準決勝 ブラジル vs ドイツ
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今回開催国となったブラジルは、当然ですが地元での優勝を目指してたんですけど、同時にマラカナンの悲劇の払拭という裏テーマもあったはずなんです。
1950年に開催されたブラジルW杯の最終戦、勝てば初優勝だったブラジルはウルグアイを相手に1点を先制したものの、後半に2点取られて逆転され、勝ったウルグアイが優勝。この敗戦のショックでスタジアムの観客数名が亡くなっており、試合会場だったスタジアムの名前を取って「マラカナンの悲劇」と現在も呼ばれています。
後出しジャンケンと言われるかもしれませんが、正直私はブラジルが勝てるとは思ってませんでした。ネイマールとチアゴ・シウバを欠くということは、戦力ダウンはもちろんのこと、代わりの出場選手のプレッシャーも相当だろうし、連携の問題も出てきます。
しかも、相手はドイツです。ネイマールとチアゴ・シウバが仮にいたとしても果たしてどうだったか。今大会のドイツはタレントも揃ってるし、出場選手の大半が好調を維持し、結果を出している。安定っぷりが抜きん出てるんです。(もちろん、だからと言って必ず勝つとは限らないのがサッカーなんですけど)
一方ブラジルはというと、準々決勝までの時点で明確に、しかもコンスタントに結果を出していたと言えるのは、ネイマールと、チアゴ・シウバと、ダビド・ルイスくらいしかいない。
得点を決めた人って意味じゃないですよ。オスカルだってフレッジだって得点を決めてる。フッキも毎試合ものすごい運動量で走り回ってチームに貢献してるし、ジュリオセザールはPK戦でブラジルに勝利をもたらした。他の選手だって汗をかきまくったからこそ、準決勝の舞台まで勝ち上がっている。ただ、オスカルもフレッジもフッキも波があり過ぎてミスが多過ぎる。
準々決勝のブラジル戦試合レビューで、カギを握るのはオスカルとフッキだ、と私は書きました。この二人が得点を決めて、ダビド・ルイスとジュリオセザールが守備を統率できるのなら、たとえドイツが相手でも分からない。あとはサッカーの神様が決めること。
コロンビア戦の相手選手によるラフプレーで腰椎を骨折し、残念ながら戦線離脱することになったネイマール。彼のユニフォームを持ってダビド・ルイスは国歌を歌ってたし、ネイマールのためにこそ勝つんだというチーム全体の意志は感じられました。
そのネイマールに代わってFWには20番ベルナルジを先発起用。今日の試合が行われたベロオリゾンテを拠点とするアトレチコ・ミネイロというチームでサッカー選手としてのキャリアをスタートしたんだそうです。
イエローカード累積2枚で出場停止となった守備の要・チアゴ・シウバの代わりには13番ダンテを先発起用。ドイツのバイエルン所属で、対戦相手・ドイツの大半の選手とチームメイト。入場前には多くのドイツ選手とハグしてました。
コロンビア戦でイエロー累積2枚のため出場停止だった17番ルイスグスタボも復帰。これが今日揃えることの出来たブラジルのベストメンバー。
対するドイツは準々決勝フランス戦と全く同じメンバーで来ました。1トップで11番クローゼを今日も起用してきました。というか、クローゼを今日起用しなくてどうすんだって話なんですよ。
イジワルな言い方をすればブラジルのメンバーが少し落ちてる状態だからってのもあるんですけど、クローゼとブラジルは因縁めいた関係があります。
今大会でW杯の通算得点記録を15点に伸ばしたクローゼですが、タイ記録で並んでいるのは元ブラジル代表のロナウド。ロナウドがエースだったブラジルは2002年日韓W杯の決勝戦でドイツと対戦し、クローゼの目の前で2点を決め、2-0で優勝しています。
