目次
- その昔、ポールは死んだことにされていた
- アルバム「サージェント・ペパーズ」からの死亡説
- アルバムジャケットで、ポールの頭上に手がかざしてある
- 裏ジャケットでポールだけが背を向き、その上には「without you(アナタはいない)」という文字がある。
- ポールが左腕につけているバッジの文字「OPD」は、「Officialiy Pronounced Dead(=公式に死亡を宣言する)」の略
- 6曲目「She’s Leaving Home」の歌詞先頭「Wednesday morning at five o’clock as the day begins(水曜日の朝5時、1日の始まり)」は、ポールの死亡時刻が水曜午前5時だったことを意味する
- 11曲目「Good Morning Good Morning」の歌詞先頭で「Nothing to do to save his life(彼の命を救うものは何もない)」と歌っている
- 13曲目「A Day In The Life」の歌詞に、自動車事故で死んだ男の描写がある
- アルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」からの死亡説
- 6曲目「I Am The Walrus」のエンディング部分には、シェイクスピアの舞台「リア王」における「私の亡骸を葬ってくれ」などのセリフが挿入されている
- 同じく「I Am The Walrus」の最後、大勢のコーラスが「everybody got one」と歌ってる部分を逆回転再生すると「ワハハ、ポールは死んだ」と聞こえる
- 映画での「I Am The Walrus」演奏シーンで、セイウチ(=ウォルラス)に扮してるのはポール。ウォルラスという単語はスカンジナビア文化圏においては死の象徴であり、ギリシャ語では「死体」を意味する
- 映画のラストシーン、「Your Mother Should Know」を歌う場面でビートルズの4人は胸にバラの花をつけているが、他の3人は赤いバラなのにポールだけ黒いバラ。黒いバラは死を連想させる
- 8曲目「Strawberry Fields Forever」の最後、フェードアウト後に再びフェードインしたパートで「I buried Paul(私はポールを埋葬した)」という低い男の声が聞こえる
- アルバム「ホワイトアルバム」からの死亡説
- アルバム「アビイ・ロード」からの死亡説
- まとめ
その昔、ポールは死んだことにされていた

誕生日が1942年6月18日。御年80歳になるポール・マッカートニーですが、実はその昔、ビートルズ末期の1969年に「ポールは1966年に自動車事故で死亡しており、現在のポールは替え玉のソックリさんが影武者をしている」みたいなニュースが流れていたんです。俗に言う「ポール死亡説」。
最初はどこかのラジオ局から流れ始めたんだそうです。真面目だったのかネタだったのかは良く分かりませんが、死亡説の根拠となる理由の一つ一つが妙な説得力を持っていたため、またたく間にファンの間で広まり、広報担当が記者会見を開いて否定する事態にまで発展。
しかしそれで沈静化するどころか「そういえば、あの件も死亡を裏付けてる」「あの曲にも秘密が!」みたいにどんどん死亡説が飛躍・増殖していきました。
大騒動になってた1969年当時、ビートルズはメンバー間の仲が修復不可能な状態。ポールは結婚したばかりの妻リンダ(1998年に死去)とスコットランドの広い農場がある自宅にこもってノンビリ過ごしつつ、ソロ活動への準備を始めてたんだそうです。
そのポールが1969年の年末、雑誌「LIFE」のインタビューに答えて「生きてます」と発言。好き放題に広まってた死亡説がそこでようやく沈静化したんだとか。
ビートルズを昔から好きなファンならご存知のものばかりと思われる「ポール死亡説」のうち有名なものを今回紹介します。
アルバム「サージェント・ペパーズ」からの死亡説

アルバムジャケットで、ポールの頭上に手がかざしてある

「東洋では宗教的に埋葬された者に対する神の祝福を象徴している」のだそうです。
そんな宗教的な意味があるのなら、下手に人の頭の上で手なんて挙げられなくなっちゃうなぁ。
裏ジャケットでポールだけが背を向き、その上には「without you(アナタはいない)」という文字がある。

