毎年7月1日から7月15日までの期間、福岡市博多区を舞台に開催される夏のお祭り、博多祇園山笠。
この記事では、お祭りの基本的事柄の解説、お祭りのスケジュール、櫛田神社・桟敷席のチケット購入方法などについてまとめています。
福岡を代表するお祭り、博多祇園山笠
博多祇園山笠は780年以上も続く伝統のお祭り
7月の開幕が近付き、福岡市内のあちこちに博多祇園山笠のポスターが飾られていました。ポスターの左上には「伝統782年」と書かれており、とても歴史のあるお祭りだということが分かります。
2023年は4年ぶりに「制限なしの通常開催」となることが発表されました。お祭り関係者の方だけでなく、お祭りを愛する方々、見に行こうと思っている方々も大変喜び、気合いが入っているのではないかと想像します。
福岡五大祭、博多三大祭に含まれる博多祇園山笠
福岡県内で開催される様々な祭りのうち、特に規模が大きくて知名度も高く、重要な5つの祭りを「福岡五大祭」と呼びます。
- 鬼夜(久留米市) ※12月31日〜1月7日開催
- 川渡り神幸祭(田川市) ※5月第3土曜、日曜開催
- 博多祇園山笠(福岡市博多区) ※7月1日〜7月15日
- 小倉祇園太鼓(北九州市小倉北区) ※7月第3土曜日の前後3日間
- 戸畑祇園大山笠(北九州市戸畑区) ※7月第4土曜日の前後3日間
これとは別に「博多三大祭」というくくりもあったりします。メディアによっては「福岡三大祭」と書いているところもあります。
- 博多どんたく港まつり ※5月3日〜5月4日
- 博多祇園山笠 ※7月1日〜7月15日
- 筥崎宮放生会 ※9月12日〜9月18日
博多祇園山笠はどちらのくくりにも含まれていますので、まさに福岡を代表するお祭りといえます。
博多祇園山笠は、2016年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。
「追い山」の大迫力に魅了される
私個人は、博多祇園山笠を現地で観戦したことは1度もありません。しかし「追い山」のテレビ中継は毎年見ていました。
「追い山」などのお祭りに関する用語は後ほど解説します。
博多祇園山笠の存在を初めて知ったのは、2012年のことでした。このブログを開始した年です。福岡市についてほとんど何も知らなかった北九州市民(元鳥取県民)の私ですが、2012年から福岡市に行く機会が増え始めたのです。
その2012年の7月、街を歩いていたらいきなり背後からウワー!と大歓声があがり、神輿をかついだ大勢の男性陣が大声を発しながら大通りを疾走し、ものすごい数のフンドシ姿の男性陣が追いかけていくという光景に遭遇しました。
ビックリしたのと、それが何なのかを知らなかったので、Twitterに「なんだこれ」と写真付きで投稿したら、フォロワーさんが「博多祇園山笠っていうお祭りですよ!」と教えてくれたのです。
その後、街中のいろんな場所で展示されている山笠を見たり、テレビで放送される特集を見るうちに「博多祇園山笠」というお祭りに興味を持ち始め、やがてお祭りのフィナーレである7月15日の「追い山」のテレビ生中継をリアルタイムで見るようになりました。
2019年の「追い山」もテレビで見て、その大迫力に感動したのですが、翌年の2020年、そして2021年は新型コロナウイルスの影響でお祭りは中止されました。
2022年は3年ぶりに博多祇園山笠が復活。私も早朝からテレビで「追い山」中継を見て感激したものです。ただし、沿道での観覧を自粛するよう通達が出るなど、2022年は一部で制限がありました。
2023年は制限もなくなり、いよいよ従来の博多祇園山笠が戻ってくることになります。
博多祇園山笠は「櫛田神社の奉納神事」
「博多の総鎮守」である櫛田神社
福岡市博多区にある「櫛田神社」。読みは「くしだ・じんじゃ」で、「お櫛田さん」という愛称でも知られています。
櫛田神社は「博多の総鎮守」であり、博多祇園山笠は基本的に「櫛田神社に奉納をするお祭り」なのです。
「総鎮守」とは、その土地全体を守ってくれている神様や、その神様を祀っている神社のことをいいます。