さらにロナウドは2006年ドイツW杯で日本を相手に2点決め(中田ヒデの引退試合になったあの試合です)、さらにトーナメント1回戦でガーナ相手に1点を決めたことで通算得点記録の単独トップに立ちました。要するに、クローゼの地元ドイツでロナウド個人は頂点に立ってるわけです。(ブラジルは準々決勝でフランスに負けましたが)
通算得点の新記録を達成した時のロナウドがこんな感じの顔。この子連れ狼カットのヘンな髪型がずーっとW杯の記録保持者として残ってたわけですよ。
※子連れ狼カットと言ったところで若い人には分からんだろうと思いますが。
とにかく、クローゼは2002年のリベンジも果たさなければならないし、会場はブラジルで、対戦相手もブラジル。ここで新記録を作らないでいつ作るんだ!って気合いも入ってたんじゃないですかね。
ちなみにW杯でブラジルとドイツが対戦したのは前述した日韓W杯での1試合だけなんですって。今日が通算2試合目。だからクローゼだけじゃなくドイツ全員が燃えてたことでしょう。
試合開始から10分は攻守入れ替わる激しい展開でしたが、どちらかと言えばブラジルが良い形を作ってました。ゴール前にも行けてたし、人数も多めに敵陣へと入れていたし、ドイツの反撃時も帰陣が速かった。
ブラジルも相当気合いが入ってるな、と感じられるシーンだったし、これは好勝負になるかもしれんぞと期待しつつあったのですが、前半10分過ぎに早くも展開が変わります。
前半11分、コーナーキックのボールをファーサイドでフリーになってた13番ミュラーがインサイドキックで蹴り込み、ドイツ先制。
ドイツは今大会、5試合全てで先制点を決めたことになりました。やっぱり先制点って大事だということなんでしょうね。今大会は逆転劇もかなり多かったから、先制点を入れたからって安心ではないんですけど、ドイツは全試合で先制点を守り切ったことになるから、やっぱり試合運びが安定してるんだってことでしょう。
ミュラー自身は今大会5点目。あと1点で2大会連続の得点王になります。また前回南アフリカW杯での5得点と合わせて、早くもW杯での通算得点が10点目となりました。
コーナーキックを蹴る直前まで、ミュラーにはブラジル4番ダビド・ルイスがマンマークで付いてました。ニアサイドの位置に立ってたミュラーがスススーっとファーサイドに移動した直後、ダビド・ルイスもすぐ気付いてミュラーを追ったんですけど、敵味方が密集していて進路をふさがれてしまい、やっと集団から抜け出た時にはミュラーがシュートの体勢に入っており、ギリギリで間に合わなかった。
なのでこれはブラジルのミスというよりは、マークを外したミュラーの動きが巧かったのと、ダビド・ルイスに運がなかったと言えます。ダビド・ルイス本人もそう感じたからか、切り替えを促し味方を鼓舞してました。まだ1点ですからね。
ただ、次の2点目が実質的に今日の試合を決めたように思います。点の取られ方が悪い。
前半23分、18番クロースのスルーパスを絶妙の走りでPA内に斬り込んだ13番ミュラーがGKの目前でパス。フェイントのような形でパスを受けた11番クローゼがシュート。
1度はGKジュリオセザールが止めるも、跳ね返ったボールを再びクローゼが蹴り込む。ドイツ2点目。
この瞬間、W杯通算得点記録保持者が、
↑ これから、
こうなりました。クローゼはW杯通算得点16点。遂に単独の新記録を達成。ずっと昔からクローゼを見ていたファンの一人として本当に嬉しい瞬間でした。ちなみに恒例の宙返りを今日は披露せず。試合後のコメントによれば、どうやら忘れてたっぽいですよ。
クローゼには23番マイコンがマークに付いてました。右サイドにドリブルで持ち込んだミュラーが中央のクロースにパスし、そこからミュラーが斜めに走ってPA内に侵入。その動きを察知したクロースがブラジルDFの間を抜く絶妙のスルーパス。これをミュラーが受けた時点でブラジル守備陣は完全に裏を取られていました。2点目の半分はミュラーのゴールでもあります。