上の写真はCDに同封されてるブックレットなのですが、アナログのレコード盤では裏ジャケットで使用されてました。
レコード盤では裏ジャケットに全曲の歌詞がズラーっと書かれていて、ちょうどポールの頭上にあたる箇所にはジョージが作詞作曲した「Within You Without You」という曲の歌詞が記載されてました。
ちなみに上の写真の通り、CDブックレットに歌詞は記載されてません。
要するに、「アナタはいない」ってのは「たまたま」です。なぜポールだけ背を向けていたのかは知りません。ほら、思春期の子供にあるじゃないですか。他人と違うことして目立つみたいなね。
ポールが左腕につけているバッジの文字「OPD」は、「Officialiy Pronounced Dead(=公式に死亡を宣言する)」の略

細かいとこまで見つけてくるなぁ。言いがかりもスゴいし。
ポールが実際に着けていたバッジの文字・OPDは「Ontario Provincial Police」の略だそうです。
6曲目「She’s Leaving Home」の歌詞先頭「Wednesday morning at five o’clock as the day begins(水曜日の朝5時、1日の始まり)」は、ポールの死亡時刻が水曜午前5時だったことを意味する
警察発表みたい。
11曲目「Good Morning Good Morning」の歌詞先頭で「Nothing to do to save his life(彼の命を救うものは何もない)」と歌っている
これはジョンの言葉遊びの一種なんですけどね。
13曲目「A Day In The Life」の歌詞に、自動車事故で死んだ男の描写がある
これはジョンが1966年12月に読んだ新聞デイリーメール紙の朝刊に載っていた2つの事件からインスピレーションを受けて歌詞を書いた、とインタビューで語っています。
1つは、資産家でもありビートルズたちと友人関係でもあったタラ・ブラウン氏が自動車事故で急死したというニュース。
もう1つはイギリスのランカシャー州ブラックバーンにある道路に4000もの穴が空き、それを舗装しているというニュース。
歌詞にある自動車事故の描写は前者のタラ・ブラウン氏が自動車事故死したニュースが基になってます。またランカシャーの穴も同じく歌詞中に描写があります。
ちなみにランカシャーの穴のニュースはポール自身もインスピレーションを受けて、アルバム5曲目の「Fixing a Hole」という曲を作っています。
アルバム「マジカル・ミステリー・ツアー」からの死亡説

6曲目「I Am The Walrus」のエンディング部分には、シェイクスピアの舞台「リア王」における「私の亡骸を葬ってくれ」などのセリフが挿入されている
曲の最後の方で男性の渋い声が何やら呟いてるんですけど、あれはリア王の演劇舞台で役者が喋ってるセリフを録音して曲に挿入してるんだそうです。
その中に「bury my body(私の亡骸を葬ってくれ)」や、「O, Untimely Death(なんと早すぎる死だ)」というセリフもあるため、死亡説に含められちゃったのでしょう。
同じく「I Am The Walrus」の最後、大勢のコーラスが「everybody got one」と歌ってる部分を逆回転再生すると「ワハハ、ポールは死んだ」と聞こえる
ポール死亡説で有名なものの中には「曲を逆回転すると死亡を意味する表現が聞こえる」という説がすごく多いです。逆回転したらどうとでも聞こえるし、どうとでも解釈できますわね。
ちなみに最後の「got one got one everybody got one」というコーラスは、「みんなポット(=ドラッグのこと)を吸おう」と歌ってる、というデマを流したメディアもあり、死亡説とは全然別の意味で論争を巻き起こした箇所でもあります。
映画での「I Am The Walrus」演奏シーンで、セイウチ(=ウォルラス)に扮してるのはポール。ウォルラスという単語はスカンジナビア文化圏においては死の象徴であり、ギリシャ語では「死体」を意味する
スカンジナビアやギリシャ語のことまで考えて歌詞作らないでしょ。