博多の街を駆け巡る神輿は「やま」と呼ばれる
博多祇園山笠というお祭りの名前を「山笠(やまかさ)」と省略して呼ばれることも多いです。
男性陣が担ぐ神輿(みこし)をこの祭りでは「山笠」というのですが、お祭りの略称である「山笠(やまかさ)」と混同してしまうため、神輿のことは「山笠(やま)」と呼ぶことが多いです。
その「山笠(やま)」をかついだ男性陣が博多区のいろんな道路を駆け巡る、これが全国的によく知られている博多祇園山笠というお祭りの特徴だと思います。
単に山笠をかついで街中を駆け巡るだけではなく、スタートからゴールまでのタイムが計測され、各チーム(博多祇園山笠では「流(ながれ)」といいます)が速さとタイムを競うお祭りでもあります。
博多祇園山笠のスケジュール
7月1日〜9日は飾り山一般公開、街中は走らない
7月1日から7月15日までのお祭り期間中、毎日のように山笠が街中を走り回っているわけではありません。福岡市の各主要道路がそんなにも長期間、規制できるわけがありませんし。いくら祭りだからって2週間も通行止めにされたらみんな怒るでしょ普通。
7月1日に開幕する博多祇園山笠は、各地の「流(ながれ)」が拠点としている場所に山笠を飾って一般公開することから始まります。7月9日までは山笠が街中を走ることはないそうです。
7月10日から「流舁き(ながれがき)」開始
7月10日から「流舁き(ながれがき)」が始まります。各地の「流(ながれ)」が自分たちの拠点周辺のエリアで山笠をかついで走ります。ここからいよいよ山笠が街中を駆け巡り始めます。
7月11日の午後には「他流舁き(たながれがき)」といって、自分たちの拠点ではない他のエリアに遠征して山笠をかつぎ走り回るという行事も始まります。
これはお互いの「流」への表敬訪問、陣中見舞いの意味合いがあるそうで、見物する人々にとってはいろんな山笠を見ることができるチャンスでもあります。(「他流舁き」をおこなっていない流もあるそうです)
7月12日、予行練習の「追い山ならし」
7月12日は予行演習の「追い山ならし」がおこなわれます。
予行演習ではあるのですが、「追い山ならし」も本番同様にタイムが計測されます。したがって山笠をかつぐ男性陣は本番と同じく真剣な表情で山笠をかつぎ、街中を駆け巡ります。
「追い山ならし」の開始時刻は午後3時59分。本番の「追い山」が早朝のスタートなのに対し、「追い山ならし」はお昼過ぎのスタートとなります。
また「追い山ならし」は本番の「追い山」よりも約1kmほど全長距離が短く、ゴール地点の「廻り止め」も本番とは違う場所に設置されます。
7月13日、集団山見せ
「追い山ならし」の翌日、7月13日には「集団山見せ」という行事がおこなわれます。この行事は「タイムを競う」のではなく、各流の山笠が一堂に会する「お披露目」のイベントです。
開始は午後3時30分。冷泉公園から打ち上げられる花火を合図として始まり、「呉服町」交差点から福岡市役所までを山笠が走ります。
ゴールとなる福岡市役所は天神エリアにありますので、この日だけは福岡市博多区の外に出て、福岡市中央区を山笠が走ることになります。
「集団山見せ」では地元の名士や著名人などが山笠の上に乗り(「台上がり」といいます)、これ目当ての見物客で沿道はかなり混雑します。
7月15日、クライマックスの「追い山」
7月15日がお祭りの最終日。いよいよ「追い山」がおこなわれます。
開始時刻は早朝、午前4時59分。なぜ午前5時ジャストではなく午前4時59分なのか。
最初にスタートする「一番山笠」が櫛田神社に入った際、山笠をかつぐ人・サポートする人・見物客、そこにいる人たち全員で「祝いめでた(博多祝い歌)」を歌うのです。
「祝いめでた」の唱和は一番山笠にだけ与えられる栄誉で、歌う時間を1分取っているため、午前4時59分スタートとなっています。
当日は福岡のテレビ局で追い山のすべてが生中継されます。現地で見物できない方々もぜひテレビで見ていただきたいです。
「祝いめでた」を全員が歌うときの一体感は魂が震えます。これが見たくて毎年7月15日は早朝に起きています。
桟敷席のチケット価格や販売日、購入方法は?
