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アルバム「レット・イット・ビー」でビートルズが喋るアドリブまとめ

2015年1月16日

ビートルズ解散前最後のアルバム

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イギリスでは1970年5月、日本でも同年6月、ビートルズ解散前最後にリリースされたアルバム「レット・イット・ビー」

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それまでにリリースされたビートルズのアルバムとは少々趣が異なる「レット・イット・ビー」。

楽曲の最初や最後などに、メンバーたちが何やらアドリブ的に呟いたり、雑談している音声が消されることなく残り、そのままアルバムに収録されています。

ジョン・レノンが何やら冗談を言って、スタッフが笑っている音声も収録されてるのですが、ジョンは何を言って笑わせてるのかをスゴく知りたい。それが中学生の頃、英語を勉強する原動力になってました。

結局、受験英語と私の語学力程度では理解することができず、書籍やネット検索などの情報収集でようやく話の内容や意味が分かったんですけどね。

アルバム「レット・イット・ビー」は映画のサウンドトラック

解説の前に、前提知識として「これだけは知っておいて下さい」という話を幾つか。

まず、今回紹介するアルバム「レット・イット・ビー」は、1970年に劇場公開された映画『レット・イット・ビー』のサウンドトラック(サントラ)という位置付けになっています。

ちなみに映画『レット・イット・ビー』は2015年現在、DVDやBlu-rayでの商品化がされていません。公式なVHS版もリリースはされていません。

昔はVHS版がレンタルビデオ店で普通にあったりしました。私も実際パッケージを見たことがあります。しかしあれは違法な海賊版です。

映画『レット・イット・ビー』に関する映像で公式なものは、現在『アンソロジー』のDVDで一部だけ見ることが出来ます。

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レット・イット・ビーが撮影された「3つの場所」

前提知識のもう1つ。

アルバム「レット・イット・ビー」は映画で使用された音源を中心に収録されてます、というのは前術のとおり。

この音源を、フィル・スペクターというプロデューサーが大幅に加工し、再編集したものがアルバムとしてリリースされています。

したがって映画の音源とアルバムの音源で全然違うぞ、というのが複数存在します。

本題に入る前に、まず映画が撮影された場所(=アルバム収録曲が録音された場所)として、3つあることを押さえておいてください。

  • トゥイッケナム撮影所
  • アップル本社内のスタジオ
  • ルーフトップ・コンサート

1. トゥイッケナム撮影所

レコーディング・スタジオではなく、映画撮影スタジオ。ここに音響装置などを持ち込んでセッションする風景を撮影する、という主旨で1969年1月2日から開始。

しかし、常にカメラで監視された状態でのセッションによりビートルズの面々は不満を募らせ、雲行きの怪しかったメンバー間の関係が更に悪化する要因となります。

有名になったポールとジョージの口論シーンもトゥイッケナム撮影所で発生。撮影開始から約1週間後の1月10日には、ジョージがビートルズ脱退を宣言する事態にまで発展してしまいます(その場面は映画ではカットされているそうです)。

説得されたジョージは最終的に戻ってきますが、トゥイッケナムの環境が悪すぎるということで、ここでの撮影は1週間少々で打ち切られました。

2. アップル本社内のスタジオ

トゥイッケナムでの撮影が打ち切られ、1969年1月22日からセッションの場所をロンドンのサヴィル・ロウという所にあるアップル・コアの本社ビル内スタジオに移動します。

「アップル」というのはビートルズが設立した会社。MacやiPhoneなどを売ってるアップルとは別会社です。

アップル本社ビルでの撮影は、1月31日まで続いたそうです。約10日間ですね。

アップル本社でセッションを再開するにあたり、ジョージはゲスト・ミュージシャンとしてキーボード奏者のビリー・プレストンを招き、ゲスト参加によりビートルズの4人もリラックスできたことで、映像での表情も温和なものが増えてきます。