ワープしてきたかのようにブラジルのゴール正面に出現してボールを受け、GKと1対1になったミュラーに驚いたか、ブラジルDF陣全員の足が止まって「ボールウォッチャー」状態。さらにクローズがミュラーの元へ走り込み、GKから見えない位置でパスを受け取る。ドイツ攻撃陣の連動した動きにマイコンが全く対応できず、クローズを追い掛けることも出来なかった。後はあれよあれよと2点目までの流れ。
2失点目があまりにもドイツの好き放題にやられてしまったので、ブラジルDF陣の視線が完全に泳いでました。この時点で相当パニックになってたのではないかと想像します。
事実、その1分後でした。
前半24分、右サイドからドイツ16番ラームがクロス。これをミュラーがスルー、というかシュート空振り。しかし後ろに走り込んでいた18番クロースが遠い位置からノートラップでボレーシュートを決め、ドイツ3点目。
この3点目もミュラーが絡んでるんですよね。あのシュート空振りが意図したものなのか本気で空振りなのかは分からないですが(私は後者だと思うけど)、ブラジル守備陣の足が完全に止まっちゃってるんですよ。だからクロースはほぼフリーの状態でシュートを打てている。
2失点目のパニックが、わずか1分後の3失点目に繋がり、もう悪循環の極致ですわ。頭が真っ白だったんじゃないかな。
で、また2分後です。キックオフの直後でした。
前半26分。キックオフ後にゆっくりボールを回してるブラジル守備陣。5番フェルナンジーニョの緩いバックパスをダッシュで奪った18番クロース、そのままPA内に突進。ブラジル守備3人+キーパーに対して、ドイツはクロースと6番ケディラの2人。
数的不利もなんのその、ゴール前で余裕のパス交換を経てクロースがシュート。ドイツ4点目。スタジアムが気持ち悪いほど静まり返りました。完全にブラジル守備陣のミス。
4点目の3分後、前半29分。ブラジルの攻め上がりを防いだドイツのカウンター。最終ラインからのフィードを6番ケディラがトラップ。ゴール前で8番エジルとパス交換してからシュート。ドイツ5点目。
わずか6分間で4失点。4点目と5点目は全く同じ状況で、ドイツ選手はPA内の2人だけで面白いようにパス交換をスイスイと決めている。ブラジルの選手と選手の間をポンポン通してる。
ブラジル守備陣は頭が真っ白で何も考えられなくなってるのか、小学生のサッカーの試合でよく目にする、ボールしか見えずボールだけを追い掛けてる状態になり、相手のマークだったり、シュートコースを防ぐといった動作すら出来ない。あのブラジルがですよ。
1点目を入れられた直後は闘志を見せていたブラジルですが、追い付くためには前がかりで攻めるしかなく、しかしパスミスが多かったり、あまりにも個人技任せな攻めで簡単にボールを奪われる場面の連続で、敵陣ゴール前に近付くことも出来ない。しかも中盤にポッカリと穴が開いてしまい、ドイツに面白いようにパスを回される。
ブラジルはボールを繋ぐことが出来ないのと、立て続けに失点して大混乱したせいもあったのか、まだ前半なのに苦し紛れのロングフィードでパワープレーみたいな攻めを始めてしまいます。パスすら繋がらないのに、空中戦で有利なドイツ相手にそんなことして繋がるどころか、みすみすドイツにボールをプレゼントしてるようなもの。最終ラインの守備が崩壊し、中盤の守りも繋ぎも崩壊し、攻撃戦術までも崩壊してしまった。
前半は5-0で終了。その瞬間、なんともドス黒い感じの大ブーイングがスタジアムを支配していました。ブラジルが前半に打ったシュートは、わずか2本。
ブラジル7番フッキは、今日も突進力を発揮して前線に攻め込むまではいいのだけど、パスが全く繋がらない。いつもはPA外で(ある意味苦し紛れの)ミドルシュートを放ったりするんですけど(それが全然枠に行かないのが問題だったのだけど)、今日はミドルシュートを打つことすら出来ず。前半だけで交代となりました。あの出来ならどうしようもない。
ブラジルは後半開始時、そのフッキと5番フェルナンジーニョに代えて、16番ラミレスと8番パウリーニョ、2人同時に投入。
