ランディ・サベージ:東京を沸騰させた天龍との名勝負【レスラー列伝#12】

天龍との試合は唸った

今回紹介するのは、主にアメリカのWWF(=現在のWWE)で活躍し、ハルク・ホーガンとコンビを組んだり、時には敵対しながら同時代のプロレス界を大いに盛り上げた「マッチョマン」ランディ・サベージ。

彼がWWF世界チャンピオンになったのは雑誌(=週刊プロレス)で知りましたが、実際の試合映像はそれまで観たことがなかった。それまで日本に来て試合をしたこともなく、初めて試合をしたのは超大物になった後の1990年。

WWF&全日本&新日本の合同興行として今も語り継がれる「日米レスリングサミット」。ここでサベージの対戦相手が天龍源一郎と発表された時、私は「え!」と驚いちゃった。メディアやファンの間でも様々な論議を呼んだマッチメイクでした。

というのも、当時サベージはヒール(=悪役)で、ファイトスタイルや外見が「イロモノ」というか「キワモノ」というか、悪党マネージャーのシェリー・マーテルも加担させてのズル賢く憎たらしい闘い方をするタイプ。

一方の天龍は全日本の試合展開を覚醒させたほどの真剣勝負スタイル。武士道にも通じる、技と気迫を魂込めて相手にぶつけていく姿にファンは共鳴し感情移入する。

二人のキャラは正反対。試合として成立するの? 私だけでなくファンやメディアの大半は、それが不安だったはず。大丈夫なんだろうかと。

しかしフタを開けたら、素晴らしい名勝負。試合が成立どころか、私は「日米レスリングサミット」で天龍vsサベージ戦に勝る試合はないと断言してしまう。

ゲスト解説の徳光さんがマネージャーのシェリー・マーテルにキレて激昂する場面は笑えるのですが、これって当時の天龍ファン全員の想いでもあるんですよ。「天龍やったれ!」「あんなフザけた奴、叩きのめせ!」っていう。

だから、みんなが天龍に感情移入したし、それゆえにサベージやシェリーの憎たらしく卑怯な攻撃が許せない。怒る。そして天龍が反撃。でもサベージもなかなか倒せない。一進一退ですよ。

これ、リアルタイムで観た当時(=もう25年も前ですよw)は、上で書いたような「単純明快な感情移入」というベースで天龍を応援し、試合終了後にはスカーっと爽快な気分になったのです。

で、25年経って久々に天龍vsサベージ戦を観たのですが、今になって見るとまた印象が違いますね。

私自身がWWEを本格的にテレビ観戦するようになり、WWEの闘い方やスタイルを25年前よりも遙かに理解できたってのが一番大きいんだと思うのですが、少し勘違いしてたかもしれんな~と。

あくまでアメリカンスタイルを貫くサベージに対して、絶対に付き合わない、全日本のスタイルを崩さない天龍が、得体のしれない化学反応を起こして驚異的に面白い試合となった、みたいな風に考えてたのですが、それは違うな、と。

天龍は、あくまで全日本のスタイルを崩さず、でもそれでいてWWFのスタイルにキッチリ合わせてるんですよ。

付き合ってるとまでは言わないけれど、本当に「WWFフザけんな、サベージなめんな」と天龍が拒否反応的に思ってたのなら、もっと攻撃一辺倒だったろうし、もっとエゲつない技もやったはず。

サベージが劣ってたとか、天龍が手加減してたって意味では全然ないですよ。天龍がサベージの魅力を見事に引き出してたし、サベージも日本のファンの気質を理解した上で天龍を攻めてる。

そうでなければ、シェリーがエプロンに立ってレフェリーや天龍の注意を引いて、そのスキをついてサベージが天龍の背後から攻撃、なんて展開には絶対にならんでしょ。シェリーにあれだけ殴られ蹴られてそのまま倒れたりしないでしょ。