「ホワイトアルバムの時にエリック・クラプトンをゲストとして招いた時も同じで、ゲスト・ミュージシャンが来るとケンカなどせず、おとなしく紳士的になる、イヤな奴らだと思われたくないからね」とジョンやジョージがコメントで振り返ってます。

3. ルーフトップ・コンサート

1969年1月30日、ポールの発案により実現したビートルズの4人による最後のライヴ映像。「ルーフトップ・セッション」と呼ぶこともあります。

アップル本社ビル屋上で何の予告もなく始まった伝説のゲリラライヴで、大音量の演奏と歌声を聴いたロンドン市民がアップル本社ビル周辺に群がり始め、ライヴを歓迎する人もいれば眉をひそめる人もいるなど、騒然となります。

最後は警察が介入して屋上ライヴの中止を要請したことで終了。ここで映画も終了します。

ビートルズがアドリブで何を喋っているのか、全曲解説

それでは、全12曲を1つずつ解説していきます。

1. トゥー・オブ・アス(Two Of Us)

ポールが作った牧歌的な一曲。

曲の最初、いきなりジョンの発言から始まります。

“I Dig A Pygmy” by Charles Hawtrey and the Deaf Aids. Phase One, in which Doris gets her oats.
(チャールズ・ホートゥリーとデフ・エイズによる「I Dig A Pygmy」、第1部「ドリスは男漁りが好き」でした)

「I Dig A Pygmy」とは、アルバム2曲目「Dig A Pony」のこと。「Two Of Us」の演奏前に話しているのではなく、というか全然関係がなく、1月24日にアップル・スタジオで「Dig A Pony」をリハーサル中に発したジョークだそうです。

リーダー1名とバンド名を繋げてユニット名にしてるミュージシャンっていますよね。たとえば「ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」とか「内山田洋とクールファイブ」とかが有名ですが、ジョンは「チャールズ・ホートゥリー&デフ・エイズ」という架空のバンドが I Dig A Pygmyを演奏したという設定にしています。

チャールズ・ホートゥリーとはイギリスのコメディー俳優で、身長が低く、ガリガリに痩せ、声は甲高い人だったそうです。

さらにデフ・エイズとは補聴器のことですが、ジョンは聴覚障害者のことを揶揄する意図でバンド名をデフ・エイズとしています。

ジョンは外見的に不格好な人や、身体的障害を持つ人を揶揄するという悪癖があり(「つい言ってしまう」と本人も認めています)、チャールズ・ホートゥリーの外見をからかう流れでデフ・エイズと続け、スタッフらしき人がアッハッハと笑ってしまってます。

その後、「第1部(Phase One)」と続けることで、「I Dig A Pygmy」は組曲であり、その第1部として「Doris gets her oats」という楽曲を演奏しました、と説明。

「gets her oats」は、若者が結婚前に複数の異性と遊び回るという意味の「sow one’s oats」のもじり。バンド名も曲名も聞く人によっては顔をしかめてしまいそうな、要するにブラックジョーク。

実際、このジョークをジョンが発した直後、リンゴが「口は災いのもとだよ」とジョンをたしなめているそうです。

曲の「Two Of Us」自体は牧歌的なフォークソングで、ポールとジョンが最初から最後までハモってます。

曲のエンディング、3分07秒からポールのアドリブ台詞。

We’re going home. Better believe it. Goodbye.
(僕たちは家に帰る。信じてもいいよ。グッバイ)

曲の歌詞に沿ったアドリブですね。横ではジョンがアドリブで口笛を吹いてます。

2. ディグ・ア・ポニー(Dig A Pony)

作ったのはジョン。ルーフトップで演奏したライヴ音源です。

演奏が始まるまで7秒ほどの間があり、小さい音量で会話が聞こえます。

Allright? Yeah, OK.
(いいかい? うん、オーケー)

前の曲が終わって少しの休憩に入り、次の曲(=Dig A Pony)に行ってもいいかを確認してます。誰の声なのかは不明。

これを受けて、

1, 2, 3, Hold it.
(ワン、ツー、スリー、ちょっと待って)

