衝撃的だった大都市の道路陥没事故
2016年11月8日(火)の早朝午前5時過ぎに発生した博多駅近くの交差点における道路陥没事故。
約2時間後の午前7時過ぎには、5車線ある道路の全体が陥没し、地下に崩落してしまうという大規模な事故となりました。
道路陥没の映像は世界中に配信された
このニュースは日本国内だけでなく海外でも報道され、大きく陥没してしまった事故現場の映像が世界中に配信されました。
近くの商業施設、ライフラインにも影響が出た
工事関係者の迅速的確な判断により死者・負傷者の人的被害はなかったものの、現場は通行止めとなり、現場周辺の店舗や駐車場は営業不能になっただけでなく、近隣のオフィスビルは倒壊の恐れがあるため避難指示が通達されました。
またガス漏れ、水道や電気のストップなどライフラインにも影響が出て、博多駅や福岡空港も一時的に電気が使えなくなったほか、福岡銀行では全支店のATMが使用不能となるなど、駅前エリア以外にも影響が出たそうです。
事故当日の現場写真を含むツイート
福岡市博多区で発生した道路陥没。本日復旧したようですが、突然目の前の道路が消えるなんて…地下で一体なにが起きているのでしょう? 東大生産技術研究所の桑野玲子教授が解説します。#道路陥没 #博多駅前陥没 #福岡市営地下鉄 https://t.co/sMrnqZw9Ir pic.twitter.com/z3IDVxWnop
— 読売新聞オンライン (@Yomiuri_Online) November 15, 2016
道路の端から端まで、全面的に陥没してしまったことが分かります。
博多駅前の道路陥没で日本一来店の難しいセブンイレブンみたいになってる pic.twitter.com/MCPqqSSjzL
— あやとび (@Aya_tobi) November 8, 2016
車道部分だけでなく、歩道部分までもが陥没しています。
店舗入口のギリギリまで穴が拡大してしまったことや、ビル地下の基礎部分がむき出しになっている映像はテレビのニュースで何度も報道され、衝撃を受けました。
あれほどの大規模事故がわずか1週間で復旧!
福岡市の工事関係者が総力を結集!
かなり大規模な事故だったこともあり、復旧までには相当な時間を要するのではないかと言われていた事故現場。
しかし、福岡市・高島市長の号令のもと、工事関係者が総力を結集させてライフラインの復旧を最優先に工事を進め、わずか1週間後の11月15日(火)早朝には車両や歩行者の通行が再開されたと報道されました。
あれほどの大規模事故だったにもかかわらず、わずか1週間での復旧というニュースもまた、驚きをもって報道されました。
陥没事故発生から2週間後の事故現場を訪問
事故発生から2週間後(復旧工事完了の1週間後)、事故現場を訪れ写真を撮ってきました。
現場を訪れる前、まずはJR博多駅ビルの屋上に行き、現場の様子を見てきました。
事故の様子を伝えるニュース映像に、博多駅屋上から撮影したものが多かったためです。
博多駅の屋上から撮影した陥没事故現場

JR博多駅の屋上に来ました。レストラン街「くうてん」がある10階からエスカレーターで屋上まで行くことができます。

JR博多駅の屋上から「大博通り」を撮影。陥没事故現場の道路は1本北側になります。
ちなみに、福岡市営地下鉄・空港線は大博通りの地下を走っています。

こちらが博多駅から見て西の方角。写真中央を通っている道路が「はかた駅前通り」。今回の事故現場です。
屋上から見た限り、陥没事故の面影はない

陥没事故現場となった「博多駅前2丁目」交差点は、上の写真のちょうど中央あたりです。
5車線の道路が元に戻り、普通に車が通行しているのが見えます。一見したところ、ここが陥没事故現場だったとは思えません。