そういうのを最も嫌うのが天龍だ、みたいな神話があったんだし。シェリーに背中を蹴られても微動だにせず睨んで「なんやワレ」ってやるでしょ。

スイングしないどころか、おもいっきりスイングしてるんです。両者が互いに寄ってあげて、互いの良さを引き出す。でも互いのスタイルは崩さない。

もし天龍が完全にWWFのスタイルに寄ったのであれば、試合終了後にシェリーに対して何かしらやるんでしょうけど、シェリーに対して指を立てるだけで、あとはブスッといつもの機嫌悪い表情になって普通に歩いてリングを去る。

かたやリング上ではダウンしたサベージに寄り添って、顔をクシャクシャにして泣きわめくシェリー。

もう完璧ですよ。こんだけ見事な「日本風にアレンジしたWWFワールド」もない。25年前には気付きもしなかった。

妻エリザベスとの奇妙な関係

サベージを語るとき、妻だったエリザベスのことを避けて通るわけにはいきません。

WWF(現在はWWE)に登場した際、サベージはマネージャーとしてエリザベスを常に帯同していました。

当初からサベージとエリザベスは結婚していて実際は夫婦だったんですけど、WWFでは選手とマネージャーの関係で通してたんです。

サベージがヒールからベビーフェイスへと転向後、エリザベスの美人で清純なキャラクターもあってどんどん人気が上昇し、ハルク・ホーガンと結束して遂にWWF世界王座を獲得。団体の頂点にまで上り詰めます。

ところがホーガンとエリザベスの仲がなんだかおかしくなってきて、嫉妬したサベージがおかしくなって再びヒール転向。マネージャーのエリザベスを賭けて「レッスルマニア5」にてホーガンと闘って敗れ、エリザベスを失ってしまいます(ストーリー上ですよ)。

で、エリザベスと別れたサベージは、新しいマネージャーとしてセンセーショナル・シェリー(シェリー・マーテル)を帯同するようになります。そのシェリーが東京ドームに来て悪党マネージャーっぷりを存分に発揮したというわけ。

そのシェリーとサベージは「レッスルマニア7」で試合に敗れた後に仲間割れ。シェリーがサベージを攻撃してるところで、客席で観戦していた元マネージャーのエリザベスが助けに来て、ここで2人は復縁。サベージは再びベビーフェイスに、

同じ年の8月に開催された「サマースラム」という大会で、サベージとエリザベスはリング上にて結婚式を挙げ、ファンや選手たちから盛大に祝福されました。

ここまでキチンと読んでくれてる人なら分かると思いますが、2人は実生活で既に結婚しており本当の夫婦で、ストーリー上は恋人同士だったのがようやく「サマースラム」でストーリー的にも夫婦となった、というわけです。

ストーリー的にも幸せの絶頂になってバラ色だったはずなのですが、実はサベージとエリザベス、リング上での結婚式から1年後に実生活で離婚しました。離婚後、エリザベスはWWEの番組に出場しなくなってしまいます。

その後、サベージはWWEを辞めてWCWに移籍。先に移籍していたホーガンが結成したヒールユニット「nWo」に途中から加入するのですが、このnWoにはエリザベスがいました。2人はリング上で復縁しています。これ、ストーリー上ですからね。実生活では復縁なんてしてませんよ。

離婚した夫婦がリング上でストーリーとして復縁させられ、昔のように選手とマネージャーの関係として活動を共にするんですから、なんとも不思議な話。本人たちも複雑な心境だったでしょうけど、それこそ見てたファンも複雑だったことでしょう(そんな裏事情を知らない多くのファンは喜んだんでしょうけど)。

エリザベスについても当ブログでエントリーを書いています。


WCWを辞めたサベージは、WWEに戻ることなくそのまま引退。

2011年5月、車を運転中に心臓発作を起こしたサベージはコントロールを失って木に激突。搬送された病院で死亡が確認されました。享年58歳。2015年にサベージはWWE殿堂入りを果たしています。

今でもWWE選手の多くがコーナー最上段からダイビングエルボーを放つ際、サベージと同じ動作をし、同じフォームで飛んでいきます。実況陣が、そしてファンの多くがサベージの名を叫びます。そうしてレジェンドは今もこれからもずっと生き続けるのです。

Pomp and Circumstance (Macho Man Randy Savage)

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収録アルバム『WWE: The Music of WCWJimmy Hart & Howard Helm WWE WWE, Inc.Amazonデジタルミュージック
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