櫛田神社・桟敷席のチケット価格、1人あたりの購入枚数
桟敷席のチケットに関する情報を以下にまとめます。
追い山ならし(7/12) | 追い山(7/15) | |
販売枚数 | 300枚 | 300枚 |
価格 | 3,000円 / 1枚 | 6,000円 / 1枚 |
購入制限 | 1人2枚まで | 1人1枚のみ |
櫛田神社・桟敷席のチケット購入方法
ネットなどで販売はされておらず、桟敷席のチケットは現地で買うしかありません。
販売は、毎年6月26日の午前9時から。
特に本番の「追い山」はものすごく人気が高いため、あっという間に売り切れるそうです。チケットを買うために徹夜で並ぶ人もいるのだとか。
予行演習の「追い山ならし」も人気は高いものの、「追い山」と比べれば若干ながら買いやすいそうです。
櫛田神社への行き方・アクセス
公共交通機関を利用して櫛田神社に行く場合、いろんなパターンがありますので、簡単に紹介していきます。
最初に結論から言いますが、地下鉄で「櫛田神社前駅」まで行くのが圧倒的にオススメです。
地下鉄その1:七隈線の「櫛田神社前駅」で下りる(いちばんオススメ)
櫛田神社から徒歩1分のところにある「櫛田神社前駅」。ここに向かうのがいちばんオススメです。とにかく近い。
ひとつ気を付けなければならないのは、櫛田神社前駅は福岡市営地下鉄の「七隈線」です。「空港線」ではありません。これを間違えなければ大丈夫。
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櫛田神社前駅(福岡市営地下鉄七隈線)から櫛田神社への行き方まとめ
福岡市営地下鉄・七隈線の延伸工事が完了し、2023年3月に博多駅と七隈線が接続され、同時に新たな駅として櫛田神社前駅が開業しました。今回は夏のお祭り・博多祇園山笠のスタート地点でもある櫛田神社に、櫛田神社前駅からどう行けばいいかを写真付きで解説しています。
地下鉄その2:空港線の「祇園駅」で下りる
博多駅で空港線から七隈線に乗り換えることなく「祇園駅」まで行った場合も、櫛田神社までそれほど遠くはありません。
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祇園駅(福岡市営地下鉄空港線)から櫛田神社への行き方まとめ
福岡市営地下鉄・七隈線の延伸工事が完了したことで、櫛田神社に最も近い駅は櫛田神社前駅となりました。しかし地下鉄・空港線の祇園駅から行くのもそれほど遠くはありません。今回は祇園駅から櫛田神社までの行き方を写真つきで解説します。
地下鉄その3:空港線の「中洲川端駅」で下りる
このパターンは、福岡タワー・ペイペイドーム・大濠公園など、空港線の西側から櫛田神社に行く場合のオススメです。佐賀県の唐津市や伊万里市からJR筑肥線に乗って櫛田神社まで行く場合もこのパターン。
中洲エリアのホテルに宿泊した場合もこのルートが良いです。わざわざ地下鉄で博多駅まで行って七隈線に乗り換えるよりも、このルートのほうが早く着きます。
中洲川端駅から「川端通商店街」を歩けば、一直線で櫛田神社に着きます。距離は400メートル。
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中洲・川端通商店街:博多祇園山笠の風情を感じるアーケード街
福岡市博多区、博多川に沿うように東西へ伸びる川端通商店街。中洲川端駅と櫛田神社とを最短距離で結ぶ連絡路でもあり、夏祭り・博多祇園山笠が近付くと商店街には山笠が展示されます。今回は博多祇園山笠の開幕が近付く川端通商店街を散策してきました。
博多駅から櫛田神社まで、徒歩で行く
地下鉄でもバスでもなく、博多駅から櫛田神社まで歩いて行きたい! という人がいるかもしれません。実は私がそうです。毎回歩いてます。
歩いて行く場合も、ルートは全然難しくありません。
- JR博多駅の西側「博多口」から外に出る ※東側の「筑紫口」ではない!