後半5分、ブラジルが久々のチャンス。9番フレッジのスルーパスから16番ラミレスが敵陣ゴール前で中央にパスを折り返そうとするも、GKノイアーが好セーブ。止めていなければ確実に1失点でした。
惜しくも得点には繋がらなかったものの、このあたりからスタジアムが再び盛り上がり始め、ブラジルコールも湧き上がり始めます。ブラジル選手たちの動きも前半途中からの絶望的な重さが少し抜け、ドイツ陣内に攻め込むようになってきました。
しかし、その勢いをまたもこの人が飲み込んでしまいます。
後半6分、スルーパスを完全フリーで受けた11番オスカルのシュートをGKノイアーが再び止めたのに続き、直後の後半7分には8番パウリーニョがゴール目の前でシュートを放つも、ノイアー上半身で止めた。
ノイアーが弾いたボールを再び詰めたパウリーニョが間髪入れずに連続シュート。顔面付近に飛んできたシュートをノイアー、今度は手で防いだ。
後半開始直後の猛攻を4本続けて止めたGKノイアー。ブラジル攻撃陣の自信を喪失させてしまう展開の中、試合の不穏な空気を決定的にしてしまうちょっとした事件が発生。
後半14分、ブラジル9番フレッジがPAの外からミドルシュートを放つも、勢いが全然ない弱々しいボールは難なくGKノイアーがキャッチ。このシュートミスでスタジアムのブラジルサポーター、完全にキレたようです。フレッジに対して大ブーイング。
フレッジは開幕戦のクロアチア戦で後半25分、PA内で相手選手に倒されたとしてPKを獲得します。この判定で日本人審判の西村さんに批判が殺到しました。
開幕戦の試合レビューで、これは「どちらとも取れる判定だ」と私は書きましたが、フレッジの大げさな倒れ方に嫌悪感を抱いたし、そうレビュー内でも書いてます。
続く2試合目のメキシコ戦でブラジルは0-0のスコアレスドロー。負けたわけでもないのに、この試合でフレッジはシュートをことごとく外し、勝ちを逃す原因となった「戦犯」としてブラジル国内のメディアやファンから批判されるようになります。
次のカメルーン戦で得点を決め、フレッジ批判も少し収まったかに見えたのですが、今日の試合でフレッジはまたしても、PA内で大げさに倒れてファウルをもらいに行くというプレーを2回もやらかしてます。どちらも主審はスルーし、2回目に至っては「コケる演技してないでシュート打てや!」と観客に思われたか、軽いブーイングも飛んでました。
そして致命的となった弱々しいミドルシュート失敗。遂にブラジルサポーターがフレッジを見限った。この後、フレッジがボールを持つだけでスタジアム内は壮絶な大ブーイングが響くようになりました。
後半24分、PA内で16番ラームの横パスを9番シュルレが押し込み6点目。シュルレは後半13分にクローゼと交代で投入されていましたが、今日も途中出場で結果を出しました。
このシーンも、途中交代選手のマークがどうなってるのか、ブラジル守備陣は誰もシュルレのマークについていません。
6失点目の直後、国際映像に映ったのは、なぜかベンチの椅子に座ってるフレッジ。失点直後に選手交代でコッソリとベンチに下げられたようです。
猛烈なブーイングを浴びないようにという監督の配慮だったんでしょうけど、国際映像で抜かれたフレッジがスタジアムのヴィジョンに映った途端、やっぱり猛烈なブーイングがスタジアムに鳴り響く始末。
フレッジに代わって投入されたのは19番ウィリアン。ちょっと安堵した私。これが21番ジョーだったらブラジルは更に悲劇的なことになってた。
後半34分、左サイドからミュラーが出したパスを見事な足技でトラップした9番シュルレ、ゴール左上に絶妙なシュート。ドイツ7点目。
スタジアムにいたブラジルのサポーターたちが立ち上がって、シュルレの得点に対して拍手を送り始めていました。いくら見事なシュートだったからって、敵の得点ですよ。もうブラジルサポーターすらも崩壊してた。