これがアルバムジャケットでかぶり物をかぶってる面々。このかぶり物は「アイ・アム・ザ・ウォルラス」の演奏シーンにのみ登場します。

テレビ映画「マジカル・ミステリー・ツアー」での「アイ・アム・ザ・ウォルラス」演奏シーン。この頃にはメガネを常にかけるようになってたジョンが、この演奏シーンではメガネをかけていません。

ジョンはピアノを弾きながら表情をコロコロ変えて歌ってます。ピアノの前で黙々とベースを弾いてるのがポール。

で、かぶり物のシーンがこれなんですけど、セイウチはピアノ弾いてますよね。だからセイウチに扮してるのはジョンだってのは、映画見た世界中の人が分かってるはずなんですけど、敢えてポールがセイウチだと言っちゃう無理矢理感がね。
ちなみに、なんでセイウチかというと、ジョンが「不思議の国のアリス」からインスピレーションを受けていて、そのアリスの中に「セイウチと大工の話」という場面があります。私もディズニーのアニメ映画でその場面を見ました。
美味しそうな牡蠣を食べようとしたセイウチと大工ですが、大工をだましたセイウチが牡蠣を独り占めして全部食べちゃって大工が激怒する、という場面。
子供の頃にその場面を知ったジョンが曲の中でセイウチを登場させたんですけど、「セイウチの方が良い奴だと勘違いしてたんだ、本当は「僕は大工」って曲にすべきだったんだ」と後にインタビューで語ってます。
そのインタビューを読んで「ウソつき!」って思いましたね(笑) 間違いなくジョンはワザとやってる。
映画のラストシーン、「Your Mother Should Know」を歌う場面でビートルズの4人は胸にバラの花をつけているが、他の3人は赤いバラなのにポールだけ黒いバラ。黒いバラは死を連想させる
黒いバラが不吉なのかどうかは知らないですが、

確かにこれは不思議でしたね。なんでポールだけ黒いんだ?と思いました。
ポールによれば「スタッフが赤いバラを3つしか用意してなかったんだ」とのことですが、普通に考えて絶対そんなことあるわけない。ポールが「俺だけ黒にして!」って言った気がします、性格的に。
8曲目「Strawberry Fields Forever」の最後、フェードアウト後に再びフェードインしたパートで「I buried Paul(私はポールを埋葬した)」という低い男の声が聞こえる
声の主はジョンなんですけど、これもジョンが1980年のインタビューで明確に否定してます。「Cranberry Sauce(クランベリー・ソース)と言ったんだけどな」とジョン。
これはどうも本当らしく、別テイクでもハッキリと「クランベリーソーース」と歌ってます。
じゃあなんでクランベリー・ソースなんて紛らわしいこと言ったのよって話ですが、タイトルがストロベリーだからか?
アルバム「ホワイトアルバム」からの死亡説

アルバムジャケットが白一色なのは、ポールの喪に服しているから
喪に服すって「黒」だとばかり思ってたのですが、イギリスでは白なんですかね。
3曲目「Glass Onion」に「The walrus was Paul(セイウチはポールだったんだ)」という歌詞がある
この曲はジョンが過去のビートルズの楽曲タイトルを歌詞に散りばめて遊んでまして、他にも「フール・オン・ザ・ヒール」「フィクシング・ア・ホール」「レディ・マドンナ」などの曲が登場してます。
「セイウチはポールだった」という歌詞もジョンがふざけて書いてるのだと思われるのですが、このアルバムを制作してた時点では死亡説がまだ出てなかったはずなので、それを思うとジョンはどういう意図でこのフレーズを入れたのかってのは気になります。
10曲目「I’m So Tired」の最後、ジョンがボソボソ小さく何か呟いてる箇所を逆回転再生すると「ポールは死んだ、寂しい、寂しい、寂しい」と聞こえる
またも逆回転再生ネタ。
「Revolution 9」という曲を逆回転再生すると「turn me on, dead man」と聞こえる箇所がある
これも逆回転再生ネタ。
アルバム「アビイ・ロード」からの死亡説