- 正面に福岡銀行がある交差点を渡る
- 「はかた駅前通り」を道なりにしばらく進む
- 約1km先、「祇園町西」交差点を渡って細い路地へ進む → 到着
博多駅から徒歩15分くらいで櫛田神社に着きます。
上の写真は「はかた駅前通り」に架かる歩道橋の上から撮影したものです。
撮影時期は2022年10月。まだ七隈線の延伸工事が真っ最中の頃です。道路の下では地下鉄工事が進められており、道路の上でも地下鉄への入口が建設中でした。
ちなみに、2016年11月8日に発生した博多駅前の道路陥没崩落事故は、この「はかた駅前通り」で発生しました。事故現場は上の写真にある道路をまっすぐ進んだ少し先にありました。
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わずか1週間で復旧した博多駅近くの道路陥没崩落事故現場に行ってきた
2016年11月8日(火)午前に発生した博多駅近くの交差点における道路陥没事故。陥没の様子を撮影した映像は世界中に配信されましたが、1週間後の11月15日(火)早朝に復旧工事が完了して通行が再開されたことも驚きと共に報道されました。陥没事故現場の様子を見に行ってきました。
まとめ
クライマックスとなる「追い山」の当日は、福岡のローカルテレビ局で「櫛田入り」を始めとする博多祇園山笠のすべてが生中継されます。
テレビで見るもよし、当日に現地で見物するもよし、あるいは7月12日の「追い山ならし」や7月13日の「集団山見せ」を楽しむもよし。
2週間という期間、博多の街は山笠の熱気に包まれます。市外・県外からお越しの方々にも楽しんでいただきたいなと思っています。
博多祇園山笠・追い山のスタート地点となる櫛田神社については、お祭りが近付く準備中の様子を大量の写真つきで解説しています。
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櫛田神社:福岡を代表する夏祭り「博多祇園山笠」の開幕が近付く
福岡市の夏祭り、博多祇園山笠は毎年7月に開催されます。祭りのクライマックス「追い山」のスタート地点でもある櫛田神社も準備が着々と進んでいます。お祭り1ヶ月前、桟敷席が建設されるなど準備が進む櫛田神社境内の様子を見に行ってきました。
また、7月12日におこなわれる予行演習の「追い山ならし」と、7月15日の最終日におこなわれる本番の「追い山」で山笠が走る全コース、全長約5kmを散策し、記事にまとめました。
どういうコースを走るのか、見どころとなるオススメ見物ポイント、切り返しの難しい難所はどこなのか、などについても記事内で紹介しています。
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博多祇園山笠「追い山」全コース解説・前編(櫛田神社〜下呉服町)
福岡市博多区で毎年7月上旬に開催される夏祭り、博多祇園山笠。7月15日の追い山では全長約5kmのコースを山笠が駆け巡ります。その追い山コースの特徴、見物するのに適した場所などを実際に歩いて確認してきました。前編では櫛田神社から下呉服町までのコースをまとめています。
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博多祇園山笠「追い山」全コース解説・後編(恵比須通り〜廻り止め)
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