その後、ドイツが華麗にパスを回して繋ぐ光景にブラジルサポーターたちが「オーレ!」の大合唱。ブラジルサポーターたちがドイツを応援し始めたと表現してるメディアもありますが、実際は試合なんてどうでも良くなっちゃったんでしょう。
圧倒的アウェイの中で厳しい闘いを強いられるはずが、まさか敵サポーターから応援される(応援じゃないんだろうけど)ことになるとは思わなかったドイツ選手たち、嬉しかったのか何なのか知りませんが、最後の最後でやらかしました。これ、GKノイアーも激怒してたけど、私もムカついた。
後半45分、ドイツの攻撃でまたも難なく敵陣PA内まで侵入できた8番エジル。GKと1対1になり、余裕ぶっこき過ぎて軽く蹴ったシュートは枠の外へ。
その直後、ブラジルのカウンター攻撃で自陣からのロングフィードを走り抜けて受けた11番オスカルがシュート。
これが決まって、最後にようやくブラジルが1点を返しました。しかしオスカルに笑顔なし。遂に失点してしまったノイアーも味方守備陣に激怒。
エジルのナメ過ぎシュートも論外ですが、その直後にカウンターを喰らった時点で、敵陣に突き進むオスカルを追ってたのは20番ボアテング、ただ一人ですよ。ナメ過ぎにもほどがある。
相手がどれだけバテていてもドイツ選手達は常に走ってるし、得点リードしてても守りに入らず姑息な時間稼ぎもせず、次の1点を獲るために攻める姿勢。手を抜かず、気も抜かない。なのにこの1失点ってドイツが最もやったらアカンことでしょ。
これだけの大量リードで、しかもスタジアムの空気が自分たちに心地良い状態になって(敵のホームなのにパス回しでオーレ言ってもらったりゴールシーンに拍手してもらえたらそりゃルンルンですわな)、とてもラクな試合展開になったら、あのドイツでさえ油断や慢心をするってことなんですね。
逆に考えると、オスカルのシュートがなく7-0で試合が終わってたら、ドイツ選手はもっともっと慢心してたかもしれない。ノイアーが激怒したのは救いだし、レーヴ監督もおそらく引き締めにかかるでしょう。調子に乗り過ぎてゲルマン魂にツバするような真似だけは止めてもらいたい。
試合は7-1で終了。この試合でブラジルは不名誉な記録を続々と樹立してしまいました。
◆W杯準決勝で6点差で負けたチームは史上初。
◆W杯で過去最大の失点は1954年スイス大会、準々決勝のハンガリー戦における4失点だったが、今日は3点も上回ってしまった。
◆ブラジルが公式戦で7失点したのは1934年6月のユーゴスラビア戦で喫して以来80年ぶり。
◆ブラジルが公式戦で6失点差負けは1920年9月のウルグアイ戦で喫して以来94年ぶり。
優勝の夢も消え、マラカナンの悲劇を払拭するどころか、今日の試合は「ベロオリゾンテの惨劇」「ミネイロンの悲劇」などと既にメディアで呼称されています。
※ベロオリゾンテは試合会場の街の名前(ベロオリゾンテ市)、ミネイロンはスタジアムの名称です。
歴史的な大惨敗。ブラジルのサッカー史にまた一つ、消しようのない傷が残ってしまいました。
初戦で活躍したものの、以降は本領を発揮できたとは言えないオスカル。最後にシュートは決めても救いにはならず、試合後はチアゴ・シウバの胸で泣き崩れ、スタッフに抱えられて退場。
ブラジル国民の思いに加えて、ネイマールやチアゴ・シウバの思いまでも抱えて試合に臨んだダビド・ルイス。彼だけに重い荷物を背負わせるのは酷すぎました。いつも闘志あふれるプレーで味方を鼓舞していたダビド・ルイスが目を真っ赤にして泣いている。それを慰めるチアゴ・シウバ。
ネイマールがいなかったから負けたという話があるけれど、実際はチアゴ・シウバがいなかったから負けたんだなって気がします。もちろん、ネイマールがいれば、もっとネイマールにボールが集中したんだろうし、彼を起点とした攻撃のバリエーションなり、ボールの収まりなり、得点の決定力もある。防戦一方の展開にはならず、もう少しは攻撃の時間帯を作れたかもしれない。