出だしのカウントを取ってるのはジョージ。ここで休憩中にタバコを吸ってたリンゴが火を消しておらず、「ちょっと待って!」とストップをかけたため、ジョン&ポール&ジョージが最初の音をジャンと弾いた直後に一旦中断。

Ah, Hold it. 1, 2, 3
(ううぅ……待ってか。ワン、ツー、スリー)

クシュクシュと鼻をススる音の後、うう〜と寒さに震えてるのはジョン。その直後、「寒いんだからサッサとやろうよ…」みたいな感じでリンゴの「ちょっと待って」を復唱してるのもジョン。

真冬の1月末にビルの屋上。しかも気温は2度。あまりの寒さにジョンとジョージは奥さん(=ヨーコ&パティ)の毛皮コートを貸してもらい、それを着ながら演奏してます。

その後、再びジョージがカウントを数えてから演奏開始。

演奏終了後(=3分45秒から)、再びジョンが寒くて愚痴ってます。

Thank you brothers. Put me hands getting too cold to play the chords.
(みんなありがとう。手が寒すぎてコードが弾けないよ)

この曲の元々のアレンジは、イントロ直後の歌い出しとエンディングの最後に、サビでも歌ってる「All I want is」というフレーズが入っており、ルーフトップのライヴでも「All I want is」と歌ってます。

しかしアルバム収録バージョンではフィル・スペクターが不要と判断し、イントロとエンディングの「All I want is」をカットしています。

カットしていない、本来の「All I want is」込みのバージョンは「アンソロジー 3」に収録されてます。

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3. アクロス・ザ・ユニヴァース(Across The Universe)

ジョンがギター1本で作った静かな名曲、ですが「レット・イット・ビー」バージョンはフィル・スペクターの趣味により壮大なオーケストラ演奏が重ねられています。

「レット・イット・ビー」に収録されているバージョンのベースになった、オリジナルのバージョンが存在します。録音した日付は同じで、プロデューサーのフィル・スペクターが編集してるか、してないかの違い。

1969年12月、世界野生動物基金のためのチャリティーアルバムに収録されたのがオリジナルのバージョン。

オリジナル・バージョンと「レット・イット・ビー」バージョンの違いは、

  • イントロに「鳥のはばたき音」が入ってる → 「レット・イット・ビー」ではカットされた
  • サビではジョンの歌に続き、ポール&ジョージ、そして「たまたま見物に来てたファンの女の子」のコーラスが入ってる → 「レット・イット・ビー」ではカットされ、別のコーラスと、弦楽器によるオーケストラをオーバーダビングした
  • ワウワウ・ギターが所々でホワンホワンと鳴り響いてる → 「レット・イット・ビー」ではカットされた
  • エンディングでジョンの歌にポールがコーラスをつけてハモってる → 「レット・イット・ビー」ではポールのコーラスのみカットされた

さらに「レット・イット・ビー」バージョンは曲の回転数を落としているため、オリジナル・バージョンよりもジョンの声が少し低く、けだるい歌い方のように聞こえます。

加工されていないオリジナル・バージョンは「パスト・マスターズ」に収録されています。

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4. アイ・ミー・マイン(I Me Mine)

ジョージの1曲。いつも「僕が、僕が、僕がね」と自分中心なポールへの当てつけで作ったと言われています。

曲の途中で演奏とボーカルの激しくなるパートはポールが付け足したとも言われてます。

5. ディグ・イット(Dig It)

元々は12分25秒もの長尺だったジョンの1曲を、フィル・スペクターが0分50秒という長さにバッサリ斬り捨てたバージョン。

曲の最後、フェードアウトしていくところ(0分43秒)でジョンが高い裏声でアドリブを喋ってます。

That was “Can You Dig It” by Georgie Wood. And now we’d like to do “Hark The Angels Come”.
(今のはジョージィ・ウッドの『Can You Dig It』でした。次は『Hark The Angels Come』を歌います)

