Wind up santa and mini-piano on piano by R.B. Boyer
好きな女性の3条件
若い頃、「好きな女性のタイプを3つ挙げるとすれば?」と問われたら、迷わず返した私の答えがある。
2. ピアノが弾ける女性
3. 脚が細い女性
最後の3番目は半分冗談だけど(半分は本気だ)、私自身が英語系の大学を卒業したくせして英語がそれほど喋れないこともあり、英語ペラペラな女性にすごく憧れる。
だから、英語に堪能でスタイルも良いキャビンアテンダント(昔でいうスチュワーデス)の女性なんてスゴク憧れる。それでピアノまで弾けて笑顔が素敵で性格も良かったら結婚して欲しい。
そんな私と実際に結婚した女性(=嫁)は、英語を全く喋れないし、脚も全く細くない。ただ、ピアノはほんの少しだけ弾ける。子供の頃に数年だけ習っていたらしい。
そんな嫁は結婚する前から「女の子が生まれたら絶対にピアノを習わせたい」という夢を持っていた。
現在住んでる家を建てたとき、嫁の親類が所有していたピアノを捨てるという話になり、「捨てるくらいなら譲って」と嫁が交渉して、新居にピアノが来ることになった。
自分に酔いながらピアノを弾き続ける友人
中学生の頃、同じクラスにピアノを弾く友人(♂)がいた。幼稚園の頃から習っていて、かなりの腕前だった。
昼休憩になると二人で音楽室に行き、私はアコースティックギターを、彼はピアノを黙々と弾き続けた。
私は小学5年生の時にギターを練習し始めたものの、まだ全然上達していない頃。一方の彼はセミプロ並みのテクニック。
つたない音しか出ない私の横で、彼のピアノは大音量。ギターの音が全く聴こえない。
二人でセッションするわけでもなく、彼は好き勝手に自分の弾きたい曲を延々と弾き続ける。私が話しかけても全く返事をくれない。完全に入り込んでいて、酔いしれてる。
彼はエア・サプライが好きで、「ロスト・イン・ラブ」とかよく弾いてた。優しく美しいバラードなんだけど、彼が弾くとロックみたいにやかましかった。(でもめちゃくちゃ上手だった)
Lost in Love (Remastered)
私が友人をビートルズに導いた
大学に入学して仲良くなった友人(♂)の一人が、私の部屋に初めて遊びに来た時のこと。
部屋にあったギター&ベース&アンプの機材を見て友人は興奮。
「りくちゃんギター弾けるの!?」
大学入学直後は、音楽サークルに入ってバンドを組みたいと考えてた。(でも結果的にサークルには入らず、自分で雑誌にメンバー募集を出して独自でバンド組んだんだけど)
「何か弾いてくれー!」と友人にリクエストされたので、当時ようやくそれなりに弾けるようになってた曲を友人に弾き語りで聴かせた。
まず「ブラックバード」。これはビートルズ好きでギター練習する人なら大半がトライした曲だと思う。
Blackbird
もう1曲、邦題で「悲しみはぶっとばせ」という曲。これはコードが簡単なので、早い段階で弾き語りが出来るようになってた、大好きな曲。
You’ve Got To Hide Your Love Away
「いい曲やねえー!誰の曲?」と友人が訊くので、どっちもビートルズだよ、と教えてあげた。
1ヶ月後、彼はバイト代でビートルズの全曲入りCDボックスと、電子キーボードを買った。
何も聞かされていなかった私は、突然部屋に遊びに来た友人がCDボックスと電子キーボードを持ってきたので、とても驚いた。
ビートルズの曲、1曲だけ弾けるようになったよ、と言って彼が弾いてくれたのは「レット・イット・ビー」。途中何度か間違えたけど、それでもすごく上手だった。私も途中からギターでコードを弾き、二人で大声で歌った。
Let It Be
彼がピアノを弾けることも、それがかなり上手なことも、全く知らなかった。私はひたすら驚くばかり。
何か他に弾ける曲ある? と今度は私がリクエスト。
そこで彼が弾いてくれたのは、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス(原題:Merry Christmas Mr.Lawrence)」だった。
高校の頃に相当練習していたらしいのだが、その完成度がスゴかった。鳥肌が立ちまくり。涙まで出てきた。あんなに感動するとは思わなかった。
以来、彼が私の部屋にキーボードを持ってきてくれたり、私が彼の部屋に遊びに行った時は、必ず1回は「戦場のメリークリスマス」を弾いてもらってた。
彼はビートルズがどんどん好きになり、いろんな曲のピアノを覚えていったので、よく私とセッションして遊んでた。楽しかったなぁ。
本当は私のバンドに彼をキーボードとして参加させたかったのだけど、彼は体育会系のサークル活動をマジメにやってたので、結局誘えなかった。
映画はほとんど記憶がない
「戦場のメリークリスマス」は、1983年に公開された映画。大島渚が監督で、主演はイギリスの大物ミュージシャンであるデビッド・ボウイ。
大好きだったYMOの坂本龍一、それになんと言っても当時はただのお笑いタレントだったビートたけしが出演するということで話題性十分だった映画。私も一度だけ観た。
でも、当時は子供だったのもあって、内容がイマイチ理解できなかった。今もう一度観れば全然違う感想になるんだろうけど、当時はよく分からなかった。
ただ、テーマソングにもなった坂本龍一の曲だけは鮮烈に記憶された。
ピアノアレンジの曲でイチバン好きなのは? と訊かれたら、たぶん私は「戦場のメリークリスマス」と答える。
娘が私に訊いた「何の曲がいい?」
来年春に小学校を卒業する長女。
嫁の思惑通り、長女は小学校に入学する直前からピアノを習い始めた。今年で6年続いている。
辞めたいと言ったことは数知れず。それでも私は辞めさせなかった。続けることの大切さ、それが自分にとっての大きな自信になることを長女に知ってもらいたかったから。ピアノのテクニックなんて二の次。
姉の頑張りを見て影響を受けた次女が「私もピアノを弾きたい」と言って、次女も3年前からピアノを習っている。
中学に入ると長女はピアノと関係のない部活動を始めるつもりなので、おそらくピアノも辞めることになる。それは仕方ない。
今年のクリスマス、おそらく長女にとって最後となるピアノ発表会がある。そこで披露する各生徒の課題曲は「自分が弾きたい曲を選曲してよい」ことになっていた。
10月初旬、長女が私に訊いてきた。「パパ、何の曲がいい? 何か好きな曲ある?」
私は迷わず答えた。戦場のメリークリスマスがいいな。
そして長女にCDを聴かせた。坂本龍一が優しく奏でるピアノの旋律。
長女は目を輝かせ、「これにする!」と言った。
翌週、ピアノの先生に課題曲を告げると、先生(♀)は言ったんだそうな。「この曲を選ぶなんて、やっぱりお父さんステキやわ、ますますファンになった」
(ピアノの先生は私のファンなんだって。いわく「すごい面白いから」だそうな。ありがたいけど恥ずかしい)
現在長女は少しずつ上達してるところ。子供部屋のピアノで毎日、「戦メリ」を練習している。先週あたりから両手で弾く練習に入り、どんどん曲っぽくなってきてる。
長女が練習しているピアノの音を聴きながら、私はとても幸せな気持ちになる。
ピアノ発表会で、きっと私は泣くだろう。
大学時代が懐かしくて泣くのではない。長女が6年間も頑張ってきたこと。そして自分の娘が「戦メリ」を弾いてくれるという親孝行に対して、私は胸が熱くなるに違いない。
今から楽しみだ。