとジョージは全く似てません。

ジョンを演じたのはアーロン・ジョンソン

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若き日のジョン・レノンを演じたのはアーロン・ジョンソンという若手俳優さん。子役時代から演技に定評があったらしく、『ノーウェア・ボーイ』でジョンを演じたことで脚光を浴び、翌年に主演した映画『キック・アス』が世界的に大ヒットして、人気を不動のものにしました。

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↑ジョン・レノンが「なんちゃってヒーロー」になると、こうなっちゃいました。『キック・アス』の続編は今年2月22日から日本で劇場公開予定となっています。楽しみ!

話を戻します。『ノーウェア・ボーイ』の監督、サム・テイラー=ウッドは女性で、主演したアーロン・ジョンソンと2009年に結婚。同年に第1子も誕生しています。

アーロン・ジョンソンは結婚を機に法律上の本名を「アーロン・テイラー=ジョンソン」と変更し、最近の出演作品ではクレジットでアーロン・テイラー=ジョンソンが使われるようになってます。

この物語は「2人の母」とジョンの物語

作品自体は、ビートルズファンならほぼ知ってる事実に基づき構成されています。

ジョンは、船乗りだった父・アルフレッドと、母・ジュリアの間に生まれた男の子。しかしアルフレッドは航海のため不在が多く、ジュリアもジョンの誕生時には既に他の男と同棲していたのだそうです。

ジュリアの姉、メアリー(ビートルズファンには「ミミ伯母さん」として有名)がジョンを引き取り、夫のジョージと一緒にジョンを育てることになります(映画は、伯父ジョージが急死する場面から始まります)。

航海から帰ったアルフレッドとジュリアの間で親権問題が発生。ジョンは父親を選択するも、やがて母ジュリアが奪回。しかし育てられず、結局はメアリーが再びジョンを引き取り、育てます。

夫ジョージの死後、一人でジョンを育てるミミ。とても厳格でシツケにうるさく、反抗期のジョンは煙たがるばかり。

そんな時、長らく会えなかった実母ジュリアと再会。自由奔放で明るいジュリアに会うことがジョンの楽しみとなり、ジュリアはジョンにバンジョーの弾き方を教えてあげるなど親交を深めます。

ジュリアとジョンが再会したことに気付き、不安感を増す伯母ミミ。やがてジョン17歳の誕生日、ジョンの目の前でジュリアと口論になった姉ミミは、感情的になった勢いでジョンと両親の別離に関する真実を暴露。

幼い頃に父や母と引き離されたトラウマに苦しんでいたジョンは泣き叫び、母ジュリアは呆然と立ち尽くす。そして3人がそれぞれに自分や家族のことを見つめ直すようになる。

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そして、ようやく和解するミミとジュリアの姉妹。それを微笑ましく眺めるジョン。しかし最悪の悲劇はその直後に起こってしまった。

ファンなら知ってる話なので、どういう展開になるかは分かっているのですが、特に映画の後半、ビートルズうんぬんではなくジョンと「二人の母親」との葛藤や心模様を描いている場面は引き込まれます。

ジョンの伝記、ビートルズの伝記というだけでなく、人間ドラマを描いた作品として大変素晴らしい内容だと思うし、ビートルズの歴史を少しでも知ってる人なら胸にグッとくるに違いないはず。私は映画の終盤、ずっと泣きながら見てました。泣かずにはいられぬ。

りくま ( @Rikuma_ )的まとめ

映画のタイトルは「ノーウェア・ボーイ」。意訳すれば、どこにも行く場所のない少年、ということになります。

父にも母にも捨てられ、トラウマに悩まされ、再会できた母には別の家庭があり、伯母と実母は不仲で、自分のことなど誰も愛してくれていないと咆吼し、それでもジョンには「二人の母」がいて、自分は二人の母に愛されていたのだと気付く。

エンディングは、ジョンがハンブルクに旅立つのをミミが見送るシーン。ミミがどれだけジョンを愛していたか。我々は改めて知ることができます。そしてジョン自身も、ミミを愛していた。

バックで流れるのは、ビートルズ解散後にジョンがソロでリリースした「マザー」という曲のリハーサルテイクと思われる音源。

この「マザー」の歌詞で、ジョンは父と母が自分を捨てたことを淡々と語り、そして「グッバイ」と別れを告げますが、最後に何度も何度も「ママ、行かないで。パパ、帰ってきて」と叫ぶように熱唱します。この映画『ノーウェア・ボーイ』を見れば、どんな心境でジョンがあの曲を歌っていたのか、想像せずにはいられません。

Mother
アーティスト:ジョン・レノン
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ミミとジュリア、二人の母を演じた女優(クリスティン・スコット・トーマスと、アンヌ=マリー・ダフ)の迫真の演技、そしてジョンの魂が憑依したかのように歌い、叫び、そして泣くアーロン・ジョンソンの演技を、ビートルズファン以外の人々にも見てもらいたい。素晴らしい作品です。

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