このアドリブが録音された時点(1969年1月24日)では、曲名が「Dig It」ではなく「Can You Dig It」だったため、ジョンは正しく曲名を告げてます。

ジョージィ・ウッドはイギリスの小人コメディアン。ジョンは背の小さい人を揶揄するのが好き、というのは前術のとおり。

「Hark The Angels Come」は、正式名称が「Hark The Herald Angels Sing」というキリスト生誕を祝うクリスマスソングで、子供がよく歌う曲なのだそうです。ジョンが裏声を使い子供っぽい喋り方にしてるのはそのため。

次に続く「Let It Be」が賛美歌にも似た美しい歌詞とメロディなのもあり、ジョンがポールの名曲にエールを送る形となってます。

6. レット・イット・ビー(Let It Be)

サイモン&ガーファンクルの名曲「明日にかける橋」にインスピレーションを受けて、ポールが作り上げた名曲。

「レット・イット・ビー」に収録されているバージョンはアップル・スタジオで録音されたもの。シングルでリリースされたバージョンとは異なります。

シングル・バージョンは、間奏でジョージが弾いてるギターのフレーズがアルバム・バージョンとは異なります。シングル・バージョンは「パスト・マスターズ」に収録されてます。

さらに、映画「レット・イット・ビー」で流れるこの曲の演奏シーンは、アルバム・バージョン、シングル・バージョンのどちらとも違うまた別のバージョン。間奏でのジョージのギターソロもこれまた違います。

映画バージョンでは、ポールが最初に作っていた「There will be no sorrow」という歌詞で歌っています。この箇所は後にアルバム&シングルの両バージョンでは「There will be an answer」に変更されてます。

映画バージョンはDVD「アンソロジー」で映像として見ることができます。

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7. マギー・メイ(Maggie Mae)

ビートルズのオリジナルではなく、イギリスのトラディショナル・ソング。ジョンとポールがハモりながら歌ってます。

ビートルズ4人の出身地であるリバプールなまりで意図的に歌ってるそうで、0分26秒の「リバプール(Liverpool)」は発音が「りばぺうぅー」となってます。

8. アイヴ・ガッタ・フィーリング(I’ve Got A Feeling)

ルーフトップで演奏したライヴ音源。気温2度の寒空の下、よくこれだけのクオリティーで演奏できるなあと感嘆させられます。

しかし寒さに弱いジョン、やっぱりエンディングで愚痴ってます。3分29秒から。

Oh my soul, so hard.
(参った。キツイ)

9. ワン・アフター・909(One After 909)

元々はビートルズがメジャーデビューする前にジョンとポールが作っていた1曲。「レット・イット・ビー」の音源はルーフトップで演奏されたもの。昔々に自分たちが作った曲を久々にやってみよう、ってことだったのでしょう。

0分32秒のところでジョンがアドリブ気味に叫んでるフレーズ。

Yes I did.
(ホントだぜ)

「レット・イット・ビー」ではフィル・スペクターが音量を絞って編集したため、ジョンの叫びはほとんど聞こえません(よーく聞けば微かに聞こえます)。

ハッキリ聞き取れるバージョンは「レット・イット・ビー、ネイキッド」に収録されてます。

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若き頃に作ったオリジナルのバージョンは「アンソロジー 1」に収録されています。

演奏や歌を失敗しているバージョンも収録されていて、ポールがベースをミスって演奏を止めた際にジョンが「なにやってんだ」と怒り、ポールが釈明してる会話も録音されてます。なかなか笑えます。

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アルバム収録バージョンに話を戻しますが、曲のエンディング後、2分43秒からジョンがアドリブで歌を歌い始め、ポールも呼応します。

Oh Danny boy, the alter man is calling.
(おおダニー坊や、侍者が呼んでるよ)

この曲はイギリスのトラディショナル・ソング「ロンドンデリーの歌」または「ダニー・ボーイ」という名の曲。

本来の歌詞は「Oh Danny boy, the pipes the pipes are calling(おおダニー坊や、角笛が呼んでるよ)」で、ジョンは歌詞を変えて遊んでいます。