それでは事故現場に歩いて行ってみます。
陥没事故現場の「博多駅前2丁目」交差点に到着
福岡銀行は事故当日、全ATMが使用不能となった

JR博多駅前の道路を横断して「はかた駅前通り」に入ります。
交差点の角にある福岡銀行・博多駅前支店は陥没事故の当日、事故の影響で周辺エリアが停電してしまい、銀行のサーバーがダウン。
全支店のATMが使用不能となっただけでなく、店舗での窓口業務もできなくなったとニュースで報道されていました。
近くで見ると陥没した道路面が生々しい

JR博多駅から西に約100メートル進むと、陥没事故現場となった「博多駅前2丁目」交差点に着きます。
道路の陥没により、道路面と共に地中へと引きずり込まれてしまう様子が映像で流れた信号機も、無事に地上で復活していました。
「セブンイレブン 博多駅前通店」のすぐ前が陥没事故現場です。
セブンイレブンは現在も営業できていない

その「セブンイレブン 博多駅前通店」は事故当時、入口のすぐ前まで陥没した穴が迫っており、店舗前の歩道もえぐられてしまい、断崖絶壁のようになっていました。
事故発生から18日、道路復旧から9日が経過したこの日も、入口や窓は白いシートで覆われており、営業は再開されていません。
「セブンイレブン 博多駅前通店」は2016年12月20日に営業を再開されました(陥没事故発生から48日後)。

地中に陥没してしまい新たに舗装され直した道路と、陥没を逃れた古くからある道路は、舗装の色がハッキリ違います。

陥没事故が発生したのは早朝の時間帯だったため、通行人がほとんどいなかったのは不幸中の幸いだったと言えます。
歩行者が事故に巻き込まれなくて本当に良かった、と感じさせられる光景でした。

復旧工事の期間中、テレビカメラなどメディアが取材していた最前線となる場所が上の写真あたりでした。

多くの歩行者が陥没事故現場の写真を撮影していました。

復旧した横断歩道を渡ってみました。2週間前までここは大きな穴が開き、地下水が流れ込んで溜まり、ガス管や地下電線がむき出しになっていました。
事故発生時にここを歩いていたら無事では済まなかったでしょう。想像すると背筋が寒くなりました。
本来は5車線ある道路ですが、車線の右端はトラックが停車して何やら作業をしており、1車線だけ信号手前の箇所が通行できなくなっていました。
「博多駅のすぐ前」という誤解や勘違いがSNSで数多く流布された

上の写真、右上に写っているのがJR博多駅です(逆光のため見づらくてごめんなさい)。
JR博多駅から陥没事故現場の「博多駅前2丁目」交差点までの距離は約100メートル。駅から少し離れた場所なので、陥没事故現場は博多駅のすぐ目の前というわけではありません。
しかし、交差点の名前に「博多駅前」と付いていることや、テレビのニュースなどで「博多駅前の道路」と表現されたこともあり、博多駅のすぐ目の前にある道路(=住吉道路)が陥没したと勘違い、あるいは誤解した人の投稿がSNSで数多く見受けられました。
「東京で言えばバスタ新宿に相当する交通量のところ」と表現していたSNS投稿も目にしました。その情報は間違っています。
陥没・崩落はまだ続いていた?

陥没した穴の西側の端。こちらも陥没して復旧された箇所と無事だった箇所がアスファルトの色の違いでハッキリと認識できます。
この辺りの歩道を歩いていたとき、ほんの少しですが、地面にグニュッと沈み込むような感覚がありました。
少し怖くなって足早にその場所から離れましたが、数日後におそろしいニュースが報道されました。
26日午前1時40分頃、福岡市博多区博多駅前2の市道で、工事関係者から「道路が沈んでいる」と110番があった。
今月8日の大規模陥没事故とほぼ同じ場所で、県警博多署は現場一帯を通行止めにしたが、安全が確認されたため、午前5時半に解除した。
引用:『博多駅前再び沈下、最大7センチ…一時通行止め』 – 読売新聞(2016年11月26日)
もしかしたら、あの時は本当に道路が沈んでいたのかもしれません。怖い怖い。
事故現場すぐ横の立体駐車場から撮影

