福岡市博多区で開催される夏祭り「博多祇園山笠」。福岡を代表するお祭りのひとつで全国的にも知名度が高く、開催期間中は約300万人の観光客が訪れるのだとか。
毎年7月1日に開幕し、クライマックスとなる7月15日の「追い山」までの期間、博多区はお祭り一色となります。
今回は、博多祇園山笠が奉納される櫛田神社に行ってきました。
博多祇園山笠・追い山のスタート地点
櫛田神社、楼門横にある「山留め」
こちらは櫛田神社の北東にある「楼門」。
大きな鳥居の奥には「稜威(読みは「いつ」)」と書かれた額があります。「天子・天皇の御威光」という意味なのだそうです。
「楼門」を正面に見て右側に10メートルほど進んだところに「山留め」と書かれた石盤があります。
7月12日の「追い山ならし」、そして7月15日の「追い山」では、ここ山留めがスタート地点となります。「山笠(やま)を留める」ので山留め。
スタート前、この位置に山笠を運んで待機が完了した状態を「山留めに入った」と表現します。
山留めから清道へ
山留めで待機している山笠に対してカウントダウンがおこなわれ、スタートの合図と共に山笠は勢いよくスタート。ここからタイムの計測も開始されます。
山笠は「楼門」の前を通過し、櫛田神社の境内へと走り込んでいきます。これを「櫛田入り」といいます。
「楼門」のすぐ左側にある境内への入口。両脇には「清道」と書かれた茶色の碑が見えます。
「清道(せいどう)」とは山笠が奉納のためにグルリと回る円状の道のことです。櫛田神社の清道中央には柱があり、ここに「清道旗」という旗が立てられます。
清道は追い山コースに3箇所あり、それぞれに清道旗が立てられます。
- 櫛田神社の境内
- 東長寺の前
- 承天寺の前
東長寺と承天寺にも実際に行ってきました。すべてのコースを散策してきた別の記事にて詳しく紹介しています。
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博多祇園山笠「追い山」全コース解説・前編(櫛田神社〜下呉服町)
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博多祇園山笠「追い山」全コース解説・後編(恵比須通り〜廻り止め)
福岡市博多区で毎年7月上旬に開催される夏祭り、博多祇園山笠。7月15日の追い山では全長約5kmのコースを山笠が駆け巡ります。その追い山コースの特徴、見物するのに適した場所などを実際に歩いて確認してきました。後編では恵比須通りからゴール・廻り止めまでのコースをまとめています。
境内の中央に設置された清道旗の周りをグルリと1周した後、山笠は再び櫛田神社の外に出て、博多の街へと進んでいきます。
境内の端、上の写真では右上にある大きな木は「櫛田の銀杏(くしだのぎなん)」と呼ばれており、福岡県の天然記念物に指定されています。
櫛田神社の境内も祭りの準備が進行中
櫛田神社・南側の入口「南神門」
こちらは櫛田神社の南側にある入口、南神門。北東の「楼門」とは反対側になります。
地下鉄の櫛田神社前駅、キャナルシティ博多、川端通商店街などから櫛田神社に行く場合、こちら南神門から境内へと入ることになると思います。
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櫛田神社前駅(福岡市営地下鉄七隈線)から櫛田神社への行き方まとめ
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「飾り山笠」は奉納用、ただし例外が1つある
南神門から入ってすぐの場所に、櫛田神社の「飾り山」があります。飾り山とはあくまで奉納のための山笠であり、街中を走るわけではなく、いつもここに飾られています。
今回の訪問時は制作前だったようで、骨組みだけの状態でした。後で知りましたが、ちょうど上の写真を撮影した日の午後から制作が開始されたそうです。
博多祇園山笠の山笠のうち、街中を駆け巡るほうの山笠は「舁き山笠(かきやま)」といいます。飾り山よりも低く作られており、重量も少しだけ軽くなっています。
一方で「飾り山笠(かざりやま)」は奉納と展示用です。高さ10メートルを超す荘厳な作りで、重量も「舁き山笠」より重いです。背が高すぎるため、博多の街中を走ることはできません(電線やビルなどの障害物にぶつかってしまうため)。
しかし「上川端通の飾り山笠」だけは例外で、「追い山ならし」や「追い山」では博多の街中を走ります。前述したとおり電線やビルなど障害物があるため、他の舁き山笠とは違い「上川端通の飾り山」だけは独自のルートを走ることになります。
「走る飾り山笠」と呼ばれ、人気の高い「上川端通の飾り山笠」も写真を撮ってきました。別記事にて紹介しています。
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山笠見物用の「桟敷席」が建設中
飾り山のすぐ脇には「夫婦銀杏(めおとぎなん)」という大きな木があります。
その向こうには、博多祇園山笠の期間中だけ設置される「桟敷席(さじきせき)」が建設中。その右側にある建物は「博多歴史館」です。
福岡地方の方言なのか、「ぎんなん」のことを「ぎなん」と読むみたいです。北九州ではあんまり聞いたことがありません。
ここが桟敷席最上部の真下にあたるところです。左に曲がると櫛田神社の本殿に出ます。
櫛田神社の本殿で参拝を済ませ、180度ターンして後ろを見ると
参道の端にも桟敷席が組まれていました。なかなかの圧迫感です。
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櫛田神社の清道に最接近
「追い山ならし」や「追い山」で最初に山笠が駆け込んでくる境内。桟敷席に座る見物客は、すぐ目の前で山笠が疾走する姿を大迫力で見ることができます。
写真中央に重機があり、その重機の左側に「清道」の柱が立っています。
櫛田神社の清道の柱に最接近してみました。「追い山」ではここに清道旗が立てられ、すべての山笠はこの周囲をグルリと1周することになります。
今回の訪問より1ヶ月半ほど前、2023年4月末に櫛田神社を訪問したときは、上の写真にあるとおり、桟敷席はまだ建設前の状態でした。
地面に鉄骨がいくつか置いてあるので、もしかするとこの日くらいから桟敷席の建設が始まったのかもしれませんね。違うかもしれませんが。
写真中央にある清道の中心には清道旗でなく、鯉のぼりが立てられています。
「棒洗い」のための運搬作業に遭遇
今回の訪問時、「櫛田の銀杏」のすぐ横にある倉庫のような施設に山笠関係者らしき格好の人が多数集結しており、施設内から木製の棒をいくつも運び出してトラックに積んでいる光景を目にしました。
近くにいた警備員さんに話を聞いたところ、木製の棒は山笠をかつぐ人が持つ部分の「舁き棒(かきぼう)」だそうで、今から棒を清めに行くところです、と教えてくださいました。
このあと朝の8時から、博多港(ベイサイドプレイス)にある櫛田神社浜宮にて「棒洗い」という儀式がおこなわれ、棒が清められたそうです。
上の写真を撮影したのは朝の7時前です。
海水をかけて洗うことで「塩で清める」という意味もあるということなんですね。なるほどなるほど。
まとめ
7月の到来と共に博多祇園山笠が始まります。このお祭りが来ることで、福岡市民は夏を感じるのだそうです。
クライマックスの「追い山」が終わり、関係者がすべて撤収した後の櫛田神社は、「後の祭り」という言葉が示すとおり、なんとも言えない寂しい空気が漂うそうです。そして博多の街は少しずつ日常を取り戻していきます。
お祭り期間中も、そうでない時期も、櫛田神社はとても素敵な神社です。ぜひ足を運んでみてください。