ジョンに釣られて歌い始めたポールは本来の正しい歌詞で歌っているため、途中で二人の歌が噛み合ってないのはそういう理由です。

10. ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード(The Long and Winding Road)

ポールがピアノを弾きながら歌い上げる名曲。

オリジナルは1969年1月31日に録音したバージョンで、曲を作ったポール本人はシンプルなアレンジに作り上げています。

しかし「アクロス・ザ・ユニバース」と同じく、プロデューサーのフィル・スペクターが壮大なオーケストラ演奏をオーバーダビングしてしまいます。ジョンたち3人は大絶賛、しかし作ったポールは曲を壊されたと大激怒しています。

ポールはビートルズ解散後に、ウイングスというバンドでも、あるいはソロになってからも何度か「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」をアルバムやライブで披露していますが、いずれも「レット・イット・ビー」の壮大なオーケストラ・アレンジは排除し、シンプルで穏やかな曲調にしています。

「俺が作ったこの曲は、これだよ」というポールのメッセージが感じ取れます。

11. フォー・ユー・ブルー(For You Blue)

ジョージが作った、スライドギターの軽快な音を取り入れた1曲。

ビートルズ解散後のジョージは「スライドギターの名手」と呼ばれ、スライドギターという演奏法を得意にしていたのですが、「フォー・ユー・ブルー」でスライドギターを演奏しているのはジョージではなく、ジョンです。

曲のテイクはアップル・スタジオで録音したものですが、イントロでギター演奏が始まる直前にジョンが何やら語ってる部分のみ、トゥイッケナムでのリハーサル音源を重ねているそうです。

Queen says ‘No’ pot-smoking FBI members.
(女王はFBIのメンバーがマ●ファ●をやるのは「ダメ」だと言ってるんだってさ)

セッションの合間の世間話ではないかとのこと。内容が内容なので伏せ字にします。

間奏ではジョージがいろいろアドリブで言い続けてます。まず1分3秒と1分7秒のところ。

Bop. Bop cat bop.
(ボップ。ボップ・キャット・ボップ)

ボップとかキャットとかは、ブルースの曲でよく使われる合いの手なんだそうです。沖縄民謡における「イーヤーサーサー」みたいな感じ?

続く1分10秒では、スライドギターを弾いてるジョンにジョージがエールを送ります。

Go Johnny go.
(いけ〜、ジョニーいけ〜)

チャック・ベリーの大ヒット曲「Johnny B. Goode」のサビで登場する歌詞を使ってます。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公がギター弾きながら熱唱してた、あの曲です。

1分17秒では

There go the twelve bars blues.
(12小節のブルースだよ)

さらに1分31秒ではデカイ声で

Elmore James got nothin’ on this, baby.
(エルモア・ジェイムスのパクリじゃないよ)

エルモア・ジェイムスはアメリカのブルース・シンガーで、スライドギターの演奏を多用してたんだそうです。

ジョンが頑張ってスライドギターを弾いてる横で「スライドギターだけどパクリじゃないよ」とジョージが冗談を言い、自分でおかしくなっちゃったジョージが最後に吹いてしまい、釣られてポールもブフフと鼻息荒く吹いています。

12. ゲット・バック(Get Back)

ポールが作った曲。この曲にもいろーんなバージョンがあり、誤解も多くあります。

アルバム「レット・イット・ビー」に収録されたバージョンは「ルーフトップのライブ音源だ」と言ってる意見や記事を過去に何度も見ましたが、間違いです。ルーフトップのライブ音源を聴いたことのある人なら、そういう間違いは犯しません。全然違うから。

正解は「いろんなところの音源を繋ぎ合わせた複合バージョン」。

まずイントロ前のアドリブ箇所。ここはアップル・スタジオで1月27日に録音されたテイクから持ってきたもの。ルーフトップでの雑談ではありません。

最初、0分03秒でポールが呟いてます。

Rosetta.
(ロゼッタ…)