陥没事故現場のすぐ横に建っている立体駐車場。1階部分が「セブンイレブン 博多駅前通店」です。
立体駐車場は陥没事故により出入口が通行不能となってしまい、復旧工事が完了するまでは車の出し入れが不可能になってしまったそうです。
この立体駐車場は営業を再開しています。
道路が陥没する瞬間が映っている動画は、交差点の上のほうから撮影していました。おそらく立体駐車場の上から撮影したのだろうと思い、行ってみることにしました。

道路陥没が発生した様子を撮影した動画と同じアングルですが、おそらく動画撮影はビルの3階か4階あたりだったのでしょう。
私が上の写真を撮影したのは8階。高すぎました。
私は高所恐怖症なので、8階から身を乗り出して上の写真を撮影した時は恐怖で本当に泣きそうでした。

復旧工事で新たに舗装された部分と、そうではない(=陥没を逃れた)部分との境界線が上からもハッキリと分かります。
高所恐怖症で怖くてたまらず、震えながら「手だけ外に出して」上の写真を撮影したため、ピントはボケ気味、角度もおかしなことになってます。お許しを。
なぜ今回の陥没事故は発生したのか
今回の事故現場は「地下鉄・七隈線のJR博多駅への延伸工事」で何らかのミスがあったため、地上の道路が陥没した、と福岡市などが公式に発表しています。
現在、JR博多駅と接続されている福岡市営地下鉄は「空港線」のみ。「七隈線」は接続されていないため、JR博多駅から直接乗り換えることはできません。
それを解消するため現在「七隈線とJR博多駅を接続」するための延伸工事がおこなわれています。
今回の陥没事故は、まさにその延伸工事の真上にある道路で発生しました。
まとめ
わずか1週間という短期間での復旧は、日本だけでなく国外でも大きく報道されていました。
称賛の声がある一方、早すぎる復旧を不安視する意見もありますし、道路陥没の直接的原因となった地下鉄の延伸工事に対しても非難や不安の声があがっています。
地下鉄工事に関しては現在、事故現場ではない他の場所で流れ込んだ地下水が完全に汲み上げられていないこともあり、工事再開のメドは立っていないそうです。
安全面の確保が最優先であり、早急な工事再開はおそらく世論が許さないだろうとも予想されます。
現地に行って実際に目にした感想としては、陥没した穴の面積がやはり大きい。
陥没事故発生時刻が早朝だったこともあり、歩行者や車は巻き込まれずに済みました。というか、それも見越しての深夜・早朝工事なんでしょうけど。
いずれにせよ、改めて人的被害がなかったことに安堵し、迅速な復旧に感嘆しました。
現場は今後も地下の地層検査や工事再開に向けての検証作業が続くと思われます。道路上でも部分的な交通規制などが継続しています。
事故現場を見物するため歩行者も多くなっています。「完全なる通常運行再開」にはもう少し先の話になるかもしれませんね。
追記:七隈線は無事、博多駅まで延伸・開業しました
当初は2020年度のうちに工事完了、そして延伸開業するはずだった地下鉄・七隈線ですが、今回紹介した道路陥没事故が影響し、事故原因の究明や再発防止対策などにも時間をかけられたため、工期が大幅に延期されました。
最終的には2022年度の末に天神南駅から博多駅までの七隈線延伸工事が完了し、2023年3月27日、新しい七隈線が開業しました。
延伸工事の副産物として、天神南駅と博多駅の間に、新たに「櫛田神社前駅」が建設され、開業しています。
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櫛田神社前駅(福岡市営地下鉄七隈線)から櫛田神社への行き方まとめ
福岡市営地下鉄・七隈線の延伸工事が完了し、2023年3月に博多駅と七隈線が接続され、同時に新たな駅として櫛田神社前駅が開業しました。今回は夏のお祭り・博多祇園山笠のスタート地点でもある櫛田神社に、櫛田神社前駅からどう行けばいいかを写真付きで解説しています。