ただ、仮にネイマールがいたとして、その上でチアゴ・シウバがいない状態でドイツと対戦してたとすれば、やっぱりブラジルは大敗していたように思います。「たられば」だし、実際にやってみないことには分からないから、これは単なる妄想の域なんですけどね。
かえすがえすも前の試合、チリ戦でのチアゴ・シウバのつまらない不必要なイエローカードが残念でならない。
確かにドイツは強いです。そんなことは大会前から分かってたことです。ただ、今日の試合で「ドイツ強すぎ!」とは全く思いません。今日はブラジルの自滅に尽きる。あの強豪ブラジルでさえ、少しボタンをかけ違えただけでこんなにも無残な試合になる。
ドイツに対しては、特に後半最後の1失点が今大会1度も見せてなかった弱い部分を見せられた気がして、そこだけがすごくモヤモヤしてるんですけど、4大会連続でベスト4入りしていたドイツ、何はともあれ2002年以来の決勝進出です。1990年以来の優勝まであと1勝。
破れたブラジルは、まだ3位決定戦があります。今日の試合途中から完全に心が離れてしまったサポーターたちをもう一度取り戻すためにも、3位決定戦は順位うんぬんではなく心意気を見せるための正念場になります。次戦はチアゴ・シウバも復帰しますから、地元開催最後の舞台を納得のいく形で終えて欲しいな。
○ドイツ 7 – 1 ブラジル●
【得点】
(ドイツ)ミュラー(前半11分)
(ドイツ)クローゼ(前半23分)
(ドイツ)クロース(前半24分)
(ドイツ)クロース(前半26分)
(ドイツ)ケディラ(前半29分)
(ドイツ)シュルレ(後半24分)
(ドイツ)シュルレ(後半34分)
(ブラジル)オスカル(後半45分)
決勝でドイツと対戦するのは、ヨーロッパもう一方の雄オランダか、南米唯一の生き残りとなったアルゼンチンか。
得点王ランキング(7月9日現在)
2位 ミュラー(ドイツ) 5得点
3位 メッシ(アルゼンチン) 4得点
3位 ネイマール(ブラジル) 4得点
5位 シュルレ(ドイツ) 3得点
5位 ファンペルシー(オランダ) 3得点
5位 ロッベン(オランダ) 3得点
5位 ベンゼマ(フランス) 3得点
5位 シャキリ(スイス) 3得点
5位 エネル・バレンシア(エクアドル) 3得点
ドイツのミュラーが1得点し、単独2位に上昇しました。またシュルレも今日2点決め、合計3得点で5位タイに浮上しています。3点とも途中出場での得点ってのは素晴らしいですね。
23日目の見どころ
23日目となる7月10日(木)は準決勝のもう1試合、オランダとアルゼンチンの試合が行われます。
個人的にとても興味あるのは、今回南米での開催で、南米チームが数多く決勝トーナメントに進む躍進を見せたんですよね。で、距離的に近いこともあって南米チームが試合をするときは、試合会場にたくさんのサポーターが詰めかけて、まるでホームのような雰囲気の中で試合が出来るという強みがあったんです。
そんな中、なぜかアルゼンチンの試合の時だけは、アルゼンチンサポーターの声援と互角くらいの音量で、ブラジルサポーターによるブーイングも鳴り響いてるのが恒例となってました。ただ、それは「ブラジルにとって脅威となるアルゼンチン」という認識だからこそのブーイングだったと聞いてます。
今回ブラジルが負けて、残す南米勢はアルゼンチンだけになってしまったんですが、それでもブラジルの皆さん、アルゼンチンにブーイングしちゃうのかな。それとも南米勢ってことでアルゼンチンを応援する側に回るという展開なんだろうか。そこがとても興味あります。
もしオランダがアルゼンチンに勝利すれば、決勝はドイツvsオランダ。南米開催のW杯でヨーロッパ勢は優勝できないというジンクスを初めて破ることになります。
以上、22日目の試合レビューでした。
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