続いてジョンが「ゲット・バック」のデタラメな替え歌を歌い始めます。

Sweet Loretta Fart she thought she was a cleaner, but she was a frying pan.
(かわいいロレッタ・ファートは自分を掃除機だと思ってたけど、フライパンだった)

「ファート」とはオナラのことだそうです。さすがジョン、安定した下品さ。

この替え歌の途中(0分07秒)でポールもジョンに釣られたか、

Sweet Rosetta Mark.
(かわいいロゼッタ・マーク)

と声をかぶせます。本来の「ロゼッタ・マーティン」から「ロゼッタ・マーク」に、曲を作った本人が変えちゃってる。

その後はジョンの呟き。

The picker! Picture the finger, Greg.
(ピックをくれ! 指がこのザマだよグレッグ)

グレッグってのはスタッフなんでしょうね。誰なのかは知りません。

最後に「1, 2, 3, 4」とカウントしてるのはジョージ。ここまでが1月27日、アップル・スタジオでの録音パート。

イントロが始まってからはシングル盤のバージョンと同じだと長年思い込んでいたのですが、実は別テイクなんだそうです。

エンディングが長く、ポールのアドリブが炸裂しているシングル・バージョンは「パスト・マスターズ」や「1967ー1970」に収録されています。

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曲のパートはアップル・スタジオで録音されたテイク。曲が終わった2分55秒から後はルーフトップの音源を繋いでいます。ここでようやくルーフトップです。

まず2分55秒で拍手しながら「イエーイ」と歓声をあげてる女性は(当時のリンゴの奥さん)モーリーン。

それに対してポールがお礼。

Thanks Mo.
(ありがとう、モー)

モーって愛称だったんですね。そして、このポールのお礼に重なりながら、

I’d like to say “Thank you” on behalf of the group and ourselves and I hope we passed the audition.
(我々グループ全員を代表してお礼を申し上げます。オーディションに合格してるといいんですけど)

ジョンが有名な台詞を述べてスタッフたちが爆笑し、曲もアルバムも、そして映画も終了します。

ルーフトップでは合計2回「ゲット・バック」を演奏していますが、大音量による騒音を苦にした近隣住民からのクレーム通報により、ビル屋上にやって来た警察官が演奏中止を要請します。

2回目の「ゲット・バック」を演奏し始めた矢先、音量を下げるよう警察官に命じられたスタッフのマル・エヴァンスがジョンとジョージのギターアンプ電源を落とすのですが、ポール、リンゴ、そしてキーボードのビリー・プレストンは無視して演奏を続行。

演奏続行を見てジョージが自らアンプ電源を入れ直し、これを見てマルもジョンのアンプ電源をオン。再び演奏再開し、歌い終わってからの「オーディションに合格してればいいな」という流れになります。

これら一連の音源は「アンソロジー 3」に収録されています。途中でギターの演奏が消え、異変を察知したポールも一瞬歌うのを止め、すぐ再開するのが分かります。また曲の最初でジョンがギターの演奏を豪快にミスってます。

まとめ

かなり長くなりました。以上がアルバム「レット・イット・ビー」に収録された楽曲、及びアドリブや雑談などの翻訳内容解説となります。

映画「レット・イット・ビー」は1970年の劇場公開からずいぶん経ってますが、DVDリリースには至っていません。いろんなオトナの事情があるのだそうです。

【2020年追記】

映画『ロード・オブ・ザ・リング』の監督、ピーター・ジャクソンが映画「レット・イット・ビー」を撮影する際の一連の演奏風景、いわゆる「ゲット・バック・セッション」を基に、未公開映像なども含めて再編集したドキュメンタリー映画を製作しました。

映画上映は度重なる延期の結果、有料チャンネルの「ディズニープラス」で独占放送されました。

Blu-rayの発売も発表されましたが、これまた何度も発売日が延期されています。

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