このアルバムジャケットはとても有名ですが、このジャケット写真の中だけでも死亡説ネタがワンサカと盛り込まれてます。
ジャケット写真で、左利きのポールが右手でタバコを持っている

確かに右手ですね。っていうか右手でもいいじゃん。
私は右利きですが、タバコを吸ってた頃は必ず左手で持ってましたよ。ってことは私も死んでるのか。
ジャケット写真で、他の3人は左足を踏み出しているのにポールだけは右足を踏み出している

言われてみれば、って感じですが一人だけ違っててもいいじゃん。みんな仲が悪かったんだから。
ジャケット写真で、ポールはクツを履かず裸足で歩いている。裸足は死体を意味する

ネタ満載です。
この日、ポールは写真撮影にサンダル履きで来てたらしく、その流れで裸足になってアビー・ロードの横断歩道を渡って撮影されたとのことなんですけど、そもそもなんでサンダル履きかという話ではあります。海水浴にでも行ったのか。
この「ポールが裸足=死体説」がさらに飛躍しちゃって、他の3人に関して「ジョンは牧師、リンゴは葬儀屋、ジョージは墓掘人を表現している」なんて説まで飛び出しちゃいました。

もう好きにしてくれって思います。
ジャケット写真、横断歩道の向こうにある車のナンバーが「28IF」。これは「もし(if)ポールが生きていれば28歳」という意味である

大半のネタが眉唾モンだと苦笑する中、この車ナンバーだけは「おおー!これはスゴイ!」と驚きました。これ見つけた人はスゴいし、よくそこまでコジつけられるものだなと。
と言いつつ、この当時ポールは28歳じゃなくて27歳だったってオチがあるんですけどね。
アルバムの裏ジャケット写真でBEATLESの「S」が割れている

これ、SじゃなくてAだったとしても何かしら意味つけて死亡説にしてたと思いますけどね。
そもそも「S」が割れてることとポールの死がどう繋がるというのか。
1曲目「Come Together」に「One and one and one is three(1+1+1は3である)」という歌詞がある
これも死亡説と無理矢理こじつけてる感じですが、当時ビートルズは初代マネージャーのブライアン・エプスタインが死去した後、次のマネージャー問題で「ポールvs他の3人」という対立構図ができてたので、そういう意味でジョンは意図的にこういうイジワル歌詞を入れたのかもしれないですね。
ちなみにポールが推したのは妻リンダのお父さん、つまり自分の義父、リー・イーストマン。
それによりポールが金銭的にも主導権を握ることを嫌った他のメンバー3人は、元ローリング・ストーンズのマネージャーだったアラン・クレインを推します。このマネージャー問題もビートルズ解散の一因で、訴訟合戦にもなりました。
しかし結果的にクレインは大失敗だったらしく、後にジョンはこの時のことを振り返って「僕もたまには失敗を犯すことだってあるさ」と間違いを認めています。
まとめ
有名なものだけでこれだけあります。他にも怪しげな逆回転再生の説とか、それは全然違うんやんっていう細かいものも入れるとずいぶんたくさんあったらしいです。
ポールは1993年にライブ音源を収録した「ポール・イズ・ライブ」というライブアルバムをリリースしてます。
「ライブ」には、ライブ演奏という意味、そして「僕は生きてるよ!」と死亡説をパロったジョーク的意味のライブ、2つの意味を掛けてまして、アルバムジャケットもずいぶん話題になりました。

一見して分かる通り「アビー・ロード」をセルフパロディしたジャケットで、「アビー・ロード」でウワサになった死亡説の根拠をすべて逆手に取ったネタを散りばめています。
- 裸足だった → クツを履いている
- 右手でタバコ → 左手で犬のリードを持ってる
- 一人だけ右足で踏み出した → 左足で踏み出してる
- 車のナンバーが「28IF」 → 「51IS(いま51歳です)」
車のナンバーを見た時は大笑いしました。さすが、ただでは転ばないポールの面目躍如です。
